江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

江戸川病院

診療科・部門|スポーツ医学科

2020-08-31更新

腱板断裂

腱板とは、肩の深いところにある筋肉です。

50代以降になると、使いすぎなどにより腱板が傷つきすりきれる事があります。(腱板断裂)

腱板板断裂がおきると、肩を動かすとひっかかって痛い、うまく力がいれられず手があげにくいなどの症状がおこります。

腱板断裂(けん板断裂)の治療は痛み止めの注射やリハビリテーションが中心です。

数ヶ月しても症状が改善しない場合、当院では関節鏡を使った手術や血管内治療を行っております。

鏡視下腱板修復術

1 腱板断裂を確認:骨から腱板が剥がれ穴があいている

2 骨にアンカー(糸のついたビスのようなもの)をうち腱板に糸を通しているところ

3 通った糸を骨に固定して手術を終了

鏡視下腱板修復術プロトコール

概要

投球動作の繰返しによって肩に痛みを生じ、投球が困難な状態をいいます。

日常生活では困らないことがほとんどですが、休んで痛みがなくなっても、投球を再開するとまた痛みがでる…。なんの対処もせずに復帰するとこのような悪循環を招いてしまいます。

投球障害肩は、ボールを投げる動作をすることで痛みを生じるため、肩を壊してしまうような“投げ方そのもの”が最大の原因と考えます。

原因

投球の一般的な動きはワインドアップから始まりフォロースルーまでとなります。この中で肩への負担が最も大きいのは、ボールリリース前の腕を加速している時期で、痛みの訴えが一番多いとされています。投球フォームが原因と思われがちですが、身体機能の低下が悪いフォームを作り出していることがほとんどです。

治療

肩を痛めてしまう選手に多い傾向としては、肩甲骨の動きが硬い、股関節が硬いなど、身体の柔軟性が大きく関与しているようです。したがって、治療では身体の柔軟性を向上し、肩に負担が集中することを防ぎます。

少年野球で肩・肘を痛めやすい傾向はスポラボという以下のリンクで詳しく説明されています。

1.肩関節インピンジメント症候群とはどんな病気ですか?

・投球障害肩の一種です。

・インピンジメントというのは、『衝突』という意味です。肩関節を動かす際に、関節付近で他の骨や筋肉との衝突が生じることによって、組織の損傷が起こって痛みが生じる病気です。

・基本的には、野球選手の投球障害肩の一種ですが、オーバーヘッドスポーツといわれる、バレーボールやテニスなどで肩の痛みを生じる場合や、中高年の方の痛みが出る場合でも肩関節インピンジメント症候群となることがあります。

・肩関節の上の方で骨と骨がぶつかったり、肩関節の中で筋肉などが挟まったりすることで生じることがあります。

2.どんな症状が出ますか?

・腕を上げるとき、途中が痛くて、上げきってしまえば痛くないというのが一番の特徴的な症状です。

・症状がひどくなると、夜にずきずきとした痛み(夜間痛)が起きたり、ひどくなると腱板断裂といい、筋肉が断裂(損傷)してしまったりすることがあります。

3.どんな治療をしますか?回復にどれくらいかかりますか?

・痛みがある部位にエコーを見ながら痛み止めの注射をしたりします。

・その後、基本的にはリハビリテーションで治療します。

・3か月リハビリテーションで改善しない場合は追加評価で、MRIなどを撮ります。

原因が肩関節の組織にあり、改善が乏しい場合は手術も検討します。

・痛みがなくなり次第、投球再開や、痛みが生じていた動作を再開します。

4.当科では

・月に1回程度、診察の際に医師が肩の可動域や痛み(主に夜間痛)のチェックとエコーでの観察を行います。

肩の動きの硬さがある部位を診断し、エコーで肩を観察しながら可動域が改善するような注射を安全に行います(ハイドロリリース)。

・インピンジメントによる腱板断裂等があり、上記の保存療法に抵抗性の時は、関節鏡視下に修復術を行います。

<理学療法>

・肩関節の動きを改善。

・肩関節筋力を改善

・肩甲骨や胸郭、股関節などの動きの改善。

・肩甲骨や胸郭、股関節などの筋力の改善。

・投球フォーム指導

・医師指導の下、エコーにて肩関節内の動きのチェック、トレーニング。

・全身のトレーニング

<詳細には>

・肩甲骨を上から抑えた状態で腕を上げようとしたときに、肩の上の方に痛みを感じる人は、肩甲骨の上方への動きを良くするようにします(肩峰下インピンジメント)。

・腕を外に開くような動作(肩関節外転外旋位)で肩の後ろの方が痛い人は、肩甲骨の開く動きを良くしたり、肩関節の後ろの硬さを良くしたりします。(後上方関節窩インピンジメント)

・腕を上に閉じるような動作(肩関節屈曲内旋位)で肩の前の方が痛い人は、肩甲骨の閉じる動きを良くしたり、肩関節の後ろの硬さを良くしたりします。(前上方関節窩インピンジメント)

<参考文献>

1.大西和友:解剖学的異常を認めない肩峰下インピンジメントの診断と治療. 臨床スポーツ医学. vol. 36. No2. 144-150. 2019.

2.Beard DJ. et al : Arthorascopic subacromial decompression for subacromial shoulder pain (CSAW): a multicenter, pragmatic, parallel group, placebo-controlled, three-group, randomizeed surgical trial. Lancet27: 329-338. 2018.

3.西中直也ほか:ゼロポジション内外旋運動における上腕骨頭偏位の検討.肩関節. 33:261-263, 2009.

4.Halbrecht JL. et al : Internal impingement of the shoulder: comparison of findings between the throwing and nonthrowing shoulders of college baseball players. Arthroscopy 15: 253-258, 1999.

5.Habermeyer P, et al : Anterosuperior impingement of the shoulder as a reesult of pulley lesions: a prospective arthroscopic study. J Shoulder Elbow Surg 13: 5-12, 2004.

概要

離断性骨軟骨炎とは、軟骨やその下にある骨の傷害がおこりはがれる病気です。肘の離断性骨軟骨炎は、外側の野球肘とも言われ投球によるストレスが主な原因と考えられております。

初期には症状が軽いことがあり、練習を続けていると知らない間に症状が進行してしまう事があります。症状が進行すると痛み以外にも、肘の曲げ伸ばしがスムーズにいかなくなったり、剥がれた軟骨(関節ネズミ)が骨の間に挟まり肘が動かなくなったりもします。

診断

関節の動きなどを確認し、レントゲンを撮影します(図1)。レントゲンでは発症初期に異常を認めないこともあるためエコーを用いた検査も行います(図2)。進行している場合には、手術の必要性を評価するためMRI検査やCT検査を必要に応じて行います。

治療

発症初期であれば保存的治療が有用です。少し進行している場合も、まずは保存的治療を数ヶ月行い、経過を観察します。進行している場合や保存的治療がうまくいかない場合には手術が必要となります。

我が国では、施設や執刀医により様々な手術の方法が選択されておりますが、その選択に関しては議論の分かれるところです。

当院では、年齢(骨年齢)、病巣の大きさや位置、学年やポジションなどを考慮して関節鏡による廓清術・膝からの骨軟骨移植術・肋骨からの肋軟骨移植術を行っております。

離断整骨軟骨炎

図1

離断整骨軟骨炎

初期(透亮期) 透亮像(黒く根ける部分)あり

進行(分離期) 軟骨がはがれかけている

離断整骨軟骨炎

図2

正常な超音波像(左)

離断整骨軟骨炎(右):軟骨の下にある骨の線が乱れている

概要

野球肘とは投球障害肘とも呼ばれ、投球動作によって生じた筋・腱・靭帯・神経の障害や骨軟骨の外傷・障害の総称です。

野球肘にみられる肘の機能障害は、肘関節に機械的なストレスが加わった“結果”であり、関節可動域制限や関節不安定性などが野球肘の直接の発生原因ではないことが多いです。投手に多く発生しますが、投手の次に多いのが捕手とされています。

原因

野球肘は部位によって内側型・外側型・後方型に分類されます。ここでは内側型について説明します。内側型は成長期では骨の問題が多いのに対し、成人以降では靱帯損傷が関与することが多いようです。

年齢により肘内側の支持組織の弱い部位に違いがあるため、13~16歳頃の成長期であれば内側部分の軟骨の障害、17歳以上では側副靭帯(そくふくじんたい)損傷が主に生じます。

内側型は肘の内側にある側副靱帯が、繰り返しの投球動作により部分断裂を起こし、靭帯が緩んだ状態(靭帯機能不全)になるものです。投球相ではトップの状態からボールリリースの手前の時期に肘関節への外反(がいはん)ストレスが増大することで障害発生の要因となります。

治療

肘関節の炎症がある場合は投球禁止と局所の安静が第一選択となり、痛みが強い場合には炎症を抑制する目的として、ステロイド注射や内服を実施することがあります。

小児期の内側型野球肘の予後は比較的良好ですが、日常生活でも重量の物を持たないなど、投球以外の動作にも注意を払い、早期にしっかりと安静を守ることが大切です。

成人以降の靱帯損傷型でも外傷度に準じたギプス固定などの処置を行い、早期にしっかりとした治療が必要です。

保存療法の場合は肘関節周囲の治療はもちろん、投球動作は他部位の影響が大きいと考えられるため、全身の評価を行ったうえで肩甲胸郭関節・体幹・股関節などの下肢機能にも着目し、肘関節にかかる負担を最小限に出来るような身体作りを行っていきます。

1.テニス肘とはどんな病気ですか?

・肘の外側(外側上顆)に炎症を生じる疾患です(外側上顆炎)

外側上顆炎

・手首や指を伸ばす筋肉や腱が損傷することによって生じます。

筋肉

・現在は打ち方が異なるため多くはありませんが、テニスのバックハンドで痛めることが多かったため「テニス肘」と呼ばれています。

・物を掴む、握る、指を多く使う方に起こりやすい疾患です。

2.どんな症状が出ますか?

・ものを掴む、握る時に痛む

・パソコンのマウス操作で痛む

・テニスのバックハンドで痛む

・肘から指にかけての安静時の痛み

3.どんな治療をしますか?

・当科ではエコーを使って損傷部位を確認します。

基本的には保存療法主体で治療します(約90%の症例で改善していくと言われています)。

・生活指導:物を持ち上げる時には、脇を締め、そばによって、下から物を持ちあげるようにします。


理学療法(リハビリテーション)

・テニス肘サポーター:前腕部のパッドでの圧迫で腱に負担がかからないようにします。

テニス肘サポーター

・注射治療:炎症が強く夜間に疼くような痛みがあるときはエコーガイド下の抗炎症薬の注射で炎症の鎮静化をはかります。痛みの原因が腱以外の神経などにある場合はその周囲にエコーガイド下に注射を行います(ハイドロリリース)。

・その他:体外衝撃波、PRP(多血小板血漿)注射(まだ確立されたエビデンスははっきりしていません)

それでも改善のない難治症例では手術治療(直視下or関節鏡視下)を行います。

4.当科では

・上記の難治例では関節鏡による手術を行います。また自費にはなりますが一定の効果が得られている高圧酸素療法も行うことができます。(PRPも導入予定です)

<理学療法(リハビリ)>

・手首、指を動かす筋肉のストレッチを行います。

手首、指を動かす筋肉のストレッチ

・肩周囲(特に内側に捻る動作)の柔軟性獲得により肘や手首にかかる負担を減らします。

・神経や靭帯周囲の組織が痛みの原因の場合その組織の柔軟性獲得を目指します。

<参考文献>

1.日本整形外科学会診療ガイドライン委員会:上腕骨外側上顆炎の診療ガイドライン,南江堂,東京,2006.

2.島村安則他:上腕骨外側上顆炎の診療ガイドライン, 岡山医学会雑誌,第123巻, 141-144,2011.

3.村岡邦英 他:上腕骨外側上顆炎に対する超音波検査の試み.日本肘関節学会誌,23(2)340-342,2016.

4.若林良明他:上腕骨外側上顆炎の診断と治療.MBOrthop,24(1):48-52,2011.

5.佐藤達夫他:橈骨神経-肘付近の絞扼要素.Journal of clinical rehabilitation,4(2):108-111,1995.

6.副島修:肘関節 肘外側障害 テニス肘の診断と治療(解説/特集).Orthopaedics,30:35-42,2017.

7.高原正利:上腕骨外側上頼炎の保存治療―文献調査―.整・災外.48:1025-1030,2005.

8.Boyer I, et al: Lateral tennis elbow: "Is there any science out there?". J Shoulder Elbow Surg. 8:481-91, 1999.

Sanders L, et al :The epidemiology and health care burden of tennis elbow. Am J Sports Med. 43:1066-1071,2015.

前十字靭帯(ACL)とは大腿骨(太ももの骨)の後方から脛骨(すねの骨)の前方にあり、大腿骨に対して脛骨が前方に移動したり、回旋したりすることを制御しており膝関節の安定性を担っています。

概要

スポーツ外傷の中でも頻度が高く、特にサッカー、バスケットボール、バレーボール、柔道、スキーなどでよく起こります。ジャンプの着地やターン・カッティング動作中に膝を内に捻ることで生じ、膝が抜けた感じがします。

症状

急性期

受傷直後は疼痛・腫脹のためにスポーツ復帰は困難となります。また、半月板損傷や他の靭帯損傷を合併していることもあり、伸展障害(膝が伸びない)を起こすこともあります。

慢性期

膝の回旋不安定性によって膝がガクッと抜ける(膝くずれ)ことがあります。膝崩れを繰り返すことで2次的な半月板損傷や骨軟骨損傷を生じることがあります。

診断

1.徒手検査

膝のゆるみを用手的に判断します。

2.画像検査

レントゲン、MRIを用いて骨・靭帯の評価を行います。

3.アルスロメーター

脛骨の前方移動量を計測し左右の膝を比較します。

正常なACL
ACL損傷のMRI

治療

まれに前十字靭帯が損傷していても装具を装着しスポーツ復帰可能な場合があります。

しかし

いつ膝崩れを起こすか分からない不安感(apprehension)が強い

頻繁に膝崩れを生じスポーツパフォーマンスが落ちてしまう

今まで通りスポーツを行いたい、またスポーツ復帰をしたい

という場合に前十字靭帯を再建します。

手術までの流れ

受傷後は疼痛や炎症により膝の可動域や筋力が十分でない事が多いため、術前にリハビリを行います。機能が回復し患者様と十分に相談した上で復帰時期などを考慮して手術を決定しています。

手術手順

1.採腱

2.再建靭帯作成

3.骨孔作成

4.再建靭帯固定

ACL再建手術は大きく分けて1~4の過程で行われます。

当院の手術について以下で説明します。

当院での関節鏡システム

手術は直径4mmの関節鏡を

用いて行います。

2カ所の小さな切開から関節鏡を挿入して手術を行います。✔ 脛骨内側の3cmの傷から腱を採取します。

ACL

左:正常なACL/右:損傷したACL

1.採腱

・半腱様筋腱(ST)、薄筋腱(G)

脛骨に付着しているハムストリングの一部を用います。

・骨付き膝蓋腱(BTB)

膝蓋腱の一部を用います

当院では通常、ハムストリングを用い再建術を行っております。

半腱様筋腱が十分な長さ採取できた場合、薄筋腱は用いません。

またスポーツの競技特性にあわせてBTBを用いています。

2.再建靭帯作成

採取した腱を2分割し、それぞれ2重折りにして腱を作成します。

3.骨孔作成

ACL再建術には1重束再建法と2重束再建法があります。

正常なACLは前内側束(AMB)、後外側束(PLB)の2つの束でできています。そのため元々のACLにより近似させるため、大腿骨と脛骨に2つずつ骨孔を作成し再建します(2重束再建法)。

また、大腿骨側の骨孔作成にもいくつかの方法があります。

・経脛骨法

・脛骨の骨孔を利用して大腿骨側の骨孔を作成する方法です

・経ポータル法(in-side out 法)

・膝の皮膚切開部(ポータル)を利用して大腿骨骨孔を作成する方法です

・out-side in法

・特殊なガイドを利用し、外側から大腿骨に骨孔を作成する方法です

それぞれ利点・欠点などがありますが、大腿骨骨孔を独立して阻害される事なく至適な位置に作成できるため当院ではout-side in法を用いて手術を行っています。

4.再建靭帯固定

作成した骨孔にそれぞれAM束とPL束を通して一定の張力で固定します。

再建されたACL

後療法、リハビリ

術後1日 -15°~90°の範囲で可動域訓練を開始

術後2日 関節内のドレーンを抜去

術後7日 1/3荷重を開始(半月板縫合を行っていない場合)

術後2週 2/3荷重を開始

術後3週 全荷重開始

術後4週 伸展0°を目標

術後4ヶ月で筋力評価を行い健側の8割程度の筋力があればjog~runを許可します。

術後5ヶ月で各々のスポーツ開始(ノンコンタクトの範囲で)

術後6ヶ月で再度、筋力評価を行い競技復帰を目指します。

半月板とは大腿骨と脛骨の間にあり膝への荷重を分散させるクッションの役割があり、膝の屈伸でスムーズな動きを助ける三日月型の軟骨組織です。

概要

スポーツなどにより膝を捻ったり衝撃が加わったりする事で受傷する場合と、加齢により変性断裂する場合があります。前十字靭帯損傷に合併する場合も多いです。半月板損傷により屈伸時に痛みや引っかかり感(catching)が生じたり、曲げ伸ばしができなくなったりします(locking)。

損傷の形態は様々です。

治療

保存療法と手術療法があります。

保存療法では内服やヒアルロン酸注射を行います。

保存療法に抵抗する場合には手術療法を行います。

手術の場合、半月板縫合術と半月板切除術があります。


半月板切除

高齢者の半月板損傷の場合、損傷部の部分切除を行い形成を行います。


半月板縫合

半月板は膝のクッションと安定性の機能がある組織のため、半月板がなくなると2次的な軟骨損傷や変形性膝関節症が進行する可能性があります。そのため残せる場合はできるだけ修復・縫合を行うようにしています。

1.all-inside法 関節内で縫合

2.inside-out法 関節内から外

3.outside-in法 関節外から中

当院では適応に合わせ積極的に縫合術を行っています。


後療法

損傷形態、縫合の種類にもよりますが術後早期に可動域訓練を開始し、術後2wから部分荷重を行い術後4wで全荷重を開始しています。

概要

発育期の小中学生に多く、過度のスポーツなどで膝下に負担が大きくかかると発生します。

脛骨結節(お皿の下の骨)が徐々に突出してきて、痛くなります。

時には、赤く腫れたり、熱を持ったりします。休んでいると痛みが無くなりますが、スポーツを始めると痛みが再発します。

大腿四頭筋は、膝を伸展させる働きをしていますが、この大腿四頭筋の力が膝蓋骨・膝蓋腱を介して脛骨結節に伝わります。膝を伸ばす力の繰り返しにより、まだ未成熟の脛骨結節の成長線に過剰な負荷がかかり成長軟骨部が剥離することで生じます。

治療

大腿四頭筋のストレッチングやバンドによるサポートなどを用いてある程度のスポーツ活動を継続できますが、症後3~6ヵ月は無理にスポーツを続けるほどに症状は強くなり、痛みが強くなると休養が必要となます。多くの場合、適切な治療・休養とリハビリで保存的に軽快します。

概要

膝蓋骨が膝の外側(稀に内側)にずれて脱臼してしまう障害です。

特に,若い女性に多くみられ,ジャンプや踏みなどで大腿四頭筋が強く収縮した時や,接触などで膝蓋骨が外側に強制された時などに生じ,膝の変形や痛み腫れを生じます。

生れつき関節が柔らかい人や,膝蓋骨と大腿骨の滑走の不適合などが素因としてあることも多く,初回脱臼後反復して脱臼を繰り返すこともあります。

脱臼は自然に整復されることもありますが,脱臼・亜脱臼を繰り返すと膝関節の軟骨損傷や関節面の部分骨折を引き起こしてしまいます。また膝蓋骨の不安定感や動作時の恐怖感・痛みが残ります。

治療

脱臼時は,整復と装具などによる脱臼の再発の防止する適切な処置が必要ですが,脱臼を反復する場合や不安定感・痛みのある場合,軟骨や骨の損傷がある場合など手術加療が必要な場合も少なくありません。特にスポーツ活動の継続を希望する場合,適切な治療方針を相談の上決定していく必要があります。

概要

膝関節内の軟骨が傷んだり,剥がれてしまう傷害です。成長期の特に男児に比較的多く,繰り返しの軟骨へのストレスや,強い衝撃によって起こってきます。

膝の内側に起きることが多く,膝の痛みを伴います。はじめは痛みがあても運動などはできますが,進行して軟骨が剥がれてしまうと関節内で引っかかり膝を動かせなくなり強い痛みを伴います。

初期のころはレントゲンのみでは異常がないことも多く,MRIで診断をします。

治療

早期に診断がつけば,適切な荷重や運動の制限で自然修復が期待できますが,軟骨の損傷が進行したり,剥がれてしまうと手術による処置が必要となります。特に軟骨が剥がれて時間の経過したものでは,剥がれた軟骨の修復が困難で軟骨移植などが必要になる場合もあるので,早期の診断が重要になってきます。

概要

膝蓋骨についている膝蓋腱や大腿四頭筋腱に炎症を起こす障害です。

ジャンプやダッシュ,キックなどの動作では膝蓋腱や大腿四頭筋腱に強い牽引力がかかります。この牽引力が繰り返しかかっていくとやがて膝蓋腱や四頭筋腱に炎症や腱の微小損傷を引き起こして痛みが出現します。四頭筋や股関節周辺の硬さ,活動量の割に四頭筋筋力の少ないなどが素因となります。適切な運動制限とストレッチングや筋力トレーニングで改善が見込めますが,難治性の場合もあります。

治療

当院では,難治性のジャンパ―膝に対しては最新の治療法としてカテーテル治療による疼痛の改善も行っています。

概要

スポーツ選手の股関節痛の原因の一つとして近年注目されている病態である。

原因は、主に股関節形態異常により、骨頭頚部移行部と臼蓋縁との間にインピンジメント(衝突・挟み込み)が起こる現象である。それにより関節唇損傷や関節軟骨が生じ、最終的には二次性の変形性関節症が起こるとされている。関節唇とは、骨頭を外側から包み込み関節を安定化させる効果と衝撃吸収の役割を果たす構成体で、この損傷で長く症状の続くスポーツ選手は股関節鏡手術の適応となる。

診断は、疼痛誘発テストであるインピンジメントテスト、局所麻酔剤で疼痛の変化をみるキシロカインブロックテストがある。

画像は、レントゲンにおいては形態異常のないものもあるが、形態変化のあるものは骨頭側のCam typeと臼蓋側のPincer type、両者のmixed typeに大別される。またCTでの骨形態評価とMRIでの詳細な関節唇評価は有用とされる。

治療

正確な診断とともに3ヶ月の理学療法を試みることが推奨され、体幹筋や股関節周囲筋のコンデショニングが症状を改善させる。股関節外科医の中には手術に慎重な意見もあるため、手術を含めた今後長期の臨床評価が必要と考えられる。

概要

ジャンプの着地動作や踏み込み動作などでの発生が多い。受傷の際は“足の後ろを蹴られた”感覚を持つことが多い。つま先立ちが出来なくなり、断裂した箇所に凹みが見られる。

検査は徒手検査を行なうことが多い。レントゲンではわからないことがほとんどである。超音波やMRIなどでは診断がつく。

治療

当院では患者さんと相談の上、保存療法か手術療法が選択される。

保存療法

ギブス固定を行い、徐々に装具などに切り替えていく

手術療法

様々な縫合方法があり、患者さんの年齢層や競技種目などで選択

治療期間は断裂の程度や治療方法により異なりますが、患者さんと相談の上、医師・理学療法士と治療方針を立てていきます。スポーツ復帰には半年前後を要しますが早期復帰するには早期手術が求められます。

概要

スポーツ傷害で最も多い疾患の一つで、サッカーやバスケットボールなどの切り返し動作の多いスポーツに多く発生します。何度も繰り返す選手が多く、初回捻挫の治療が重要です。最も損傷されやすい靭帯は、前距腓靭帯といわれる足首の外側の靭帯です。そのため 外くるぶしの腫れと痛みを訴えることが多くなります。

診断

腫れの度合や足関節の緩さをみて損傷の程度を分類します。

足関節を前後に引き出すようなストレスをかけて、怪我をしていない側と比較をして緩さの度合いを確認します。

レントゲンで靭帯は写らないため損傷の評価はできませんが、ストレスを加える事で靭帯の緩さは評価できます。

超音波やMRIなどを使用すれば靭帯の断裂などが確認できます。

治療

治療方針は、足関節の疼痛の残存・歩行時の不安定感・軟骨損傷などの合併症などにより保存的治療か手術を選択します。またスポーツや職業などによっても治療が異なります。

ギブスや装具などを用いた保存的治療が中心ですが、最近では、関節鏡を用いて低侵襲に靭帯が修復できるようになり、手術の適応が広がっております。

鏡視下靭帯修復術(鏡視下Brostrom法)

関節鏡で行う手術です。数カ所の小さな皮膚切開で行うことが可能です。

前距腓靭帯が腓骨から剥がれている様子が確認できる。

(⇔ 骨から靭帯が剥がれている)

腓骨にアンカー(糸のついたビス)を挿入し、糸を剥がれた前距腓靭帯に通しているところ。

概要

足の縦アーチが繰り返し引き延ばされ、腱膜が変性して痛みを生じる。陸上競技などに多く、起床時の最初の一歩に踵に痛みを訴えることが多い。階段の登りやつま先立ちで症状が悪化することが多い。

レントゲンにて骨の棘が見えることがあるが、腱膜の所見は超音波やMRIなどを使用しないと分からない。

治療

治療方法は保存治療が大部分を占めており、当院では理学療法士によるテーピングやストレッチ指導、インソールの挿入などを患者さんと検討する。ヒアルロン酸注射などを行なうこともある。

概要

外脛骨とは足にある舟状骨という骨の内側にある骨であり,約2割の人に存在すると言われている。繰り返す運動などによるストレスで痛みを生じる。足のアーチが低下している人に見られやすく画像検査をしなくても外見からわかることもある。

治療

保存療法としては理学療法士による指導にてアーチ低下を防ぐインソールの処方やテーピングが行なわれている。手術療法としては年長者の場合は摘出術を行なうが、骨の成長が終わっていない若年者に対してはドリリングを行い,骨の血流を増やして癒合させる治療法もある。

概要

腰椎の関節突起間部でつながっているべき骨の連続性が絶たれてしまっている病態である。主に第5腰椎に生じ、学童期に多く発症することから原因はスポーツ活動による繰り返しの外力による疲労骨折と考えられている。バイオメカ二クスでは、分離症発生には伸展と回旋運動が重要とされる。Extension stress test、Kemp sign陽性、限局した棘突起の圧痛などの臨床所見に加え、早期診断にはMRIとCTが有用とされ、終末期とされる偽関節には至らない初期や進行期であれば、運動やコルセットで骨癒合が得られる可能性はある。青壮年期で分離症は安定期で無症状となるが、トップアスリートでは成人発症の新鮮分離症例があると注目されている。

治療

現時点で確実な予防法は見当たらないが、発育期スポーツ少年では下肢筋の硬さが多いとされ、ストレッチやパフォーマンス時の体幹と骨盤リズムの評価をすることがリハビリテーションで重要とされる。

概要

貧血とは「血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態」を指します。肺から身体に取り込まれた酸素は赤血球の中のヘモグロビンと結合して身体の隅々の細胞に運ばれます。このヘモグロビンの濃度が低下すると酸素運搬能力が低下するため、パフォーマンス、特に持久力に直接悪影響を及ぼします。ですから、スポーツ選手は貧血になってはいけないのですが、後述の理由でヘモグロビンの原料となる鉄が不足しやすいため、貧血(鉄欠乏性貧血)を起こしやすく、よく知っておく必要があります。

原因

大量の汗をかくことによって鉄が失われやすくなることが主な原因です。毎日2リットル発汗をすると、それだけで通常生活の2倍の鉄が失われることになります。発汗以外にもランニングによって足の裏で血液が持続的に破壊されたり、消化管、すなわち胃や腸で微小な出血が起きたりして貧血になりやすいとも考えられています。「スポーツ貧血」といわれるゆえんです。

概要

喘息は気道の慢性炎症性疾患であり,ウイルス感染・喫煙・ストレス・低温など,様々な刺激に対する気道の過敏性が関与して起こると考えられています.その中でも,運動によって気道狭窄が誘発されるケースを,“運動誘発性喘息Exercise-induced asthma: EIA)”もしくは“運動誘発性気道攣縮(Exercise- induced bronchoconstriction: EIB)”と呼びます.

喘息発作時には,呼吸困難感や息切れ,喘鳴などが生じるため,EIA/EIBを有するアスリートでは,激しい練習や試合において,パフォーマンスの低下がみられますが,喘息であるという自覚がない“隠れ喘息”の選手も意外と多いことが知られています(実際に,冬季バンクーバーオリンピック日本代表選手における喘息の有病率は12.9%と高率であったことが報告されています).

検査

一般的な喘息の診断のためには,肺機能検査(スパイロメトリー)・胸部レントゲン・血液検査・気道過敏性試験などが有用ですが,運動時にのみ喘息症状を認める場合にはEIA/EIBを疑って,運動誘発試験を行い診断することも可能です.

治療・予防

喘息の主な治療薬は,気管支拡張薬(気道を広げる)と抗炎症薬(気道の炎症を抑える)です.それらは,発作予防のために日頃から使用する長時間作用型のものと,発作時に症状を改善するために一時的に使用する短時間作用型のものがあり,一般的には吸入型のものが多いです.

EIA/EIBは予防が重要であり,運動前にウォーミングアップを行う,極端に気温や湿度が低い環境での運動を避ける,マスクを使用するなどの対策法があります.また,運動開始前に短時間作用型の気管支拡張薬の吸入を予防的に行う方法もあります.

参考文献

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2. 土肥美智子ほか. バンクーバーオリンピック代表選手(候補選手を含む)における喘息について.日本臨床スポーツ医学会誌 2010; 18: S113.

3. 藤本繁夫ほか. 運動誘発性喘息とその対策-特にアスリート喘息を中心に- 日本臨床スポーツ医学会誌 2011; 19: 179-183

※実施の際はご自身の体調をよく理解した上で実施してください。

自主トレーニングシリーズ08【Cat & Dog】

自主トレーニングシリーズ07【殿筋ストレッチ】

自主トレーニングシリーズ06【体幹回旋ストレッチ】

自主トレーニングシリーズ05【前腕屈筋群ストレッチ2】

自主トレーニングシリーズ04【前腕屈筋群ストレッチ1】

自主トレーニングシリーズ03【腸腰筋ストレッチ】

自主トレーニングシリーズ02【ハムストリングストレッチ2(立位)】

自主トレーニングシリーズ01【ハムストリングストレッチ】

1.アキレス腱炎とはどんな疾患ですか?

・立位や歩行、ランニングなど身体を動かすときに酷使される組織であるアキレス腱に炎症を起こした状態です

・若年アスリートから中高年運動愛好家まで広く生じるスポーツ障害のひとつです

・アキレス腱に炎症が生じ、腱実質の変性や損傷が生じます

2.どんな症状がでますか?

・踵から5cm程度の間に痛みを生じ、腫れや熱さを感じます

・痛みは運動時に起こり安静時にはほとんどありません

・初期症状では起床時のこわばりや伸ばしたときに痛みがでますが、少しずつ動かしていくことで症状が減少するため通常通りの運動が可能です

3.どんな治療をしますか?回復にはどのくらいかかりますか?

・基本的には保存療法で症状改善しますが、稀に手術を要する場合もあります

・保存療法ではリハビリテーションが中心になりますが、体外衝撃波なども用いられることがあります

・超音波検査装置(echo)で炎症や新生血管の変化を確認し、理学療法士と情報共有しながら治療していきます

・回復までの時間は部位や初回なのか繰り返しなのかなどで異なります。

・初期症状のときは運動制限と正しいケアをすることで2週間程度で改善します

4.どんなリハビリテーションをするのですか?

・踵の動きと痛みを評価し、踵のアライメント不良を改善します

・ふくらはぎの柔軟性改善のためのストレッチを行います

・足関節機能の改善(可動域と筋力)を行います

・時期に合わせて物理療法(超音波療法やアイシングなど)やテーピングを併用します

・インソールを作成することもあります

<参考文献>

堀居昭:アキレス腱炎のメカニズムと予防法について. Sportsmedicine No63 37-39 2004

江玉睦明:アキレス腱障害発生メカニズムの解剖学的検証.日本基礎®額療法学雑誌 第20巻2号16-21 2017

Ruth L. Chimenti,DPT,PhD,et al: Current Concepts Review Update:Insertional Achilles Tendinopathy Foot Ankle Int . October38(10):1160–1169,2017

1.Jones骨折とはどんな病気ですか?

・足の小指の疲労骨折(繰り返されるストレスが原因の骨折の一種)です

・ステップや切り返しをするスポーツになりやすく、サッカー選手では半月板損傷や前十字靭帯損傷と並んで起こりやすい怪我です

2.どんな症状が出ますか?

・初期は運動時の痛みや圧痛などですが、症状がなくレントゲンでも骨折線が見えず気付かれないことがあります

3.どんな治療をしますか?回復にどれくらいかかりますか?

・スポーツを休止,骨折部の固定・免荷,リハビリテーション,足底板の作製、超音波治療器(LIPUS)などを行います

・他の部位の疲労骨折よりも治りにくいことがあり、スポーツ選手では手術が考慮されます

・スポーツ復帰の目安は部位や重症度によって異なりますが,数週間から数ヶ月程度です

4.当科では

・問診、触診、レントゲン、エコー、 MRIなどで診断します

・1~3週間ごとにレントゲン、エコー、 MRIなどで骨癒合(骨のくっつき具合)を確認し、スポーツリハビリテーションを行います

・骨癒合が進まない場合や競技レベルによって手術を考慮します

<リハビリテーション>

①評価

・可動域・能力測定

・使用している靴の確認(一般的にBladeタイプのスパイクは負担が大きい)

靴の確認

・骨折部に負担がかかる動作の確認(例:切り返し)

②理学療法

・骨折部に負担のかからない運動、エアロバイク、水泳、水中ウォーク

・患部の治療促進(超音波治療)

・母趾球で体重を支える練習

母趾球で体重を支える練習

・切り返しの練習(図)

切り返しの練習

<参考文献>

1. 齋田良和ほか:プロサッカー選手における第5中足骨疲労骨折(Jones骨折)の発生状況調査.JOSKAS 40:531,2015

2. 立石智彦:ジョーンズ骨折術後の競技復帰.臨床スポーツ医学36(8),2019

3. Justin C et al.: Changes in Plantar Loading Based on Shoe Type and Sex During a Jump-Landing Task . Journal of Athletic Training,48(5):601–609,2013

4. 古賀英之:予防に導くスポーツ整形外科.文光堂.293-300,2019

1.TFCCとはどんな病気ですか?

・手首の小指側にあるTFCCと呼ばれる靱帯と線維軟骨の複合体が損傷する怪我です。

・手をついて転倒し、強い捻じれと背屈(手の甲を反ること)が強制されて怪我をする事が多いです。

・スポーツ等では野球のバッティング、ゴルフスイング、テニスやバトミントンといったラケット競技で好発します。

TFCC損傷

左:TFCC損傷/右:TFCCの立体構造(引用文献2より)

2.どんな症状が出ますか?

・主な症状としては、動作時に手首の小指側に鋭い痛みや不安定感が出現します。

・特に手首を小指側に曲げたり、その部位を押さえると痛みが出現します。

・日常生活の動作では包丁を持つような手の構えをしたり、手首を捻ったりする時に症状が出やすいです。

TFCCのMRI画像診断

TFCCのMRI画像診断:矢印部で断裂し、白くなっている(引用文献2より)

3.どんな治療をしますか?回復にどれくらいかかりますか?

・画像検査(MRI、手関節造影、単純X線)で損傷の程度を判断します。

・基本的には保存療法を選択し、手関節装具を用いて関節の安静を確保します。

・約4週程度の装具固定で57%に症状の緩和を認めるという報告もあります。

・保存療法で症状が緩和しない場合は手術適応となる事があります。

・手術の場合は概ね6か月で競技復帰を目指します。

4.当科では

・まず、手関節を使うスポーツ動作を禁止し、6週間スプリント固定、その後手関節装具(リストケア等)で3か月固定します。

・それでも痛みが続く場合には手術を考慮します(関節鏡使用でのTFCC修復術)。

<リハビリテーション>

保存療法の場合

・手関節への負担を減らすための手関節装具を使用(固定期間は約6週~12週程度)

・テーピング指導

・手関節周囲筋のストレッチとトレーニング

・肩関節周囲筋のストレッチとトレーニング

・胸郭・肩甲帯ストレッチ

・体幹トレーニング

※スポーツ復帰や日常生活動作の安静度は経過をみながら医師と相談して決定していく。

手術療法の場合

・リハビリプログラムの例

術後~2週 2~4週 4~6週 6~8週 8週~3カ月 4~6カ月
リハビリ 指の運動
指の拘縮予防
指の運動
肩・肘可動域訓練
手首の運動
(手首の曲げ反らし)
手首の運動
(手首の捻り)
ストレッチ
手関節全可動域の運動
前腕筋の筋トレ
スポーツ競技への復帰

<参考文献>

1.新井ほか:スポーツ整形外科 術後リハビリテーション・プログラム(第7回) 上肢のスポーツ損傷 TFCC損傷(解説).臨床スポーツ医学,Vol.28:313-318,2011. 

2.中村俊康:スポーツによる手関節・肘関節障害の治療 TFCC障害の治療法(解説/特集).関節外科,Vol.30:337-343,2011.

3.別府ほか:スポーツ障害・外傷とリハビリテーション テニス.J Clin Rehabil,Vol.21:486-490,2012.

4.Park,et al:The Rate of Triangular Fibrocartilage Injuries Requiring Surgical Intervention.Orthopedics,33(11):806,2010.

5.Pang,et al:Ulnar-sided wrist pain in the athlete (TFCC/DRUJ/ECU).Curr Rev Musculoskelet Med,10:53-61,2017.

1.手指骨折とはどんな病気ですか

・舟状骨骨折:手をついて転倒受傷のパターンが多く、スポーツ競技ではサッカーやラグビー等で手関節伸展位(手の甲側に沿った姿勢)で痛めます。舟状骨は構造的に再生過程で血流不足を起こしやすく、一端骨折すると難治性となりやすいと言われています。

受傷時の肢位

受傷時の肢位

舟状骨骨折の圧痛点とレントゲン像

舟状骨骨折の圧痛点とレントゲン像

文献1から

・有鈎骨骨折:野球やゴルフ等のグリップ動作や直接的な打撃によって生じると言われています。

有鉤骨の解剖とレントゲン像

有鉤骨の解剖とレントゲン像

文献2から

・中手骨骨折:スポーツではボクシング等の格闘技での受傷が多く、別名ボクサー骨折と言われています。特に小指に多くみられます。

中手骨骨折レントゲン像

レントゲン像文献3から

2.どんな症状が出ますか?

・舟状骨骨折:親指の付け根あたりの圧痛、握力低下、手関節の可動域制限、腫脹

・有鈎骨骨折:小指の付け根よりやや下周囲の圧痛、握力低下、手関節の可動域制限、腫脹

・中手骨骨折:指の付け根よりやや下での圧痛、握力低下、手関節の可動域制限、腫脹

3.どんな治療をしますか?回復にどれくらいかかりますか?

舟状骨骨折

単純X線像で骨折部位が特定できないこともありCTやMRIが必要となることもあります

安定型骨折では手から前腕までのギブス固定での保存療法が可能ですが、不安定型ではスクリューによる手術療法が必要になります。


有鈎骨骨折

骨癒合に時間がかかるため基本的には手術的に骨片摘出をいます。新鮮例でかつ骨折面の転位がほとんどない場合や、時間的に余裕がある場合,手術を希望しない方にはギプス固定による保存療法を行います。


中手骨骨折

多くは保存療法で良好な成績が得られると言われています。転位が大きい場合はワイヤー固定による手術療法を選択することがあります。

中手骨頚部骨折へのワイヤー固定

中手骨頚部骨折へのワイヤー固定

(Foucher法)

※1 いずれの骨折も保存療法では3~6週程度の固定が必要です。

※2 日常生活動作の安定度やスポーツ競技復帰は骨癒合の程度で判断していきます。

4.当科では

それぞれの骨折で、上記の標準的な治療が可能です。

保存療法はもちろん、手術療法を選択することも可能です。手術療法では、相談に応じて全身麻酔ではなく、エコーガイド下に腕神経叢麻酔(ブロック麻酔)を安全に行え,日帰り手術も可能です。また、外傷で軟部組織の傷害や血流不全が合併する際にはそれらに効果的な高気圧酸素療法を併用することも可能です。

<リハビリテーション>

ギブス固定中

・腫脹軽減のための手指運動、上肢挙上

・スポーツ選手は軽いジョギング


ギブス固定除去後

・手指の関節可動域訓練

・手関節の可動域訓練

・握力強化

・巧緻動作訓練

・スポーツ復帰は健側握力の8割程度を目安とする

・スポーツ選手は持久力のリカバリー

<参考文献>

1.藤岡宏幸ほか:手舟状骨骨折. 臨床スポーツ医学,35:248-253,2018.

2.西浦康正:野球-有鈎骨骨折・手指血行障害.臨床スポーツ医学,35:292-296,2018.

3.加藤直樹:中手骨・指骨骨折.臨床スポーツ医学,35:258-262,2018.

4.沖本信和ほか:有鈎骨骨折の治療経験.整形外科と災害外科,42(1):149-152,1993.

5.国分正一ほか:今日の整形外科治療指針.Vol.6,2010.

6.斎藤英彦ほか:手外科診療ハンドブック.

1. 肉ばなれとはどんな疾患ですか?

・スポーツ外傷の中でも頻度が高く、筋肉が過剰に伸ばされて生じます

・多くの場合は筋が伸張しながら収縮する遠位性収縮時に生じます

・起こりやすい部位は競技種目によっても異なりますが,ハムストリングスが最も多く,次いで下腿三頭筋,大腿四頭筋の順です

・ハムストリングスのなかでは,大腿二頭筋長頭が最も生じます

2. どんな症状が出ますか?

・局所の圧痛・腫脹・硬結を認めます

・受傷直後に筋の凹みを触知することがあります

・運動時のストレッチ痛や収縮による痛み

・時間経過で皮下出血や筋力低下と可動域制限が生じることがあります

3. どんな治療をしますか?回復にはどのくらいかかりますか?

・保存療法が主ですが重症例やアスリートは手術が必要なこともあります

・回復までの時間は部位や損傷の度合いによって異なり,スポーツ復帰は軽傷で1~2週間,重症の場合は数ヶ月かかることもあります


・早期再開は再受傷リスクが高いため,自覚症状が改善しても主治医等と相談しながら復帰します

4.当科では

・エコーやMRIで部位や重症度などを判断します

・血腫が大きい時はエコーをみながら除去することがあります

・重症例やアスリートには手術を行うこともあります

・スポーツ復帰に向けたリハビリテーションを行います

5.どんなリハビリテーションをするのですか?

・太ももやふくらはぎの柔軟性改善のためのストレッチを行います

・疼痛の状況を確認しながら運動負荷を増加させていきます

・必要に応じて筋力測定を実施して患健差を確認します

<参考文献>

1. 臨床スポーツ医学編集委員会.スポーツ外傷・障害の理学診断・理学療法ガイド.2003

1. 疲労骨折とはどんな疾患ですか?

・スポーツなどで繰り返される負荷が原因となる骨折です

・発症のピークは十代ですが,幅広い年齢層にみられます

・下肢では脛骨,中足骨,腓骨が多く,種目によって骨折しやすい部位があります

2. どんな症状が出ますか?

・スポーツ活動中に痛みを認めますが,初期は痛みがごく軽度のため運動を継続してしまい悪化させてしまうことがあります

3. どんな治療をしますか?回復にはどのくらいかかりますか?

・基本は保存療法ですが,一部治りにくいものもあり手術を選択すれることがあります

・スポーツを中止し,経過をみながら運動強度を上げていきます

・部位や重症度によってスポーツ復帰の時期は異なります

4.当科では

・問診,触診,レントゲン,エコー,MRIなどで診断をします

・初期にはレントゲンで異常を認めないことがあるため,積極的にMRIやエコーで診断をします

・スポーツ復帰にむけたリハビリテーションを行っています

<参考文献>

1. 内山英司:疲労骨折の疫学.臨床スポーツ医学20.2003