江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

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大腸がん

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大腸がんについて

大腸とは、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸で構成される1.5mほどの長さの管腔臓器です。(図1)大腸は、小腸で栄養吸収された便の元の水分を吸収し、便を固形にする役割があります。

大腸の病気で特に重要なのが “大腸がん” です。

2022年、がん統計の部位別がん死亡数によると、男性は、肺がんに次いで第2位、女性は第1位と、大腸がん死亡数は多く、罹患数も年々増加傾向です。(図2)(がん情報サービス:人口動態統計がん死亡データ)

大腸がんの症状は、腫瘍からの出血による血便、それに伴う貧血、がんが大きくなると徐々に大腸が狭くなるため、便が細くなったり、腸閉塞を起こすと腹部膨満や腹痛といった症状が出現します。一方、これらの症状は大腸がんが進行してから出現する症状で、来院される大腸がん患者さんのおよそ6割は無症状です。

大腸がんの診断について

大腸がんの詳しい部位や大きさを調べるために、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を行います。下部消化管内視鏡検査とは、肛門から大腸の中へ内視鏡を挿入し、腸内を観察する検査です。内視鏡検査では直接組織採取が可能なため、腫瘍の一部を採取し病理検査に提出し、組織学的に大腸がんであるかを調べます。

大腸がんであることが確定したら、がんの全身へのひろがり(転移)を調べるため、CTやMRI、エコー検査などを行います。

全ての検査結果で治療前のステージを診断し、そのステージに適した治療を計画します。

 

大腸がんの治療について

大腸がんの治療は、肉眼的にとらえることのできる病巣をすべて切除する根治手術が基本です。根治手術とは、腫瘍を含む腸管と、転移する可能性があるリンパ節を切除する方法のことをいいます。切除した腸管は、残りの腸管とつなぎ合わせて、便が通るようにします。

 

大腸がん手術について(アプローチ方法)

手術治療のアプローチ方法は大きく分けて、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術という方法があります。それぞれ腹腔内へのアプローチと腹部切開創の大きさが異なります。

 

①開腹手術

 従来法である開腹手術は、図のように腹部を20~30cm程大きく切開し、臓器を直接手で触りながら手術を行う方法です。

②腹腔鏡手術

 腹部に1cm程度の小さな穴をあけて、腹腔鏡というカメラを挿入し腹腔内を観察しながら手術を行う方法です。

③ロボット支援手術

 腹腔鏡と同様に、腹部に1cm程度の小さな穴をあけて、カメラを挿入し腹腔内を観察しながら手術を行いますが、カメラや手術器具がロボットのアームに接続されていて、執刀医はモニターを見ながらそれらを遠隔操作し手術を行います。手術器具に関節があるため、人間の手指に近い動きが可能です。

 

ロボット支援手術について

当院では、ダ・ヴィンチ(da Vinci Xi サージカルシステム、インテュイティブサージカル合同会社)という手術支援ロボットを用いております。ロボット支援手術では、腹腔鏡手術より精度の高い手術が可能であるといわれています。術者は腹腔鏡で拡大された鮮明な3次元画像を見ながら鉗子を遠隔操作し手術を行います。

腹腔鏡手術とロボット支援手術の違い

腹腔鏡手術では、‘腹腔鏡用鉗子’といわれる棒状の手術器具(把持鉗子や電気メスなど)を腹腔内へ挿入し、直接術者が手で操作しながら手術を行います。図のように、鉗子は実際の手の動きとは反対方向に動くことや、動きが直線的であること、鉗子の先端は実際の手の動きより大きく動くため、手術操作には技術と工夫が必要となります。

一方、ロボット支援手術では、鉗子に関節があるため、人間の手指に近い動きが可能で、手振れが少ないため細かい操作をより正確に行うことができるようになりました。また、直腸がんの手術など、腹腔鏡手術でも届きにくいような骨盤の狭く深い空間でも鉗子が到達し、カメラで拡大視しながらより正確に行うことが可能になりました。

 

腹腔鏡手術・ロボット支援手術 メリット・デメリット

腹腔鏡手術は、従来法である開腹手術と比較し、出血量が少ない、傷が小さく痛みが少ない、手術後の回復が早い、入院期間が短いなどの利点があるといわれています。

一方、ロボット支援手術は、腹腔鏡同様、出血量が少ない傷が小さく痛みが少ない手術後の回復が早いことに加え、腹腔鏡と比較し開腹移行(術中開腹手術への術式変更)が少ない合併症が少ないなどの利点があるといわれています。

これらのエビデンスから、2024年度大腸癌治療ガイドラインでは、大腸がん手術の選択肢の一つとしてロボット支援手術が推奨されています。(大腸癌治療ガイドライン医師用2024年度版、大腸癌研究会)

ただし、ロボット支援手術にも欠点があります。腹腔内の癒着(過去の手術などにより、腹腔内の臓器同士や脂肪組織などが互いにくっついている状態)、高度肥満症例では従来の開腹手術のほうが安全な場合があります。患者さんの病状や条件にあわせて術式を選びます。

大腸がんロボット支援手術の実績

当院では、常勤の大腸ロボット支援手術プロクター医長 岩田乃理子を中心とし大腸がんに対し積極的にロボット支援手術を行っています。

2023年度は年間71例を施行し、年々増加傾向にあり、2024年度は大腸がん全体の87.7%にロボット支援手術を行っています。また、導入した2022年4月から2025年3月まで計260例の大腸がんロボット支援手術を施行しています。

ロボット支援手術は、2020年から直腸がん、2022年から結腸がんに対し保険収載となり、健康保険で手術を行っております。

 

入院から手術までの流れ(ロボット支援手術・人工肛門造設を伴わない術式の場合)

手術2日前 入院 腸管前処置。

手術当日  手術(3時間~5時間程度。術式により所要時間は異なります。) 

手術翌日  歩行・飲水開始。

手術3日後 流動食から食事開始。1日ごとに食事形態を食上げ。

手術6日後 退院。

臨床試験について

当科では、東京科学大学消化管外科学分野と協力し複数の臨床試験に参加しています。詳しくは担当医にお尋ねください。

文責 岩田

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FAX:03-3657-0758

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