江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

江戸川病院

診療科・部門|リハビリ科

2024-01-29更新

脳血管疾患とは

脳出血(脳内出血・くも膜下出血)・脳梗塞や硬膜下血腫・水頭症などの総称です 。

症状:頭痛・意識障害・麻痺・言語障害(失語症・構音障害)・高次脳機能障害・嚥下障害・歩行障害・ADL(日常生活動作)障害・などが主にあげられます。

診断:上記症状・CT・MRIなどにより診断されます。

治療:神経内科・脳神経外科の領域で薬物療法・手術療法などが行われます。

リハビリテーションの対象

意識障害・麻痺・言語障害(失語症・構音障害) ・高次脳機能障害・嚥下障害・歩行障害・ADL(日常生活動作)障害などの症状の評価と訓練を入院・外来患者様を対象に行います。

当院でのリハビリテーションの開始

神経内科・脳神経外科治療と同時に(或いは、リハビリテーションが各科治療に影響しない範囲で)できる限り早期からスタートします。


早期よりリハビリを開始し、離床を可能とすることにより、麻痺している上下肢の早期の回復を促し、健康な部分の筋力の低下や関節の拘縮、褥創(床ずれ)さらには呼吸機能の低下を予防する事が出来ます。

具体的なリハビリテーションの内容

まずは患者様の意識状態を評価し、意識障害のある方には種々の医療スタッフが様々な色々な面から刺激をして回復を目指していきます。


身体機能面に対しては、麻痺や全身状態の評価を行い、麻痺肢の回復訓練や関節拘縮の改善、麻痺していない部位の筋力維持・強化を図ります。同時に日常生活動作の基本となる寝返りや起き上がり訓練、端座位(ベッドの端に座る)訓練、歩行訓練などを行っていきます。状況や必要に応じて杖や補装具などの補助具を使用します。また早期より自力での移動を可能にするために車椅子移乗や操作などの訓練も行います。


言語障害(失語症)・高次脳機能障害に対しては、言語聴覚士が中心となり評価・訓練を実施します。(詳細は失語症と高次脳機能障害をご参照下さい。)これらの障害は、一概には言えませんが、比較的長期間にわたって回復が見込めることが分かってきております。そのため入院時はもちろん、外来でのリハビリテーション訓練にも力を入れております。


ADL(日常生活動作)障害に対しては実際の日常生活場面(病棟・自宅)において随時評価していきます。食事や着替え、トイレでの動作、歯磨きや洗顔などの毎日行う動作を評価し(必要な場合は補助具なども利用することで)早期に自立できるよう少しずつ訓練していきます。


嚥下(食物の飲み込み)障害の症状が見られる患者様には言語聴覚士が中心となり嚥下状態を観察、評価(必要に応じて嚥下造影検査《VF》等を実施)し、嚥下訓練を進めます。状態に合わせて食形態を検討していきます。はじめは模擬食から、改善度を見ながらペースト食や軟菜等へと段階をおって調整しています。嚥下がうまくいかないと誤嚥をおこし重篤な誤嚥姓肺炎を起こすこともありますのでこれはとても重要です。

リハビリテーションの期間

脳血管疾患の場合、医療保険で可能なリハビリ期間は基本的に発症から約6か月間と定められています。 当院では個々の患者様に対して退院後の在宅生活を踏まえた集中的なリハビリテーションを入院中に実施することを基本としています。しかし、障害の状態や年齢、社会的な状況などによって必要な場合は基本的な期間に関わらず、外来でのリハビリテーションも(継続して)実施しています。

内科疾患のリハビリテーション

発熱や全身状態の悪化などを伴う一般的な内科疾患や開胸・開腹手術を必要とする外科疾患による2次的な廃用症候群に対してのリハビリテーション。

リハビリテーションの対象

安静による長期の臥床や外科的手術を起因とした体力低下・筋力低下・嚥下障害・ADL(日常生活動作)障害に対して症状の評価と訓練を入院中の患者様を対象に行います。


また生活指導が必要となる糖尿病の患者様なども対象になります。

具体的なリハビリテーションの内容

患者様の全身状態を評価し、離床を促し、筋力の強化や持久力の向上を図ります。原因疾患の状態に応じて訓練の場所や運動の負荷・時間などを調整します。


具体的には重錘ベルトやエルゴメーター(自転車)などの器具を使用し筋力の強化を図ったり、平行棒や機能に合わせた名歩行補助具を使用して歩行するなどして、日常生活動作の改善を図ります。


またこの領域で対象となる事が多い高齢の方には、嚥下障害が多く見られます。嚥下障害を起因とする摂食量の不足や誤嚥性肺炎が疑われる発熱などが見られる場合は、積極的に必要な嚥下評価を行い、食事形態の調整・指導や訓練を実施します。


糖尿病に対する生活指導・教育を目的とした入院患者様には、種々の評価をもとに運動指導を実施しています。


医師や看護師、栄養士などのチームによる指導方法でリハビリテーションとしては個々の患者様の生活様式に合わせた具体的な運動方法(ストレッチ・歩行速度や距離・筋力トレーニング)の指導を実施します。

心臓リハビリテーションの対象

心筋梗塞、狭心症、心臓手術後の患者さんは、心臓の働きや全身の持久力が低下しています。また、心臓の治療のため安静な生活を続けたことによって、運動機能や体の調節機能も低下しています。


医師の治療、理学療法士による運動療法や薬剤師による薬剤指導及び栄養士による栄養指導、看護師による日常生活指導を通して疾患の治療のみならず再発の予防も考慮した総合的なリハビリテーションを行います。


このプログラムを通して、社会復帰や職場復帰の前に、低下した体力を安全な方法で回復させ、精神面でも自信をつける必要があります。

具体的なリハビリテーションの内容

心筋梗塞、狭心症、心臓手術後の患者さんに対して、血圧、脈拍及び必要に応じて心電図にて、安全面の管理をしながら自転車エルゴメーターを中心とした運動療法を行います。

CPX(心肺運動負荷試験)

運動中の心臓と肺の状態を測定し、危険の少ない運動の強さ・時間を決めるために行います。

自転車(エルゴメーター)をこいでもらい、徐々に負荷量を上げていきます。運動中は心電図、血圧、呼吸中の酸素と二酸化炭素を測定し、そこから運動時の心臓と肺の状態を把握します。これにより心臓の機能に問題がある方でも、安全に運動を行う目安が分かります。適度な運動の継続により肥満の予防・改善、心臓の機能維持・向上、高血圧の予防・改善等が認められることが分かってきましたので、心不全・心筋梗塞等の予防や心臓の機能の向上を目的に適度な運動が継続できるように支援させて頂きます。


毎日の運動療法に加えて、理学療法士による運動療法や薬剤師による薬剤指導及び栄養士による栄養指導、看護師による日常生活指導を適宜実施していきます。

リハビリテーションの対象

人工関節置換術や脊柱管狭窄症の手術後、大腿骨頸部骨折をはじめとする一般の骨折・関節の手術後など多様な整形外科疾患に対応したリハビリテーションを行っています。

具体的なリハビリテーションの内容

疾患に応じて評価を行い疼痛や関節運動、筋力低下の部位や原因を明らかにし、歩行障害をはじめとする、各種日常生活動作における障害の改善を目的にリハビリを実施しています。具体的な内容として、物理療法、徒手療法、関節可動域訓練、筋力強化、歩行訓練、エルゴメーター、階段昇降をはじめとする日常生活動作訓練など患者様の状態に合わせて訓練を実施しています。

人工関節センター

当院は人工関節センターを有しており、人工膝関節置換術及び人工股関節置換術を年間例行っています。リハビリテーション科では必要に応じて術前から関わり、術翌日より早期にリハビリを開始し、早期機能回復、早期社会復帰を目指して患者さんと共に日々トレーニングに励んでいます。

人工関節手術後のリハビリ

人工関節をいれることで骨自体の痛みである1次性の痛みは取り除かれます。リハビリでは筋肉や、その他関節周囲の軟部組織が原因である痛みに対し、関節周囲組織の柔軟性を獲得し、筋力を増強し関節の安定性を高めることで徐々に痛みの軽減を図っていきます。


このように痛みが軽くなることによって立ち上がり・歩行を行うのが楽になります。また歩行等の動作練習と並行して関節を動かすことで、関節角度の拡大を図ります。手術前の関節角度により獲得できる角度は個々で異なってきますが、立ち上がり、階段の上り下りといった日常の動作がスムーズに行えるような関節角度の獲得を目指していきます。

呼吸器疾患のリハビリテーション

感染などをきっかけに慢性呼吸不全の急性増悪をきたした患者様や、肺炎などで入院された患者様、外科手術後の呼吸不全の患者様に対して行うリハビリテーションです。

リハビリテーションの対象

慢性呼吸不全の急性増悪をきたした患者様や、肺炎の患者様、酸素吸入を行っている患者様だけでなく、長く咳や痰が続き日常生活動作で息切れがするといった症状で苦しんでいる方々も対象になります。

具体的なリハビリテーションの内容

患者様の全身状態を評価し、呼吸に必要な関節の関節可動域訓練や筋力増強訓練をはじめ、口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸法、呼吸体操、歩行訓練やトレッドミルなどを使った運動療法、自己排痰法の指導などを行います。症状に合わせて呼吸不全の自己管理ができるようプログラムを作ります。


また、退院後の生活を見据え、日常生活方法の指導も最終的に行います。具体的には、入浴時や階段昇降時の呼吸法の指導です。

疾患の情報及び訓練

1.失語症

失語症とは、脳血管障害・脳挫傷・変性疾患などによって、大脳の中の言語中枢が障害された状態です。失語症になると、相手の言葉が理解できない、言葉が思い出せない、自分の意図と異なる言葉が出てしまう、文字が読めない、文字が書けない、などの症状が現れます。


・失語症の回復

失語症の回復は、原因となる疾患の特徴、病巣の位置や大きさ、発病年齢、発病前の生活習慣や健康状態などによって様々であるため、一概には言えませんが、一般に40歳代ぐらいまでに発病した方の場合、適切な訓練プログラムによる言語訓練を最低3年以上継続することによって相当な回復が見込めることが分かってきています。


・失語症の言語訓練

はじめに、検査によって失語症の重症度とタイプを明らかにします。その上で、その方の重症度とタイプに合った訓練を、種々の訓練用教材を用いて行います。症状の回復と変化に合わせて、訓練用教材は随時変更し、最大限の機能回復を図ります。


当言語室では言語訓練教材シリーズを㈱新興医学出版社より出版し、全国の言語訓練施設や、多くの失語症の方々より好評を頂いております。


訓練スタッフ(ST)と1対1で行う個別訓練と並行して、その方の失語症の特徴や趣味を考慮した上で、失語症友の会など病院外での活動も支援しております。 また職業復帰の際には必要に応じて職場環境調整なども実施いたします。


このように言語訓練を含めた様々な活動を通して、機能回復はもちろんのこと、広い意味での社会への復帰を支援しております。

2.失認・失行

失認は脳血管障害、脳挫傷、変性疾患などによって、大脳の中で視覚や聴覚などの感覚器からの情報を処理する部位を障害された状態、失行は運動麻痺はないのに習熟した運動が障害される状態です。


たとえば、視力の問題はなく見えているのに、物の形、色、人の顔、道順などがうまく認識できなくなってしまうといった視覚失認や、視野に問題はほとんどないにもかかわらず、左側のものを見落としたり、身体の左側をぶつけたりする左半側空間無視、手足は動かすことは出来るのに、動作がぎこちなくなったり、道具が上手く使えなくなるなどの失行など、様々なものがあります。


・失認・失行の回復・訓練


失認・失行の訓練では、綿密な訓練計画に基づき機能回復をめざします。そしてその機能を最大限に用いることと並行して、他の感覚を利用しながら物を認識する練習も行います。たとえば視覚失認ならば、視覚の機能を回復しつつ、触覚や聴覚を利用するといった方法です。


また現状の能力に合わせて環境を調整することも大切で、最大限自立した生活が可能な状況を整えることが必要となります。

3.記憶障害

記憶には過去・未来・意味・手続きについてなど様々な種類があり、これらが障害された状態です。具体的には直前に見たり聞いたりしたことを忘れてしまったり、昔の出来事を思い出せないなどの症状です。


・記憶障害の回復・訓練


記憶障害の正確な評価をした上で、記憶機能そのものの改善を目指すことと並行して、必要に応じて代替手段の確立・職場や家庭環境の調整を実施します。訓練の使用教材は症状によって異なりますが、主に患者様のニーズにあったものを使用し、生活全般が円滑に行えるよう支援していきます。

4.認知症

認知症は一般的には記憶障害を中核として、知的機能や認知機能の低下、行動障害や精神症状を認めることもあります。結果として社会生活や日常生活を送る上での困難を生じてきます。当院では医師の指示の下、主に認知症の評価と家族指導・環境調整を実施します。家族指導では、症状の説明・接し方・社会資源に関する情報提供を実施し、介護者の負担軽減を図ることも重要視しています。

今回当江戸川病院では、「がん患者リハビリテーション料」の施設基準の取得をし、がん患者様へのリハビリテーションの質を高めて行きたいと考えています。それに伴い病棟スタッフと連携し、患者様へのリハビリテーションの充実を図っていきたいと考えています。


がん患者リハビリテーションはチームアプローチが基本になっているので、リハビリテーション指示が出た際に、医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカー(MSW)の介入開始となります。

がん患者様に対するリハビリテーションの特性

がん自体が直接、体力低下や機能障害を引き起こす(例:腕神経層への浸潤による腕の麻痺)ことに加え、手術・化学療法・放射線療法等のがんの治療によっても合併症が起こることから、がんの種類や位置、進行を考慮したリハビリテーションや治療を導入する際には、治療後に起こりうる障害を見越した治療前からのリハビリテーションが重要となります。


他のリハビリテーション対象疾患(脳卒中、大腿骨頸部骨折等)と異なり、がんは原疾患の進行に伴い、機能障害の増悪、二次的障害が生じるため、進行により生じる様々な症状に対応する必要があります。

対象とする患者様とリハビリテーションの内容

以下の対象とする患者様において、必要に応じてリハビリテーションを提供させていただきます。


・術後合併症予防のため、術前からの呼吸方法や喀痰排出のためのリハビリテーションを行ないます。


・舌がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、その他頚部リンパ節郭清を必要とするがんにより手術を施行された、又は施行される予定の患者様に対し、術前・術後の適宜代用器具等を用いた、発声や嚥下の訓練や肩・肩甲骨等の運動障害に対するリハビリテーションを行ないます。


・骨軟部腫瘍又はがんの骨転移により当該入院中に患肢温存術又は切断術、創外固定又はピン固定等の固定術、化学療法もしくは放射線治療が施行された又は施行される予定の患者様に対し、義肢や装具を用いたリハビリテーションや、患肢以外の機能獲得のためのリハビリテーションを行ないます。


・原発性脳腫瘍又は転移性脳腫瘍の患者で、当該入院中に手術又は放射線治療が施行された、又は施行される予定の患者様には、構音障害や麻痺等に対する訓練等を行ないます。


・血液腫瘍により当該入院中に化学療法又は造血幹細胞移植を行う予定又は行った患者様には、心肺機能維持・向上や血球減少期間短縮のためのリハビリテーションを行ないます。


・緩和ケア主体で治療を行っている進行がん、末期がんの患者様であって、症状増悪のため一時的に入院加療を行っており、在宅復帰を目的としたリハビリテーションが必要な患者様には、自助具等の使用方法指導とリハビリテーション、摂食・嚥下療法、呼吸法の指導、日常生活動作のリハビリテーション・指導等を行ないます。