BNCT特定臨床研究報告

BNCT特定臨床研究報告

研究代表者

黒崎 弘正 (くろさき ひろまさ)

放射線治療科部長
日本専門医機構認定放射線専門医
日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医
日本核医学会専門医
医学博士
 

BNCT特定臨床研究フェイズ2終了報告

このたび特定臨床研究:FDG-PET陽性の浅在性腫瘍に対するBNCT(jRCTs031240204)の治療が終わりましたことをご報告申し上げます。
一般にBNCTではFBPA-PETで取り込まれる腫瘍に対して効果的ではないかとされております。その一方でFBPAーPETは必ずしも臨床の現場では普及しておらず、江戸川病院でも検査が施行できません。そこで、臨床的によく使われているFDG-PETで取り込む腫瘍に対してBNCTの効果をみたものです。また本研究では2023年夏から行われた再発乳がんに対するBNCT(jRCTs031220371)の結果を踏まえて、研究計画がされました。
2024年8月から開始された本研究は10例で、すでに患者登録、BNCT治療、必要な経過観察が終了しております。10例中9例が女性、また7例が乳がんでやや偏った疾患となってしまったのは研究としての反省も0ではありませんが、特定臨床研究フェイズ1の再発乳がんの研究ではいなかった腫瘍消失例を経験しており、今後詳しい解析作業を行わせていただきます。

BNCT特定臨床研究フェイズ1終了報告

2023年7月に始まった特定臨床研究「放射線治療後再発乳がんを対象としたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のパイロット試験」(jRCTs031220371)は終了2025年10月で計画されていましたが、皆様のご協力を得て、2024年春には予定された症例数を行うことができました。本研究に関与していただいたすべての方にまずは感謝申し上げます。
この研究は、乳がんに対するBNCTの安全性と有効性を検討するものでしたが、この安全性・有効性とも証明できたと考えております。特に胸部へのBNCTは原子炉を用いたBNCTでもほとんど報告が無く、本研究のあとに国立がん研究センター中央病院での胸部への研究や当院でのFDG陽性腫瘍の特定臨床研究が開始され、まさしく本研究はエポックメイキングなものとなったと考えております。
今後とも江戸川病院BNCTを応援していただければ幸いです。

BNCTの仕組み

・ホウ素化合物
「ホウ素化合物」はBNCT専用に合成されており、癌細胞に選択的に取り込まれます。
生成するときに得られたエネルギー(2.33MeV)を全部細胞に伝達して使い切ってしまいますので、がん細胞に大きなダメージを与え死滅させることができます。正常な細胞では、エネルギーの低い中性子(~0.025eV)は殆ど影響も与えず通過していきます。

BNCTの歴史

これまでの手法では、中性子を発生させるためには、原子炉が必要とされていました。
エネルギーの低く、人体に影響のない中性子を得るには、発生源を原子炉に求める他なかったので、日本でも限られた原子炉施設でのみ研究として行なわれてきました
安全性についても原子炉施設では常に核燃料を有しており、その管理も非常に大変なものとなります。
この治療環境ではがん患者さんへの負担も大きく、且つ一般の医療機関で行えるがん治療法として普及させる事は不可能で、大きな課題となっておりました。

原子炉から加速器へ

「原子炉」というBNCTを普及させるための制約から解放されるために、加速器という、今までと違った方法で、治療に必要な中性子が出せるようになりました。
一般の医療機関にも導入が可能となり、多くのがん患者さんにこのBNCTを提供できるようになります。

加速器の小型化

病院に設置することができる、小型加速器が開発されました。
核燃料を使用せず、電源を切れば放射線が射出されません。
医療としての普及の可能性がさらに広がり、BNCTによるがん治療への道が開けました。

BNCTの構成イメージ

治療対象条件

病変部位 ・・・ 放射線が届く範囲(おおむね深さ6cm以内)に病変があること
病理診断 ・・・ 悪性腫瘍であること(病理検査で確認)
標準治療歴 ・・・ 手術、放射線治療、化学療法などの標準治療が無効または希望しない場合
全身状態 ・・・ Performance Status(PS)0~2程度を保持していること
臓器機能 ・・・ 肝・腎・骨髄機能が保たれていること(BPA投与のため)
遠隔転移 ・・・ 基本的に遠隔転移を有しないこと(局所制御が目的のため)
中性子線照射可能性 ・・・ 腫瘍が中性子照射野内に十分含まれる位置にあること(最大直径24cm)
薬剤取り込み ・・・ PET検査で腫瘍への糖の活性化(T/N 比≧2.5程度)が確認できること

BNCTの特徴まとめ

がん細胞だけを狙える「選択的治療」です。
・一般的に1回の照射で完結することが多く、患者様の身体的・精神的負担が軽減されます。
 照射翌日から日常生活に戻ることが可能です。
・正常細胞への影響が少ないため、再照射が難しい部位にも治療が可能です。
 また、3ヶ月空ければ同部位に複数回の照射も可能です。
既存の治療が効かないケースに適応可能です。

Q&A

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放射線にはいくつか種類があります。従来の放射線治療で使われているのはX線が主流でしたが、より効果の高い陽子線や重粒子線も放射線治療に該当し、近年注目されています。

 一方、BNCTは放射線の一種、中性子線を用いた治療法です。正式には「ホウ素中性子捕捉療法」といいます。X線、陽子線、重粒子線は、がんを狙って体外からそれぞれの放射線を照射しますが、BNCTの場合は違います。放射線を照射する前に、がん細胞に「ホウ素」を大量に取り込ませ、その上で中性子線を照射します。中性子線は正常組織への影響が少ない量しか照射しませんが、がん細胞に取り込まれたホウ素と反応し、α線が発生します。がん細胞のみにα線が発生し、その威力は従来のX線治療の20倍の治療効果があります。正常組織にはホウ素がほとんど取り込まれないので影響は最小になります。

 BNCT以外の放射線治療は、正常な細胞へダメージを与えないように数十回に分けて照射する必要があるので治療期間は月単位になりますが、BNCTの場合は、原則1回の照射で治療が完了することが可能です。また、正常組織への影響が少ないので、一度照射した部位でも複数回照射が可能です。

 
当院では再発乳がんに対する特定臨床研究等を通じて豊富なデータが蓄積されており、乳がんに対して、安全に治療を行える環境が整ってきています。自由診療では、脳腫瘍、肺がん、頭頸部がん等の治療も行っており、乳がん以外の治療も積極的に行っています。

 BNCTは現時点では頭頸部がんでしか保険適用はありません。また、頭頸部がんのうちでも従来の治療が困難な局所進行・再発がんが対象で、適用には条件がいくつかあります。

 ただし、頭頸部がん以外のがんについても、当院でやっている乳がんのように、複数のがんについてさまざまな病院で臨床試験が行われています。

 悪性黒色腫、肺がん、肝臓がん、脳腫瘍、悪性中皮腫などでも行われています。ホウ素を取り込める栄養供給ルートと、ホウ素を運ぶ薬剤があれば、治療は理論的に可能なのでご相談下さい。

 
照射中は、寝台の上で寝ている状態で、何かあってもすぐに対応できるように、操作室からカメラで状態を確認しています。また、ご本人にコールボタンも持って頂くので安心して下さい。また中性子線が発生していることを体が感じることはありません。麻酔等も不要です。
不安感の強い患者様については、精神安定剤等を処方することも可能です。

 
日本の健康保険をお持ちの方の場合440万円(税込)になります。
費用に含まれるものは下記の通りです。
計画CT・治療日の採血検査・入院費(2泊3日)・入院部屋差額料・診療情報提供書代金

 
すべて対象外となります。

 
概ね40分から60分程度で治療は終了します。ホウ素製剤の血中濃度により照射時間は多少前後します。

 
特定臨床研究15症例 自由診療16症例 (2025.12月現在)です。 初発乳がんをBNCTで治療された方の体験談をYouTubeで公開しています。

 
創立93年の歴史ある2次救急病院です。32の診療科を持つ江戸川区の地域医療支援病院であり、がん治療に力をいれています。放射線治療件数も年間15000件前後の実績があります。

 
食事制限も入浴の制限もありません。

 
お問い合わせフォームや電話での相談ができます。
ホームページのお問い合わせフォームはこちら

自由診療について

●費用(自由診療・日本居住者)*保険適用外
通常税込440万円程(見込み金額となり、場合によって異なる)

●医学的見地に基づきBNCT治療により予測される副作用・リスク 重大な副作用として粘膜の炎症等を伴う嚥下障害、放射線皮膚損傷等の重度の皮膚障害、結晶尿による血尿などが現れる可能性があります。再発乳がんを対象に行った特定臨床研究P1、DG-PET陽性の浅在性腫瘍を対象に特定臨床研究P2においてみられた腫瘍縮小に伴う皮膚潰瘍、一時的な脱毛も副作用として予測されます。 その他にも以下の副作用や、予想外の副作用があらわれることがあります。

一般的な放射線治療で認められる有害事象

疲労感、悪心、嘔吐、食欲不振、放射線皮膚炎、皮膚の乾燥、皮膚の色素沈着・色素脱失、皮膚毛細血管拡張、乳房浮腫・疼痛、肺臓炎、皮膚・皮下の硬結、肋骨骨折、虚血性心疾患、心嚢液貯留、放射線性肺炎、皮膚疼痛、多汗症、乏汗症、クレアチニン増加、腫瘍崩壊症候群、皮膚欠損、吐気、食欲不振、腎炎、腎不全、肝不全、肝機能障害、四肢の浮腫、脱毛

ホウ素薬剤の添付文書に記載されている副作用

  20%以上 5~20%未満 5%未満
血液およびリンパ系障害   リンパ球数減少、フィブリン D ダイマー増加、白血球数増加 鉄欠乏性貧血、リンパ球減少症、血中フィブリノゲン増加
耳および迷路障害   耳痛 回転性めまい、聴力低下
眼障害     眼乾燥、眼痛、眼瞼浮腫、涙器障害
胃腸障害 アミラーゼ増加(85.7%)、悪心(81.0%)、口内炎 腹部不快感、便秘、唾液腺痛 下痢、嚥下痛、顎下腺腫大
(61.9%)、嘔吐(47.6%)
一般・全身障害および投与部位の状態 倦怠感(42.9%)、口渇 発熱 顔面浮腫、顔面痛、腫脹、潰瘍
-42.90%
感染症および寄生虫症 耳下腺炎(66.7%)、結膜炎(33.3%)、唾液腺炎 蜂巣炎、外耳蜂巣炎、外耳炎、中耳炎 膀胱炎、口腔カンジダ症
-33.30%
傷害、中毒および処置合併症     放射線脱毛症
代謝および栄養障害 食欲減退(66.7%)    
筋骨格系および結合組織障害   頚部痛、顎痛、開口障害  
神経系障害 味覚異常(71.4%) 顔面不全麻痺 頭痛、嗅覚錯誤
精神障害     不眠症
腎および尿路障害     排尿困難
呼吸器、胸郭および縦隔障害   咽頭の炎症、鼻出血、口腔咽頭痛 しゃっくり、鼻閉、鼻の炎症
皮膚および皮下組織障害 脱毛症(90.5%) 顔面腫脹 皮膚炎、薬疹、紅斑
内分泌障害 血中プロラクチン異常(28.6%)、血中プロラクチン増加(28.6%)    
その他     照射部位の壊死
ホウ素薬剤の製造販売後副作用調査で報告された副作用

細菌性膿瘍、骨髄炎、誤嚥性肺炎、敗血症ショック、副鼻腔炎、アシネトバクタ— 感染、軟部組織壊死、腫瘍疼痛、腫瘍壊死、感染性新生物、癌疼痛、貧血、白血球数減少、アナフィラキシーショック、過敏症、副腎機能不全、甲状腺機能低下症、脱水、栄養障害、過小食、失見当識、摂食障害、脳血管発作、浮動性めまい、てんかん、神経痛、末梢性感覚ニューロパチー、脳浮腫、脳神経麻痺、味覚障害、視神経乳頭浮腫、視力低下、難聴、耳鳴、高血圧、起立性低血圧、発声障害、胸水、肺蔵炎、喉頭壊死、口腔咽頭痩、歯肉ポリープ、歯肉腫脹、舌炎、口腔上顎洞痩、皮膚剥脱、顎骨壊死、軟部組織壊死、腎機能障害、急性腎障害、治癒不良、粘膜の炎症、疼痛、潰瘍性出血、穿孔、体重減少、白血球数減少、放射線網膜症、放射線骨壊死、放射線壊死、放射線性貧血

医学的見地に基づき BNCT 治療により予測される副作用

放射線性肺炎、皮膚疼痛、多汗症、乏汗症、クレアチニン増加、腫瘍崩壊症候群、皮膚欠損、吐気、食欲不振 、部分脱毛

中性子線発生装置CICS-2 により予測される不具合

・治療照射台の誤操作により天板が予期せぬ動きをし、負傷する恐れがあります。
・照射位置の決定が不適切な場合、誤照射による被曝の恐れがあります。
・ストレッチャ、天板、治療照射台、固定具等及び照射口外装部など患者さんが触れる可能性のあるところは、感染症の恐れがあります。
・固定された天板から治療照射台に移乗するとき、落下あるいは挟み込みにより負傷する恐れがあります。
・照射位置を決める時に、照射口外装部への衝突や挟み込みにより重大な怪我に至る恐れがあります。
・照射中に動いたりすると、適切な照射ができなくなる恐れがあります。
・照射位置の設定中や照射中に具合が悪くなる場合があります。
・心臓ペースメーカ、人工心臓弁又は植込み型除細動器、人工内耳、神経刺激装置、人工呼吸器、注入ポンプなどの医療機器を装着している場合には、それらの機器が故障する恐れがあります。また、放射化による被曝の恐れがあります。
・体内に埋め込んだ金属クリップ、コイル、ステント、ボルトなどを装着した場合には、それらが放射化により被曝する恐れがあります。
・試験機器の消耗品などが適切に交換されてない場合には、不具合の発生により、治療照射が開始できない恐れがあります。
・所定の中性子線が得られない場合や照射中の陽子線異常により、患者さんへ過照射や照射不足が生じる可能性があります。

上記の副作用等は、すべての方に現れるというわけではありません。また、今までに報告されているものが、一度に出現するわけではなく、患者様によって副作用の種類や程度、発現の頻度は異なります。また、これまでに知られていない副作用が起きる可能性もあります。 副作用が出現してこないかどうか、担当医師は患者様の身体に起こることを注意深く診察します。もし、経過観察中にいつもと違った体調の変化がありましたら、すみやかに担当医師に連絡してください。担当医師が迅速かつ適切な対応を行います。また、副作用の程度や検査の結果によっては、担当医師が本治療を中止することもあります。 患者様には以上のような副作用の可能性があることを十分に納得の上で、本治療を行う事を了承して頂き、もし上記のような有害反応が出てきた場合にはその病状に応じて最善と考えられる処置を行います。

※江戸川病院のBNCTの装置・医薬品について
江戸川病院のBNCT治療で使用される医療機器(BNCT装置)・医薬品(ホウ素製剤)は医薬品医療機器等法上、未承認となります。
万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。

  BNCT 装置 ホウ素製剤
江戸川病院で使用している
機器・薬品の承認の有無
なし なし
江戸川病院で使用している
機器・薬品の入手経路
国内の株式会社 CICS 製の
装置を導入
台湾の台湾製薬株式会社製の
製剤を江戸川病院で個人輸入
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/index.html
国内の承認医薬品・装置の
有無
あり
(住友重機械工業株式会社製)
あり
(ステラファーマ株式会社製)
諸外国における
安全性等に係る情報
諸外国でも未承認のため、
重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。

お問い合わせ先

江戸川病院 BNCTセンター担当

受付時間 月~金曜日 9:00~17:00

03-3673-1221(代表)

住所:〒133-0052 東京都江戸川区東小岩2丁目24-18

BNCTに関する取材について 患者サポートセンター 広報担当までご連絡下さい