社会福祉法人 仁生社
江戸川病院
2023.05.01更新
江戸川病院では、2006年よりトモセラピーによるIMRT(強度変調放射線治療)を東京大学医学部附属病院放射線科の全面的サポートのもと開始されました。
2009年には東京江戸川がんセンターを設立し、同年4月に東京大学より放射線科専門医、がん治療認定医である浜幸寛医師が放射線科部長(常勤医)として着任、また博士号を有する医学物理士を迎え同年IMRT(強度変調放射線治療)施設認定を取得、トモセラピー2台、リニアック1台での放射線治療を開始し、現在はトモセラピー3台とメリディアンによる放射線治療を行っています。
治療患者総数も6千人を超え、前立腺がんの根治目的の治療では再発率が8%以下(2013年度までの統計より)、直腸、膀胱の有害事象(CTCAE、Great2以上)も2%以下に制御されており、世界的にも有数の放射線治療センターと言っても過言ではありません。
今後もがん放射線治療の主軸は広いがん種や病期をカバーできるトモセラピーをはじめとする高精度X線治療であり、このことは今後も大きくは変わらないと思われますが、BNCTは細胞選択的照射が可能な点で、X線治療は勿論のこと、陽子線治療や炭素線治療では対応できないがんや病期が原理上、適応となる特長を有します。
将来、がんへの選択的集積性がさらに優れたホウ素薬剤が開発されれば、治療可能深度の限界も解決し、X線治療のような広い適応を有する時期が到来するかもしれません。
国内でも有数の精鋭スタッフによる、最高峰の放射線治療装置によるがん治療が開始されようとしています。
大きながんはトモセラピーで叩き、周りに転移したがんはBNCTで一掃するという治療方法も現実のものとなります。
奇しくも自らはガンで48歳という若さで亡くなった前院長 加藤隆弘は最期の時間をこの病院設置型BNCTの導入に注ぎ込みました。彼という人格が無ければこんな夢を語ることもきっと出来ませんでした。感謝以外の言葉が出てきませんが、遺された我々は彼の夢を形にし、皆様に一日も早くサービスが提供できるように働いて参ります。
どうぞご期待ください。
2006年にトモセラピーを導入して以来、江戸川病院の放射線治療は「癌に厳しく、身体にやさしく」を目指し、年間700名以上の治療患者さんを治療しております。
5年ほど前にはMRI誘導放射線治療装置であるメリディアンを先駆けて導入し、より身体にやさしい放射線治療を行っております。 「癌に厳しく、身体にやさしく」をさらに追及するため・トモセラピーの最新版のラディザクトがこの春から稼働するほか・BNCT(中性子捕捉療法)が開始されます。
BNCTは今までのX線治療とは放射線治療とは異なり、前もってホウ素を腫瘍に点滴しておき、その後中性子を照射する方法です。 原理は1936年にLocherらにより提唱され、太平洋戦争直後の1951年にはアメリカで1968年に本邦でも臨床が始まっている治療方法です。ところが、原子炉が治療に必要だったため、広まっておりませんでした。
またいわゆる3.11以降は原子炉での治療が困難となり、人工的に中性子を作ることがようやくできるようになってきました。江戸川病院のBNCT装置は国立がん研究センターと同じ装置を導入いたします。 当初は特定臨床研究として、限られた疾患/患者さんへ提供ということになるかと思いますが、できるだけ早く多くの皆様にBNCTが使われるように努力していきたく思っております。
放射線治療を安全にかつ高精度に行うためには、放射線と物質との相互作用の理解とその医療現場への医学物理的展開能力にあります。特にBNCTでは線量に影響する混在した放射線の複雑性において最高度の医学物理的展開能力が必要になります。
欧米では1920年代には医学物理士が病院に雇用され、放射線物理の医療展開を図ってきました。
当院には物理・工学の専門家である医学物理士をはじめ、放射線治療に特化した放射線治療認定技師、放射線治療品質管理士などの優秀なスタッフが多数在籍しています。
それに加え放射線治療専属の看護師も擁しており、10年間無事故で放射線治療を行ってきた経験を踏まえ、患者さんに安心してBNCTをはじめとした放射線治療を受けて頂けるよう細心の注意を払い運営していく所存であります。