江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

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心房細動・心房粗動

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心房細動・心房粗動とは

二つとも基本的には脈が速くなる不整脈です。

心房が震えるように細かく動き、その電気刺激が心室に伝わって通常よりも脈が早くなり120~200回/分程度まで脈拍が上昇することがあります。

心房粗動

前述のように心房が約300回/分と非常に早く規則的に動いている状態です。

正常な刺激伝導路とは別に、右心房内に大きく一周する興奮伝導路が存在しており、多くは心房性期外刺激がきっかけでこの伝導路に刺激が伝わると、右心房内を刺激がぐるぐる回る(マクロリエントリー)ことになり、この刺激により心房粗動が発生します。

反時計方向に刺激が回る通常型心房粗動と、時計方向に刺激が回る非通常型心房粗動が存在します。

心房粗動

心房細動

心房粗動とは違い、明らかなリエントリー回路は存在しないことがほとんどです。

機序としてはまだ確定されておらずいくつかの仮説が存在し、心房内に非常に小さなリエントリーが複数存在していたり、また、独立した興奮刺激を発生させる箇所が心房内の存在すると言われています。

ただ、最近分かっていることは、心房細動が発症するきっかけとなる刺激(期外収縮)がほとんどの場合肺静脈と呼ばれる部位から発生することが分かってきており、同部位に対して高周波カテーテルアブレーションを行うことで治療可能となってきております。

また、上記の興奮から始まった心房細動を維持する回路が左心房内に存在することも分かってきています。

心房細動

症状

基本的には脈が早くなりますので動悸として自覚されます。

心房粗動では規則正しく、心房細動では不規則に脈が速くなります。

前述の発作性上室性頻拍と違い、「何時何分から動悸を感じた」とはっきりとは自覚できることが少ないのが特徴です。

正常な心臓の動きから発作的に心房細動が出現し、自然停止する状態を発作性心房細動、すでに心房細動が固定されており正常な動きはしていない状態を慢性心房細動と呼びます。

 

動悸以外にもっとも大事なことは脳梗塞のリスクが非常に高くなるということです。

心房が痙攣に近い状態ということは、心房が有効な収縮をしていないということなので、心房内に血液のよどみができます。

この状態だと心房内に「血栓」という血液の塊ができやすくなり、この血栓がはがれて血流に乗ると全身の臓器めがけて飛んで行ってしまいます。

特に脳の血管に詰まりやすく、非常に大きな脳梗塞の原因となり、心房細動の患者様は健常人と比較して、脳梗塞のリスクが5倍以上と言われております。

検査・診断

発作性の場合は発作時の心電図や24時間ホルター心電図で診断されます。

慢性心房細動の場合は自覚症状に乏しいことが多いため、健康診断の心電図などで初めて発見されることもあります。

心房細動と診断されたら、他の心臓の機能は正常か?上述のような血栓が存在しないかどうか?を調べるために経胸壁心エコ-図検査を行います。

場合によっては詳細に観察しなければ血栓の有無がわからないので、経食道心エコー検査といって、超音波の機械のついた胃カメラのような管を飲み込む検査も必要となってきます。

治療

薬物療法

心房細動の治療の基本は、①脈を抑える②血栓予防、の二つです。

脈を抑えるためにβ遮断薬やCa拮抗薬という脈拍を遅くする薬を用いることがあります。

また、発作性心房細動の患者様には、発作そのものの予防として抗不整脈薬を処方することがあります。

 

しかし、この抗不整脈薬でも発作予防効果が最大でも60%程度しかなく、かつ副作用も他の薬よりも多めなので、慎重な投与が必要になってきます。

血栓予防の薬としてはワーファリンという薬を内服していただきます。

この薬は効果に個人差が大きく、1錠飲めば十分な患者様もいれば5錠、6錠飲まないと効かない患者様もいますので、定期的な血液検査で、その患者様に合わせた用量設定が必要です。

現在日本には様々な薬が存在し、いわゆる「血液をサラサラにする薬」も例外ではなく多種多様な薬が存在します。

しかし、現段階ではワーファリンを上回る血栓予防効果が認められる薬が存在せず、患者様には毎回の診察ごとに血液検査をお願いしているのが現状です。

 

心房粗動に対する薬物療法も基本的には心房細動と同様です。

ただし、心房細動と比較すると脳梗塞のリスクは低いので、年齢や心臓の機能によってはワーファリンの内服を必要としない場合があります。

高周波カテーテルアブレーション

心房細動・心房粗動双方において、カテーテルアブレーションが有効ですが、特に心房粗動に対しての治癒効果は90%前後と高く、今は薬物療法よりもカテーテルアブレーションが第一選択の治療法となっております。

前述のように心房粗動は右心房内のマクロリエントリーによって成立していることがすでに知られております。

このリエントリー回路を切断するように右心房内を高周波で焼灼していき、ブロックラインを作ることで心房粗動は停止します。

再発率は10%以下と低く、アブレーション後は内服の必要性はほとんどありません。

 

心房細動に対しても高周波カテーテルアブレーションの適応がありますが、心房粗動ほど単純ではありません。

前述のように心房細動発症のきっかけとなる期外刺激が肺静脈と呼ばれる血管から発生することから、4本の肺静脈をそれぞれ隔離するように焼灼していき、たとえ期外刺激が発生してもその興奮が心房内まで到達できないように治療します(PVアイソレーション)。

また、前述の心房細動維持に必要な回路に対しても高周波で追加焼灼することによって、万が一完全に隔離されておらずに期外刺激が発生した場合も、心房細動を抑制することができます。

 

ただし、心房粗動と違う点はその治癒効果で、カテーテルアブレーションによる治療のみで薬物療法を必要としない患者様は約60%です。

カテーテル治療後も薬物療法を続けることで抑制効果は80%強まで上昇します。

しかし、薬物療法を続けても数年後に再発するケースは多く、2回以上繰り返して行う患者様も存在します。

また、これらの数字は発作性心房細動の患者様のデータであり、慢性心房細動の患者様はさらに低い数字となっています。

 

どのような治療法がより良い治療法なのか、患者様個人によって方針の分かれる疾患であり、専門的な知識を必要とする場合がございますので、心房細動・心房粗動の疑いと診断されたならば、一度循環器の専門病院を受診することを御勧めします。

心房細動に対する冷凍バルーン(クライオバルーン)アブレーション開始