社会福祉法人 仁生社
江戸川病院
江戸川病院では、2006年よりトモセラピーによるIMRTを開始し、現在はトモセラピー3台とメリディアンによる放射線治療を行っています。
治療患者総数も6千人を超え、前立腺がんの根治目的の治療では再発率が8%以下(2013年度までの統計より)、直腸、膀胱の有害事象(CTCAE、grade2以上)も2%以下に制御されております。
コロナ下でも、外国より多数のがん患者さんが、当院の放射線治療を受けられており(2022年 23名)、世界的にも有数の放射線治療センターと言っても過言ではありません。
今後もがん放射線治療の主軸は広いがん種や病期をカバーできるトモセラピーをはじめとする高精度X線治療であり、このことは今後も大きくは変わらないと思われますが、BNCTは細胞選択的照射が可能な点で、X線治療は勿論のこと、陽子線治療や炭素線治療では対応できないがんや病期が原理上、適応となる特長を有します。
将来、がんへの選択的集積性がさらに優れたホウ素薬剤が開発されれば、治療可能深度の限界も解決し、X線治療のような広い適応を有する時期が到来するかもしれません。
奇しくも自らはがんで48歳という若さで亡くなった前院長 加藤隆弘は最期の時間をこの病院設置型BNCTの導入に注ぎ込みました。彼の情熱が無ければこんな夢を語ることもきっと出来ませんでした。遺された我々は遂に彼の夢を形にし、皆様へサービスを提供する事が可能となりました。
大きながんはトモセラピーで叩き、周りに転移したがんはBNCTで一掃するという治療方法も現実のものとなります。
どうぞご期待ください。
江戸川病院では、再発乳がんやFDG-PETで陽性となった腫瘍を対象にした臨床研究を行ってきました。
これらの経験を経て、2025年の夏から「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)」の自由診療を開始しました。
BNCTは、体の表面からおよそ6cm以内にある腫瘍に対して行うことができる治療です。
たとえば乳がんの場合、当院の乳腺外科と協力し、手術を希望されない方を対象に2泊3日で治療を行っています。
当院の放射線科では、BNCTだけでなく、トモセラピー(精密放射線治療)や血管内治療(カテーテルを使った治療)など、さまざまな方法を組み合わせて、患者さん一人ひとりに最も合った治療をご提案しています。
また粒子線治療の経験も10年以上あり、BNCTの対象にならない場合でも、他の選択肢をご案内することが可能です。
BNCTやその他の治療についてご相談をご希望の方は、どうぞお気軽にお電話ください。
江戸川病院 放射線科:
03-3673-1221
BNCTは、現時点では頭頸部がんのみが保険適用となっています。頭頸部がん(再発耳下腺がん等)に対しては、臨床試験が終了。治療効果が認められ、その結果に基づく薬事申請は2020年3月に承認され、6月には頭頸部がんに対する保険診療が開始されています。
しかし、承認されているホウ素薬剤は頭頸部がんだけが対象であり、ほかのがんに使うと適応外使用となり、自由診療のために入手することも出来ません。
BNCTは、正常組織には殆ど影響が出ずにあらかじめホウ素を取り込んでいたがん細胞のみが選択的に破壊される治療法であり、理論上、浅いところにあって、ホウ素薬剤が取り込まれるのであれば、治療を行うことが可能であり、ホウ素薬剤が取り込まれるかどうかは、PET検査で判定できることから、現在、学会を中心に、ホウ素を取り込んだもので体表から6〜7cmぐらいまでのところにあるがんについて、すべて薬事承認が取れないかどうかを模索しています。しかし、実現には早くても2030年以降になってしまう事が予想されています。
頭頚部腫瘍以外のBNCTは、特定臨床研究(未承認・適用外の医薬品等を用いる臨床研究)や医師主導治験(医薬品の承認申請を目的として医師が実施する臨床試験)等のみでしか行うことが出来ません。
江戸川病院では、2023年7月より、再発乳がんを対象に特定臨床研究P1(5症例)が開始され、肺などの正常組織への安全性の担保、治療効果を確認した後、2024年8月よりFDG-PET陽性の浅在性腫瘍を対象に特定臨床研究P2(10症例)を開始し、2025年10月に終了しました。P2の8症例目から10症例目は、乳腺外科と共同で手術を拒否されている初発の乳がんの症例に対し治療を行っています。
効果を確認するには、1年程度の観察期間が必要ですが、途中経過は良好であり、公表できる日が待たれます。
また、2025年より自由診療によるBNCTを開始、既に10症例を超えています。
放射線を用いた治療を安全にかつ高精度に行うためには、放射線と物質との相互作用の理解と、医療現場への医学物理的展開能力が必要になります。特にBNCTでは線量に影響する混在した放射線の複雑性において、最高度の医学物理的展開能力が必要になります。
当院には物理・工学の専門家である医学物理士を中心とした現場スタッフが常勤しており、放射線治療認定技師、放射線治療品質管理士などの優秀なスタッフも多数在籍しています。
それに加え放射線治療専属の看護師も擁しており、20年に渡り放射線治療を行ってきた豊富な経験を踏まえ、細心の注意を払い治療にあたります。