江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

江戸川病院

診療科・部門|スポーツ医学科|反復性肩関節脱臼

反復性肩関節脱臼

他の疾患はこちらから

1.疾患概要

肩は、小さな受け皿(関節窩)に大きな球(上腕骨頭)が乗る構造をしています。人体でもっとも動く関節です。動きやすい反面、脱臼をしやすい関節です。

 肩関節脱臼は、主に外傷でおこります。脱臼の方向で前方・後方・垂直脱臼に分けれますが、90%以上が前方の脱臼です。転んだり、大きな衝突で腕が後ろにもっていかれた際に起こります。ラグビー・アメフト・柔道などのコンタクトスポーツで多く、野球のヘッドスライディングなどでも起こります。初回に脱臼をしてから再発を繰り返す場合があり、そのような状態を反復性脱臼といいます。

2.症状

腕を動かすことができなくなります。自分で整復できることもありますが、病院で麻酔をかけながら整復が必要な場合もあります。反復性脱臼になると、寝返りなどの軽微な動きでも脱臼することがあります。初回の脱臼後の経過が悪い場合には、腕を動かす際に肩が外れる不安や痛みなどを感じます。外転・外旋で症状を訴えられることが多いです。

症状がでやすい肩の外転・外旋の肢位

3.診断

問診と画像診断が中心です。

単純X線

脱臼時の確認できます。

CT検査

脱臼後に骨折などが合併していないかを詳細に確認できます。術前計画のためにも撮影します。

①レントゲン、②CT

MRI(関節造影)

注射をしてからMRIを撮影します。内部が詳細に確認できます。肩を安定させるのに重要な関節唇が剥がれていないかを確認します(バンカート病変)。一般的には造影剤を使用しますが、当院ではエコーを使用しながら生理食塩水を注射しアレルギーの心配がありません。

MR関節造影検査

エコーを使って肩に注射。*点線は針の軌跡

4.治療

主な目的は受け皿についている組織を補強して、球が外れないように安定化することです。具体的には関節唇と関節包を修復します。初回脱臼では、損傷した関節唇などが治癒することを期待して、三角巾や外転枕で3〜4週間の固定を行います。その後リハビリを行い3ヶ月での競技復帰を目指します。

脱臼を2回以上繰り返す(反復性脱臼)場合には、手術を勧めています。ただし、初回脱臼でも再脱臼しやすい10代のスポーツ選手(特にラグビーなどのコンタクトスポーツ)や、日常生活で支障を来すような場合にも手術を勧めています。


術式

①鏡視下バンカート法

②鏡視下バンカート&ブリストウ法

当院では二つの手術を行っています。どちらも関節鏡で行う手術です。

①鏡視下バンカート法


損傷した関節唇・関節包(バンカート病変)を複数のアンカーを用いて縫合します。

手術方法

・全身麻酔で行い、術後の痛みを減らすため神経ブロックを併用。

・小切開から関節鏡を入れて損傷部を確認。

・アンカー(糸のついたビス)を関節窩に4-5箇所挿入。

・糸を関節包や関節唇にかけて縫合。


*写真は本人から掲載許可あり

図7 損傷部の確認 関節窩から関節唇が剥がれ落ちている。

図8 損傷部の修復後の様子



②鏡視下バンカート&ブリストウ法

鏡視下バンカート&ブリストウ法術後のレントゲン・CT

骨を移植することでより強固に脱臼を制動する手術です。鏡視下バンカート法を行っても再発した場合や、ラグビー・アメリカンフットボール・柔道などのコンタクトスポーツ選手、自衛隊員・レスキュー隊員などの危険業務に携わる方の場合にはこちらを行います。競技までの復帰が早いことも特徴です。

骨で抑える事ができるようになり再脱臼率が低下します。

手術方法

鏡視下バンカート修復術にブリストウ法という骨を移行する手術を追加します。

・烏口突起(骨)を腱をつけたまま切る。

・烏口突起を関節窩の前にスクリューで固定。

・鏡視バンカート修復術を行います。


図9

術式は、スポーツの状況、生活背景によって異なるため担当医と相談のうえ選択しております。

5.術後リハビリテーション

手術で修復した組織の修復過程に合わせて負荷を設定することが重要です。個々にリハビリの進め方、競技復帰までの期間が異なります。担当医とセラピストが相談のうえメニューを決定していきます。

①鏡視下バンカート修復術後のリハビリテーション

スポーツ復帰の大まかな目安

・2ヶ月~ ジョギング開始

・3ヶ月 全力疾走許可

・6ヶ月 オーバーヘッド・コンタクトプレーへ復帰

・術後〜3週

三角巾固定を行います。この間は積極的なエクササイズは行わず、肩甲骨周りの筋肉の緊張などを取り除くことで除痛を図っていきます。


・3週〜

固定期間終了後に徐々に可動域を広げていきます。術後3ヶ月程度は修復した組織強度は十分ではないため、過度な負荷は禁止となります。

◦ 術後3ヶ月以降徐々に競技復帰にむけたトレーニングを開始します。可動域に関しても全方向の可動域運動を開始します。

◦ スポーツ復帰に関しては術後6ヶ月~8ヶ月を目安となります。

②鏡視下バンカート&ブリストウ法の術後リハビリテーション

スポーツ復帰の大まかな目安

・4週~ ジョギング開始

・10週~ 全力疾走

・3ヶ月 競技復帰(コンタクト系以外)

・4ヶ月 コンタクトプレーへ復帰

*バンカート法よりも2ヶ月程度早くなります。

・移行した烏口突起への負荷に注意しながらリハビリをすすめます。

・定期的にCT検査を行い烏口突起が癒合しているかを確認します。

・関節可動域については、2か月で制限なく可動域を拡大させていきます

<参考文献>

  1. 品川清嗣ら:【頸・肩・腰痛の最新の診断と治療】肩痛の診療 反復性肩関節脱臼(解説/特集.臨床と研究 97:821-826,2020.
  2. 高岸憲二ら:肩関節外科の要点と盲点 p182-186, 224-229, 2010.
  3. 菅谷啓之:外傷性肩関節不安定症に対する手術治療.臨床スポーツ医学,22:1391-1398,2005.
  4. Sugaya H, et al: Arthroscopic Bankart repair in the beach-chair position: A cannulaless method using an intra-articular suture relay technique. Arthroscopy, 20: 116-120, 2004.
  5. 鈴木一秀ら:【肩の手術-私のコツ-】反復性肩関節前方脱臼 鏡視下Bankart&Bristow法(解説/特集),関節外科 35:1028-1035,2016.
  6. 鈴木一秀ら:ラグビー選手の反復性肩関節脱臼に対する鏡視下Bristow-Bankart法.肩関節外科手術テクニック,大阪.メディカ出版p54-62,2014.
  7. 菅谷啓之:肩関節不安定症の診断と治療.OS NOW Instruction,p73-86,2009.
  8. Bankart AS.:Recurrent or habitual dislocation of the shoulder.Br.Med.J.,2:1132-1133,1923.
  9. Mazzocca AD, et al:Arthroscopic anterior shoulder stabilization of collision and contact athletes.Am J Sports med.,33:52-60,2005.
  10. 山上直樹:反復性肩関節前方脱臼①-鏡視下Bankart修復術- 関節外科 35(10)32-42,2016.
  11. 篠田光俊:肩甲帯機能における可動域制限の要因について,整形外科リハビリテーション学会 学会誌 17:37-42,2015.
  12. 浅野昭裕:肩関節と肩甲帯 臨床観察から考える,整形外科リハビリテーション学会 学会誌 14:60-66,2011.


当医院を受診するには

江戸川病院

住所:〒133-0052
東京都江戸川区東小岩2-24-18

TEL: 03-3673-4892

メディカルプラザ江戸川

住所:〒133-0052
東京都江戸川区東小岩 2-6-1

TEL: 03-3673-4892

メディカルベース新小岩

住所:〒124-0025
東京都葛飾区西新小岩1-3-10カグラテラス3階

TEL: 03-5875-7067

メディカルプラザ市川駅

住所:〒272-0034
千葉県市川市市川 1-4-10 市川ビル 9階

TEL: 047-326-3500