ジャンパー膝
概要
オーバーユース障害であり、男性バレーボール選手の約50%が経験すると報告されていて、膝蓋骨についている膝蓋腱に炎症を起こす障害です。
ジャンプやダッシュ,キックなどの動作で膝蓋腱に強い牽引力がかかり、ジャンパーに多く発症することからジャンパー膝と呼ばれています。
高いジャンプが可能で、スパイクジャンプの着地でより膝を深く曲げる選手に発症しやすいと報告されています。この牽引性や伸張性の負荷が繰り返しかかっていくと膝蓋腱に炎症や腱の微小損傷を引き起こして痛みが出現します。
発症の要因・誘因が複雑であるために、治療に難渋するケースが少なくありません
症状
膝蓋腱遠位の腱症・腱炎はジャンパーよりもランナーにみられ、脛骨粗面付近に痛みを訴えます。 腱の痛みは安静時に痛むことは稀で、負荷がかかると同時に自覚されて負荷が除去されるとすぐに感じなくなります。 エネルギー蓄積活動の翌日には痛みが明らかに増すことが多いことや、動いているうちに痛みが軽減するウォームアップ現象を認めることがあります。
診断
身体所見
症状の発生源が膝蓋腱かを確かめるために、痛みの自覚部位や圧痛部位が膝蓋骨下極や脛骨付着部に限局しているか、また膝伸展筋の負荷に関連して痛みが増すかを確認します。
長時間座位・スクワット・階段昇降時にも痛みが生じるが他の病態でも生じやすく、腱の伸張負荷量に応じて痛みが増す特徴を示すために、腱への負荷の大きさ・速さ・頻度と痛みの関連性を確認します。 スクワットでは膝の屈曲角度が増すほど、ジャンプでは距離や高さが増すほど、踏み切りや着地時の痛みが増すかを確認します。
画像所見
超音波やMRIが用いられることが多く、腱の形態を正確に表すことや鑑別診断に役立つとされています。
単純X線では付着部の骨変化や膝蓋腱に一致して石灰化を認めることがあります。
MRIでは膝蓋腱の付着部から実質にかけて肥厚しますが、変性が進むと腱内部に高信号を認めます。
膝蓋腱の画像所見は痛みの程度と必ずしも関連せず、症状のない者にも異常所見を認めることがあるために、必ずしも臨床症状を反映するわけではありません。
図3.ジャンパー膝のMRI 膝蓋腱の膝蓋骨付着部が高輝度を呈する (青矢印)
症状分類
Blazinaらの3期分類
- Phase1:運動後のみに疼痛があり、機能障害はない
- Phase2:運動時・運動後に疼痛があるが、パフォーマンスは満足のできるレベル
- Phase3:運動時・運動後に疼痛が長期間に及び、パフォーマンスは徐々に満足できるレベルではなくなる
Roelsらの4期分類
- Phase1:運動後のみに疼痛がある状態
- Phase2:Phase2:運動開始時に疼痛があり、ウォームアップ後に疼痛がなくなり、運動後再び疼痛がある状態
- Phase3:活動中や活動後の疼痛のために、スポーツに参加できない状態
- Phase4:腱の完全断裂
治療
基本的には以下のような保存療法が主体となります。
- スポーツ現場では痛みの程度により運動制限
- リハビリテーション(理学療法、運動療法)
- 装具療法
- 注射療法
炎症がとても強いときや診断目的に炎症部位への注射を当院ではエコーを用いて正確に行います。
- 超音波療法
- 対外衝撃波療法
図4.広義のジャンパー膝であるオスグッド病へのエコーを用いた注射
リハビリテーションでは、大腿四頭筋の筋力改善を中心に図っていきます。
症状が強い場合には膝関節の安静と運動前の大腿四頭筋のストレッチや運動後のアイシングを行います。
膝蓋腱自体、筋骨格単位、運動連鎖の負荷耐性の向上に焦点を当てて段階的に行っていきます。
参考文献
- 相澤純也ら:総合リハビリテーション. 7:587-595,2016.
- 新井祐志ら:MB Medical Rehabilitation. 258:23-29.,2021.
- 福林徹ら:下肢のスポーツ疾患治療の科学的基礎. 1 3:50 -60,2015.
- 田中亮:理学療法. 3:226-245,2020.
- 松本秀男:レジデントはどの治療法を選択すればよいのか-日常よく遭遇する疾患-Osgood病.関節外科Vol.38:181-188,2019.