低体温症
低体温症とは
低温環境下でのスポーツ、スキーやスノーボード、犬ぞりレースなどの雪上競技や、トライアスロンやオープンウォータースイミングなどの屋外水中競技、また高山帯での登山、アドベンチャーレース、トレイルランニングなどが発症リスクが高い競技である。
運動などにより産生する熱よりも、発汗や周囲への熱伝導で喪失する熱が大きい事で生じる。
症状
重症度に合わせて、様々な症状を発症しうる(表1)。特に中等症〜重症では、徐脈及び不整脈の発症リスクのため心停止が起こりうる。
診断
深部体温(可能なら直腸温)<35℃が診断基準であるが、スポーツ現場で直腸温の測定まで準備ができている場合は比較的稀である。実際には低体温症が起き得るような環境であったかどうか、また表1を参考に症状で診断することとなる。
治療
軽症と中等症〜重症で大きく異なる。低体温症を発症した場合、低温環境からの隔離と衣服の除去、水滴などの拭き取りをまず行う。
軽傷の場合
アルミ保温シートなどで周囲への熱喪失を出来るだけ抑え、受動的復温を行い経過を見ることが可能である。飲水やカロリー補給などを積極的に行う。復温中に中等症以上の状態にならないかを継続的に血圧や脈拍、呼吸数を注意深く観察する。
中等症〜重症の場合
意識障害(混乱した言動)や心拍数及び呼吸数の低下がないかということに注意する。また震えを起こすことができず、体外もしくは体内からの能動的加温が必要となるため、保温と可能な限りの加温を行いながら、医療機関への搬送を考慮する。このような状況では些細な刺激で不整脈が出現するリスクがあるため、できるだけ丁寧に扱い、可能な限り横にして安静とする。
経過観察及び復温中の注意点:After Drop とRewarming shock
復温を開始した後も急激な変化が起こり得るため、注意が必要である。
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After Drop(図1)
競技中は体幹部の温度を保ち、四肢末梢側の温度は低くなっている。競技終了後や復温により、四肢末梢の血管が拡張し、低温の血液が体幹側に流入し、深部体温の低下が進んでしまうことをAfter dropと言う。不整脈発症のリスクとも言われている。 -
Rewarming Shock
低温環境では利尿が進み、また競技中の発汗などで体内の水分量は低下しているが、競技中は末梢の血管が収縮することで体幹部の水分量が保たれる。競技終了後や復温中に末梢の血管が拡張していくと、全身の必要水分量が急激に増加し、血圧が保てなくなることがある。これをRewarming Shockと呼び、重篤な状態になるリスクがある。
参考文献
- Ken Zafren.Accidental hypothermia in adults. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on November 28th, 2022.)