江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

江戸川病院

診療科・部門|スポーツ医学科

2023-02-09更新

腱板断裂

腱板とは、肩の深いところにある筋肉です。

”腱板”とは

肩の中にある4つの腱のことで、手を上げるために使われます。

*1棘上筋 2棘下筋 3肩甲下筋 4小円筋

”腱板断裂”とは

腱板は50代以降になると、使いすぎなどによって切れることがあります。これを腱板断裂といいます。腱板が断裂すると、手を上げる際にひっかかって痛い、うまく力がいれられず手があげにくいといった症状がおこります。

腱板断裂の治療

痛み止めの注射やリハビリテーションをおこないます。数ヶ月しても症状が改善しない場合には、関節鏡を使った手術をおこなっています。


当科Youtubeで実際の手術動画がご覧になれます。

https://youtu.be/8oRhmUotLRY

腱板が剥がれ穴があいています。下に見えるのは骨です。

2 骨にアンカー(糸のついたビスのようなもの)をうち腱板に糸を通しているところ

3 腱板に通した糸を骨に固定して終了です。

 

鏡視下腱板修復術プロトコル&自主トレーニング

鏡視下腱板修復術(棘下筋移行)プロトコル&自主トレーニング

1.疾患概要

肩は、小さな受け皿(関節窩)に大きな球(上腕骨頭)が乗る構造をしています。人体でもっとも動く関節です。動きやすい反面、脱臼をしやすい関節です。

 肩関節脱臼は、主に外傷でおこります。脱臼の方向で前方・後方・垂直脱臼に分けれますが、90%以上が前方の脱臼です。転んだり、大きな衝突で腕が後ろにもっていかれた際に起こります。ラグビー・アメフト・柔道などのコンタクトスポーツで多く、野球のヘッドスライディングなどでも起こります。初回に脱臼をしてから再発を繰り返す場合があり、そのような状態を反復性脱臼といいます。

2.症状

腕を動かすことができなくなります。自分で整復できることもありますが、病院で麻酔をかけながら整復が必要な場合もあります。反復性脱臼になると、寝返りなどの軽微な動きでも脱臼することがあります。初回の脱臼後の経過が悪い場合には、腕を動かす際に肩が外れる不安や痛みなどを感じます。外転・外旋で症状を訴えられることが多いです。

症状がでやすい肩の外転・外旋の肢位

3.診断

問診と画像診断が中心です。

単純X線

脱臼時の確認できます。

CT検査

脱臼後に骨折などが合併していないかを詳細に確認できます。術前計画のためにも撮影します。

①レントゲン、②CT

MRI(関節造影)

注射をしてからMRIを撮影します。内部が詳細に確認できます。肩を安定させるのに重要な関節唇が剥がれていないかを確認します(バンカート病変)。一般的には造影剤を使用しますが、当院ではエコーを使用しながら生理食塩水を注射しアレルギーの心配がありません。

MR関節造影検査

エコーを使って肩に注射。*点線は針の軌跡

4.治療

主な目的は受け皿についている組織を補強して、球が外れないように安定化することです。具体的には関節唇と関節包を修復します。初回脱臼では、損傷した関節唇などが治癒することを期待して、三角巾や外転枕で3〜4週間の固定を行います。その後リハビリを行い3ヶ月での競技復帰を目指します。

脱臼を2回以上繰り返す(反復性脱臼)場合には、手術を勧めています。ただし、初回脱臼でも再脱臼しやすい10代のスポーツ選手(特にラグビーなどのコンタクトスポーツ)や、日常生活で支障を来すような場合にも手術を勧めています。


術式

①鏡視下バンカート法

②鏡視下バンカート&ブリストウ法

当院では二つの手術を行っています。どちらも関節鏡で行う手術です。

①鏡視下バンカート法


損傷した関節唇・関節包(バンカート病変)を複数のアンカーを用いて縫合します。

手術方法

・全身麻酔で行い、術後の痛みを減らすため神経ブロックを併用。

・小切開から関節鏡を入れて損傷部を確認。

・アンカー(糸のついたビス)を関節窩に4-5箇所挿入。

・糸を関節包や関節唇にかけて縫合。


*写真は本人から掲載許可あり

図7 損傷部の確認 関節窩から関節唇が剥がれ落ちている。

図8 損傷部の修復後の様子



②鏡視下バンカート&ブリストウ法

鏡視下バンカート&ブリストウ法術後のレントゲン・CT

骨を移植することでより強固に脱臼を制動する手術です。鏡視下バンカート法を行っても再発した場合や、ラグビー・アメリカンフットボール・柔道などのコンタクトスポーツ選手、自衛隊員・レスキュー隊員などの危険業務に携わる方の場合にはこちらを行います。競技までの復帰が早いことも特徴です。

骨で抑える事ができるようになり再脱臼率が低下します。

手術方法

鏡視下バンカート修復術にブリストウ法という骨を移行する手術を追加します。

・烏口突起(骨)を腱をつけたまま切る。

・烏口突起を関節窩の前にスクリューで固定。

・鏡視バンカート修復術を行います。


図9

術式は、スポーツの状況、生活背景によって異なるため担当医と相談のうえ選択しております。

5.術後リハビリテーション

手術で修復した組織の修復過程に合わせて負荷を設定することが重要です。個々にリハビリの進め方、競技復帰までの期間が異なります。担当医とセラピストが相談のうえメニューを決定していきます。

①鏡視下バンカート修復術後のリハビリテーション

スポーツ復帰の大まかな目安

・2ヶ月~ ジョギング開始

・3ヶ月 全力疾走許可

・6ヶ月 オーバーヘッド・コンタクトプレーへ復帰

・術後〜3週

三角巾固定を行います。この間は積極的なエクササイズは行わず、肩甲骨周りの筋肉の緊張などを取り除くことで除痛を図っていきます。


・3週〜

固定期間終了後に徐々に可動域を広げていきます。術後3ヶ月程度は修復した組織強度は十分ではないため、過度な負荷は禁止となります。

◦ 術後3ヶ月以降徐々に競技復帰にむけたトレーニングを開始します。可動域に関しても全方向の可動域運動を開始します。

◦ スポーツ復帰に関しては術後6ヶ月~8ヶ月を目安となります。

②鏡視下バンカート&ブリストウ法の術後リハビリテーション

スポーツ復帰の大まかな目安

・4週~ ジョギング開始

・10週~ 全力疾走

・3ヶ月 競技復帰(コンタクト系以外)

・4ヶ月 コンタクトプレーへ復帰

*バンカート法よりも2ヶ月程度早くなります。

・移行した烏口突起への負荷に注意しながらリハビリをすすめます。

・定期的にCT検査を行い烏口突起が癒合しているかを確認します。

・関節可動域については、2か月で制限なく可動域を拡大させていきます

<参考文献>

  1. 品川清嗣ら:【頸・肩・腰痛の最新の診断と治療】肩痛の診療 反復性肩関節脱臼(解説/特集.臨床と研究 97:821-826,2020.
  2. 高岸憲二ら:肩関節外科の要点と盲点 p182-186, 224-229, 2010.
  3. 菅谷啓之:外傷性肩関節不安定症に対する手術治療.臨床スポーツ医学,22:1391-1398,2005.
  4. Sugaya H, et al: Arthroscopic Bankart repair in the beach-chair position: A cannulaless method using an intra-articular suture relay technique. Arthroscopy, 20: 116-120, 2004.
  5. 鈴木一秀ら:【肩の手術-私のコツ-】反復性肩関節前方脱臼 鏡視下Bankart&Bristow法(解説/特集),関節外科 35:1028-1035,2016.
  6. 鈴木一秀ら:ラグビー選手の反復性肩関節脱臼に対する鏡視下Bristow-Bankart法.肩関節外科手術テクニック,大阪.メディカ出版p54-62,2014.
  7. 菅谷啓之:肩関節不安定症の診断と治療.OS NOW Instruction,p73-86,2009.
  8. Bankart AS.:Recurrent or habitual dislocation of the shoulder.Br.Med.J.,2:1132-1133,1923.
  9. Mazzocca AD, et al:Arthroscopic anterior shoulder stabilization of collision and contact athletes.Am J Sports med.,33:52-60,2005.
  10. 山上直樹:反復性肩関節前方脱臼①-鏡視下Bankart修復術- 関節外科 35(10)32-42,2016.
  11. 篠田光俊:肩甲帯機能における可動域制限の要因について,整形外科リハビリテーション学会 学会誌 17:37-42,2015.
  12. 浅野昭裕:肩関節と肩甲帯 臨床観察から考える,整形外科リハビリテーション学会 学会誌 14:60-66,2011.


概要

投球動作を繰り返すことによって肩の痛みなどから投球困難を生じる肩関節のスポーツ障害です。

成長期の選手は、骨が伸びていく軟骨部位(骨端線)にストレスがかかることで怪我に繋がり、成長期を過ぎた選手は靱帯や筋肉の怪我に繋がります。近年では、壮年期での発症も多くみられます。

原因

投球の一般的な動きはワインドアップから始まりフォロースルーまでとなります。この中で肩への負担が最も大きいのは、ボールリリース前の腕を加速している時期で、痛みの訴えが一番多いとされています。投球フォームが原因と思われがちですが、身体機能の低下が悪いフォームを作り出していることがほとんどです。

症状

主に肩関節の前方や後方、もしくは両方に痛みを生じることが多く、投球時のLate cookingからAccelerationにかけて起こる最大外旋位(以下:MER)に痛みを出現します。

診断

・問診(投球障害発症時期、障害部位、疼痛発生タイミングetc)

・触診(患部周囲の圧痛確認、炎症症状の確認 etc)

・画像診断(Xp,US,CTやMRI)

・整形外科的テスト

・modified SAT

当科独自の肩甲骨の運動を補助することで、疼痛や運動が軽減するかを見極める機能テストとなります。必要と判断された運動に対してアプローチが行われていきます。

 

治療

・基本的には原因となる機能を変える保存療法が選択されますが、場合によっては手術となる可能性もあります。

・当科では、1-2か月ごとにレントゲンやMRIを撮影し、疼痛部位の状態を確認しながらリハビリテーションを行います。

・必要であれば、modified SATを基に腋窩神経・肩甲上神経などにハイドロリリースを施行し、問題となる筋肉の柔軟性の改善等を行います

・投球障害肩を早期に診断・治療できれば、1-3か月程度で投球を再開できることが多いです

・しかし、診断が遅れてしまうと、重症化をきたし、経過が長期にわたる場合があります。そのため、疼痛や可動域制限がみられた場合には早めの受診をお勧め致します。

リハビリテーション

・何が原因となって投球障害肩となってしまったのかを考えます。投球による肩の障害は、肩の機能のみならず体幹・下半身からの影響を大きく受けます。そのため必要に応じて肩以外の関節の機能を獲得していく必要があります。

・痛みの軽減・消失だけでなく、再発することなく野球を楽しめるよう予防の観点からも指導させていただきます。

①インナートレーニング

投球時に負荷がかかりやすい部位のトレーニングです。

②肩甲骨周囲筋トレーニング

おでこを床につけ、肩を前方に上げます。真上ではなく図のように開いて肩を上げることがポイントです。

③Stretch poll exercise

Stretch pollを使い背中を伸ばします

胸郭の可動性を向上させる

④胸椎回旋exercise

手を頭の後ろに置き、肩甲骨を引き寄せるように行う

Part 1 

Part 2 

1.肩関節インピンジメント症候群とはどんな病気ですか?

・投球障害肩の一種です。

・インピンジメントというのは、『衝突』という意味です。肩関節を動かす際に、関節付近で他の骨や筋肉との衝突が生じることによって、組織の損傷が起こって痛みが生じる病気です。

・基本的には、野球選手の投球障害肩の一種ですが、オーバーヘッドスポーツといわれる、バレーボールやテニスなどで肩の痛みを生じる場合や、中高年の方の痛みが出る場合でも肩関節インピンジメント症候群となることがあります。

・肩関節の上の方で骨と骨がぶつかったり、肩関節の中で筋肉などが挟まったりすることで生じることがあります。

2.どんな症状が出ますか?

・腕を上げるとき、途中が痛くて、上げきってしまえば痛くないというのが一番の特徴的な症状です。

・症状がひどくなると、夜にずきずきとした痛み(夜間痛)が起きたり、ひどくなると腱板断裂といい、筋肉が断裂(損傷)してしまったりすることがあります。

3.どんな治療をしますか?回復にどれくらいかかりますか?

・痛みがある部位にエコーを見ながら痛み止めの注射をしたりします。

・その後、基本的にはリハビリテーションで治療します。

・3か月リハビリテーションで改善しない場合は追加評価で、MRIなどを撮ります。

原因が肩関節の組織にあり、改善が乏しい場合は手術も検討します。

・痛みがなくなり次第、投球再開や、痛みが生じていた動作を再開します。

4.当科では

・月に1回程度、診察の際に医師が肩の可動域や痛み(主に夜間痛)のチェックとエコーでの観察を行います。

肩の動きの硬さがある部位を診断し、エコーで肩を観察しながら可動域が改善するような注射を安全に行います(ハイドロリリース)。

・インピンジメントによる腱板断裂等があり、上記の保存療法に抵抗性の時は、関節鏡視下に修復術を行います。

<理学療法>

・肩関節の動きを改善。

・肩関節筋力を改善

・肩甲骨や胸郭、股関節などの動きの改善。

・肩甲骨や胸郭、股関節などの筋力の改善。

・投球フォーム指導

・医師指導の下、エコーにて肩関節内の動きのチェック、トレーニング。

・全身のトレーニング

<詳細には>

・肩甲骨を上から抑えた状態で腕を上げようとしたときに、肩の上の方に痛みを感じる人は、肩甲骨の上方への動きを良くするようにします(肩峰下インピンジメント)。

・腕を外に開くような動作(肩関節外転外旋位)で肩の後ろの方が痛い人は、肩甲骨の開く動きを良くしたり、肩関節の後ろの硬さを良くしたりします。(後上方関節窩インピンジメント)

・腕を上に閉じるような動作(肩関節屈曲内旋位)で肩の前の方が痛い人は、肩甲骨の閉じる動きを良くしたり、肩関節の後ろの硬さを良くしたりします。(前上方関節窩インピンジメント)

インピンジメント症候群に対する予防や効果的なエクササイズはこちらのページをご参照ください

<参考文献>

1.大西和友:解剖学的異常を認めない肩峰下インピンジメントの診断と治療. 臨床スポーツ医学. vol. 36. No2. 144-150. 2019.

2.Beard DJ. et al : Arthorascopic subacromial decompression for subacromial shoulder pain (CSAW): a multicenter, pragmatic, parallel group, placebo-controlled, three-group, randomizeed surgical trial. Lancet27: 329-338. 2018.

3.西中直也ほか:ゼロポジション内外旋運動における上腕骨頭偏位の検討.肩関節. 33:261-263, 2009.

4.Halbrecht JL. et al : Internal impingement of the shoulder: comparison of findings between the throwing and nonthrowing shoulders of college baseball players. Arthroscopy 15: 253-258, 1999.

5.Habermeyer P, et al : Anterosuperior impingement of the shoulder as a reesult of pulley lesions: a prospective arthroscopic study. J Shoulder Elbow Surg 13: 5-12, 2004.

拘縮肩

拘縮肩の治療

何らかの原因で組織が硬くなってしまい、可動域が狭くなった肩を拘縮肩と言います。


拘縮肩の治療には、炎症症状が無いことを確認し、可動域改善のためリハビリテーションを行います。

筋肉より深い場所にある組織が硬くなってしまった患者さんでは、リハビリテーションが有効にできない場合があります。

その為他の治療方法の一つとして当院では、サイレントマニュピレーション(非観血的受動術)を行っています。


診察室内でエコーを用いて神経ブロックを行うため入院の必要がありません。


肩がどの方向にも動かない症状でお困りの方は医師にご相談ください。


詳しい方法は↓下記動画↓をご参照ください。

 

概要

離断性骨軟骨炎(以下OCD)は成長期の肘におきる障害のです。成長期の未熟な骨と軟骨が剥がれてしまう障害で、スポーツ動作などが原因となります。10歳頃の野球選手では2-4%くらいみられるとされています。肘の外側(上腕骨小頭)に多いことから、別名”外側野球肘”と言われます。野球だけでなくラケットスポーツや器械体操など、肘に負担のかかる競技にも見られます。

症状

初期に痛みやなどの症状がでないことが問題です。症状を自覚した時には、骨と軟骨が剥がれ手術が必要となることもあります。このような特徴から、沈黙の障害と呼ばれることもあります。

診断

 早期発見が重要です。初期で発見できれば90%が保存療法で治癒します、進行すると手術が必要となります。


身体所見

初期の段階では所見がなく、進行すると関節の圧痛や可動域の制限がみられます。

単純X線

骨が透けたり骨のラインが連続していない状態が確認できます。X線で病気の段階を3つに分類します。(透亮期・分離期・遊離期)

X線分類 

超音波診断(エコー)

 初期に発見するために有用な検査です。単純X線でわからないようなものまで診断可能です。侵襲がなく持ち運び可能であるためスポーツ検診で使用されます。

*毎年江戸川区・葛飾区での野球肘検診を行なっています。

正常では骨のラインが綺麗に見えるが、OCDになると乱れているのがわかる





学童期の野球選手に対して行っている野球肘検診

単純CT

 単純X線よりも詳細に骨の状態が評価できます。剥がれた大きさを把握して、剥がれた骨軟骨片の大きさや位置が確認できます。

MRI

 初期の僅かな変化も診断できます。現在はエコーで代用できるため、進行した際に手術が必要かを判断するために利用します。

MRIでは骨の内部が詳細に確認できる


治療

保存療法

  初期や、進行期の早い時期であれば保存療法が行えます。自己修復を期待して、肘に負担をかけないようにします。投球を禁止するだけでなく、打撃や腕立て伏せなど肘に負担のかかる動作も禁止します。近年、キャスト(ギブス)を巻くことで治療が早まるいう報告があり、当院でも1ヶ月間のギブス固定を勧めています。

 定期的に画像を確認しながら復帰の時期を判断します。完全な修復には1年近く要することが多いため、本人の努力に加えて周囲のサポートも必要です。病変が小さくなれば(目安1cm)、手術になったとしても関節鏡でとるだけで済むことから、相談のうえ早期復帰を検討しています。

 1年をかけて保存的に治癒したOCD

手術療法

手術方法は病期や大きさによって変わってきます。また施設でも異なります。


①鏡視下郭清術(悪い部分を取り除く手術)

1cm以下の小さいものが適応です。関節鏡で切除するだけで良いため侵襲が少なくてすみます。




関節鏡の画像

②関節形成術(悪い部分を取り除き関節面を作る手術)

1cm以上の大きなものが適応になります。


a:骨片固定術

剥がれた骨軟骨の状態がよい場合には、自分の骨を釘のように成形して固定します。


b:自家骨軟骨柱移植

 膝の骨と軟骨を移植する手術です

リハビリテーション

障害のある骨・軟骨にストレスをかけないことが重要になります。そのため投球などの競技動作は禁止します。安静にするだけではなく、復帰後にも肘に負担をかけないよう、全身の機能を高めるためのリハビリテーションを行います。

手術の場合、鏡視下郭清術の大まかな復帰目安は3-4ヶ月、関節形成術は8-9ヶ月となっています。

モザイクプラスティ プロトコル&自主トレーニング

Debridementプロトコル&自主トレーニング

参考文献

1.   岩本航ら:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(野球肘). 臨床スポーツ医学, 36(3). 334-339, 2019

2.   宮武和馬ら:少年野球においてなぜ野球肘検診が必要か. 関節外科, 33(11). 1129-1134, 2014

3.   中井大輔ら:野球肘上腕骨小頭障害低侵襲手術の最前線.  臨床スポーツ医学, 34(9). 908-912, 2017

4.   佐藤祐輔ら:野球肘上腕骨小頭障害保存療法による復帰支援.  臨床スポーツ医学, 34(9). 914-920, 2017

5.   菅谷啓之ら:離断性骨軟骨炎への病態に即した対応 いつから、どのように投球を許可するか. 臨床スポーツ医学, 32(7). 632-635, 2015

6.   少年野球選手における肘離断性骨軟骨炎に対する保存療法. 日整会誌, 92. 449-453, 2018

7.   山崎哲也ら:よくわかる野球肘 肘の内側部障害. 全日本病院出版会, 2016

8. Takahara M,et al Conservative treatment for stable osteochondritis dissecans of the elbow before epiphyseal closure: effectiveness of elbow immobilization for healing. J Shoulder Elbow Surg. 2022

概要

野球肘とは投球障害肘とも呼ばれ、投球動作によって生じた筋・腱・靭帯・神経の障害や骨軟骨の外傷・障害の総称です。

野球肘にみられる肘の機能障害は、肘関節に機械的なストレスが加わった“結果”であり、関節可動域制限や関節不安定性などが野球肘の直接の発生原因ではないことが多いです。投手に多く発生しますが、投手の次に多いのが捕手とされています。

原因

野球肘は部位によって内側型・外側型・後方型に分類されます。ここでは内側型について説明します。内側型は成長期では骨の問題が多いのに対し、成人以降では靱帯損傷が関与することが多いようです。

年齢により肘内側の支持組織の弱い部位に違いがあるため、13~16歳頃の成長期であれば内側部分の軟骨の障害、17歳以上では側副靭帯(そくふくじんたい)損傷が主に生じます。

内側型は肘の内側にある側副靱帯が、繰り返しの投球動作により部分断裂を起こし、靭帯が緩んだ状態(靭帯機能不全)になるものです。投球相ではトップの状態からボールリリースの手前の時期に肘関節への外反(がいはん)ストレスが増大することで障害発生の要因となります。

治療

肘関節の炎症がある場合は投球禁止と局所の安静が第一選択となり、痛みが強い場合には炎症を抑制する目的として、ステロイド注射や内服を実施することがあります。

小児期の内側型野球肘の予後は比較的良好ですが、日常生活でも重量の物を持たないなど、投球以外の動作にも注意を払い、早期にしっかりと安静を守ることが大切です。

成人以降の靱帯損傷型でも外傷度に準じたギプス固定などの処置を行い、早期にしっかりとした治療が必要です。

保存療法の場合は肘関節周囲の治療はもちろん、投球動作は他部位の影響が大きいと考えられるため、全身の評価を行ったうえで肩甲胸郭関節・体幹・股関節などの下肢機能にも着目し、肘関節にかかる負担を最小限に出来るような身体作りを行っていきます。

1.テニス肘とはどんな病気ですか?

・肘の外側(外側上顆)に炎症を生じる疾患です(外側上顆炎)

外側上顆炎

・手首や指を伸ばす筋肉や腱が損傷することによって生じます。

筋肉

・現在は打ち方が異なるため多くはありませんが、テニスのバックハンドで痛めることが多かったため「テニス肘」と呼ばれています。

・物を掴む、握る、指を多く使う方に起こりやすい疾患です。

2.どんな症状が出ますか?

・ものを掴む、握る時に痛む

・パソコンのマウス操作で痛む

・テニスのバックハンドで痛む

・肘から指にかけての安静時の痛み

3.どんな治療をしますか?

・当科ではエコーを使って損傷部位を確認します。

基本的には保存療法主体で治療します(約90%の症例で改善していくと言われています)。

・生活指導:物を持ち上げる時には、脇を締め、そばによって、下から物を持ちあげるようにします。


理学療法(リハビリテーション)

・テニス肘サポーター:前腕部のパッドでの圧迫で腱に負担がかからないようにします。

テニス肘サポーター

・注射治療:炎症が強く夜間に疼くような痛みがあるときはエコーガイド下の抗炎症薬の注射で炎症の鎮静化をはかります。痛みの原因が腱以外の神経などにある場合はその周囲にエコーガイド下に注射を行います(ハイドロリリース)。

・その他:体外衝撃波、PRP(多血小板血漿)注射(まだ確立されたエビデンスははっきりしていません)

それでも改善のない難治症例では手術治療(直視下or関節鏡視下)を行います。

4.当科では

・上記の難治例では関節鏡による手術を行います。また自費にはなりますが一定の効果が得られている高圧酸素療法も行うことができます。(PRPも導入予定です)

<理学療法(リハビリ)>

・手首、指を動かす筋肉のストレッチを行います。

手首、指を動かす筋肉のストレッチ

・肩周囲(特に内側に捻る動作)の柔軟性獲得により肘や手首にかかる負担を減らします。

・神経や靭帯周囲の組織が痛みの原因の場合その組織の柔軟性獲得を目指します。

<参考文献>

1.日本整形外科学会診療ガイドライン委員会:上腕骨外側上顆炎の診療ガイドライン,南江堂,東京,2006.

2.島村安則他:上腕骨外側上顆炎の診療ガイドライン, 岡山医学会雑誌,第123巻, 141-144,2011.

3.村岡邦英 他:上腕骨外側上顆炎に対する超音波検査の試み.日本肘関節学会誌,23(2)340-342,2016.

4.若林良明他:上腕骨外側上顆炎の診断と治療.MBOrthop,24(1):48-52,2011.

5.佐藤達夫他:橈骨神経-肘付近の絞扼要素.Journal of clinical rehabilitation,4(2):108-111,1995.

6.副島修:肘関節 肘外側障害 テニス肘の診断と治療(解説/特集).Orthopaedics,30:35-42,2017.

7.高原正利:上腕骨外側上頼炎の保存治療―文献調査―.整・災外.48:1025-1030,2005.

8.Boyer I, et al: Lateral tennis elbow: "Is there any science out there?". J Shoulder Elbow Surg. 8:481-91, 1999.

Sanders L, et al :The epidemiology and health care burden of tennis elbow. Am J Sports Med. 43:1066-1071,2015.

1.TFCCとはどんな病気ですか?

・手首の小指側にあるTFCCと呼ばれる靱帯と線維軟骨の複合体が損傷する怪我です。

・手をついて転倒し、強い捻じれと背屈(手の甲を反ること)が強制されて怪我をする事が多いです。

・スポーツ等では野球のバッティング、ゴルフスイング、テニスやバトミントンといったラケット競技で好発します。

TFCC損傷

左:TFCC損傷/右:TFCCの立体構造(引用文献2より)

2.どんな症状が出ますか?

・主な症状としては、動作時に手首の小指側に鋭い痛みや不安定感が出現します。

・特に手首を小指側に曲げたり、その部位を押さえると痛みが出現します。

・日常生活の動作では包丁を持つような手の構えをしたり、手首を捻ったりする時に症状が出やすいです。

TFCCのMRI画像診断

TFCCのMRI画像診断:矢印部で断裂し、白くなっている(引用文献2より)

3.どんな治療をしますか?回復にどれくらいかかりますか?

・画像検査(MRI、手関節造影、単純X線)で損傷の程度を判断します。

・基本的には保存療法を選択し、手関節装具を用いて関節の安静を確保します。

・約4週程度の装具固定で57%に症状の緩和を認めるという報告もあります。

・保存療法で症状が緩和しない場合は手術適応となる事があります。

・手術の場合は概ね6か月で競技復帰を目指します。

4.当科では

・まず、手関節を使うスポーツ動作を禁止し、6週間スプリント固定、その後手関節装具(リストケア等)で3か月固定します。

・それでも痛みが続く場合には手術を考慮します(関節鏡使用でのTFCC修復術)。

<リハビリテーション>

保存療法の場合

・手関節への負担を減らすための手関節装具を使用(固定期間は約6週~12週程度)

・テーピング指導

・手関節周囲筋のストレッチとトレーニング

・肩関節周囲筋のストレッチとトレーニング

・胸郭・肩甲帯ストレッチ

・体幹トレーニング

※スポーツ復帰や日常生活動作の安静度は経過をみながら医師と相談して決定していく。

手術療法の場合

・リハビリプログラムの例

術後~2週 2~4週 4~6週 6~8週 8週~3カ月 4~6カ月
リハビリ 指の運動
指の拘縮予防
指の運動
肩・肘可動域訓練
手首の運動
(手首の曲げ反らし)
手首の運動
(手首の捻り)
ストレッチ
手関節全可動域の運動
前腕筋の筋トレ
スポーツ競技への復帰

<参考文献>

1.新井ほか:スポーツ整形外科 術後リハビリテーション・プログラム(第7回) 上肢のスポーツ損傷 TFCC損傷(解説).臨床スポーツ医学,Vol.28:313-318,2011. 

2.中村俊康:スポーツによる手関節・肘関節障害の治療 TFCC障害の治療法(解説/特集).関節外科,Vol.30:337-343,2011.

3.別府ほか:スポーツ障害・外傷とリハビリテーション テニス.J Clin Rehabil,Vol.21:486-490,2012.

4.Park,et al:The Rate of Triangular Fibrocartilage Injuries Requiring Surgical Intervention.Orthopedics,33(11):806,2010.

5.Pang,et al:Ulnar-sided wrist pain in the athlete (TFCC/DRUJ/ECU).Curr Rev Musculoskelet Med,10:53-61,2017.

1.手指骨折とはどんな病気ですか

・舟状骨骨折:手をついて転倒受傷のパターンが多く、スポーツ競技ではサッカーやラグビー等で手関節伸展位(手の甲側に沿った姿勢)で痛めます。舟状骨は構造的に再生過程で血流不足を起こしやすく、一端骨折すると難治性となりやすいと言われています。

受傷時の肢位

受傷時の肢位

舟状骨骨折の圧痛点とレントゲン像

舟状骨骨折の圧痛点とレントゲン像

文献1から

・有鈎骨骨折:野球やゴルフ等のグリップ動作や直接的な打撃によって生じると言われています。

有鉤骨の解剖とレントゲン像

有鉤骨の解剖とレントゲン像

文献2から

・中手骨骨折:スポーツではボクシング等の格闘技での受傷が多く、別名ボクサー骨折と言われています。特に小指に多くみられます。

中手骨骨折レントゲン像

レントゲン像文献3から

2.どんな症状が出ますか?

・舟状骨骨折:親指の付け根あたりの圧痛、握力低下、手関節の可動域制限、腫脹

・有鈎骨骨折:小指の付け根よりやや下周囲の圧痛、握力低下、手関節の可動域制限、腫脹

・中手骨骨折:指の付け根よりやや下での圧痛、握力低下、手関節の可動域制限、腫脹

3.どんな治療をしますか?回復にどれくらいかかりますか?

舟状骨骨折

単純X線像で骨折部位が特定できないこともありCTやMRIが必要となることもあります

安定型骨折では手から前腕までのギブス固定での保存療法が可能ですが、不安定型ではスクリューによる手術療法が必要になります。


有鈎骨骨折

骨癒合に時間がかかるため基本的には手術的に骨片摘出をいます。新鮮例でかつ骨折面の転位がほとんどない場合や、時間的に余裕がある場合,手術を希望しない方にはギプス固定による保存療法を行います。


中手骨骨折

多くは保存療法で良好な成績が得られると言われています。転位が大きい場合はワイヤー固定による手術療法を選択することがあります。

中手骨頚部骨折へのワイヤー固定

中手骨頚部骨折へのワイヤー固定

(Foucher法)

※1 いずれの骨折も保存療法では3~6週程度の固定が必要です。

※2 日常生活動作の安定度やスポーツ競技復帰は骨癒合の程度で判断していきます。

4.当科では

それぞれの骨折で、上記の標準的な治療が可能です。

保存療法はもちろん、手術療法を選択することも可能です。手術療法では、相談に応じて全身麻酔ではなく、エコーガイド下に腕神経叢麻酔(ブロック麻酔)を安全に行え,日帰り手術も可能です。また、外傷で軟部組織の傷害や血流不全が合併する際にはそれらに効果的な高気圧酸素療法を併用することも可能です。

<リハビリテーション>

ギブス固定中

・腫脹軽減のための手指運動、上肢挙上

・スポーツ選手は軽いジョギング


ギブス固定除去後

・手指の関節可動域訓練

・手関節の可動域訓練

・握力強化

・巧緻動作訓練

・スポーツ復帰は健側握力の8割程度を目安とする

・スポーツ選手は持久力のリカバリー

<参考文献>

1.藤岡宏幸ほか:手舟状骨骨折. 臨床スポーツ医学,35:248-253,2018.

2.西浦康正:野球-有鈎骨骨折・手指血行障害.臨床スポーツ医学,35:292-296,2018.

3.加藤直樹:中手骨・指骨骨折.臨床スポーツ医学,35:258-262,2018.

4.沖本信和ほか:有鈎骨骨折の治療経験.整形外科と災害外科,42(1):149-152,1993.

5.国分正一ほか:今日の整形外科治療指針.Vol.6,2010.

6.斎藤英彦ほか:手外科診療ハンドブック.

前十字靭帯(ACL)とは大腿骨(太ももの骨)の後方から脛骨(すねの骨)の前方にあり、大腿骨に対して脛骨が前方に移動したり、回旋したりすることを制御しており膝関節の安定性を担っています。

概要

スポーツ外傷の中でも頻度が高く、特にサッカー、バスケットボール、バレーボール、柔道、スキーなどでよく起こります。ジャンプの着地やターン・カッティング動作中に膝を内に捻ることで生じ、膝が抜けた感じがします。

症状

急性期

受傷直後は疼痛・腫脹のためにスポーツ復帰は困難となります。また、半月板損傷や他の靭帯損傷を合併していることもあり、伸展障害(膝が伸びない)を起こすこともあります。

慢性期

膝の回旋不安定性によって膝がガクッと抜ける(膝くずれ)ことがあります。膝崩れを繰り返すことで2次的な半月板損傷や骨軟骨損傷を生じることがあります。

診断

1.徒手検査

膝のゆるみを用手的に判断します。

2.画像検査

レントゲン、MRIを用いて骨・靭帯の評価を行います。

3.アルスロメーター

脛骨の前方移動量を計測し左右の膝を比較します。

正常なACL
ACL損傷のMRI

治療

まれに前十字靭帯が損傷していても装具を装着しスポーツ復帰可能な場合があります。

しかし

いつ膝崩れを起こすか分からない不安感(apprehension)が強い

頻繁に膝崩れを生じスポーツパフォーマンスが落ちてしまう

今まで通りスポーツを行いたい、またスポーツ復帰をしたい

という場合に前十字靭帯を再建します。

手術までの流れ

受傷後は疼痛や炎症により膝の可動域や筋力が十分でない事が多いため、術前にリハビリを行います。機能が回復し患者様と十分に相談した上で復帰時期などを考慮して手術を決定しています。

手術手順

1.採腱

2.再建靭帯作成

3.骨孔作成

4.再建靭帯固定

ACL再建手術は大きく分けて1~4の過程で行われます。

当院の手術について以下で説明します。

当院での関節鏡システム

手術は直径4mmの関節鏡を

用いて行います。

2カ所の小さな切開から関節鏡を挿入して手術を行います。✔ 脛骨内側の3cmの傷から腱を採取します。

ACL

左:正常なACL/右:損傷したACL

1.採腱

・半腱様筋腱(ST)、薄筋腱(G)

脛骨に付着しているハムストリングの一部を用います。

・骨付き膝蓋腱(BTB)

膝蓋腱の一部を用います

当院では通常、ハムストリングを用い再建術を行っております。

半腱様筋腱が十分な長さ採取できた場合、薄筋腱は用いません。

またスポーツの競技特性にあわせてBTBを用いています。

2.再建靭帯作成

採取した腱を2分割し、それぞれ2重折りにして腱を作成します。

3.骨孔作成

ACL再建術には1重束再建法と2重束再建法があります。

正常なACLは前内側束(AMB)、後外側束(PLB)の2つの束でできています。そのため元々のACLにより近似させるため、大腿骨と脛骨に2つずつ骨孔を作成し再建します(2重束再建法)。

また、大腿骨側の骨孔作成にもいくつかの方法があります。

・経脛骨法

・脛骨の骨孔を利用して大腿骨側の骨孔を作成する方法です

・経ポータル法(in-side out 法)

・膝の皮膚切開部(ポータル)を利用して大腿骨骨孔を作成する方法です

・out-side in法

・特殊なガイドを利用し、外側から大腿骨に骨孔を作成する方法です

それぞれ利点・欠点などがありますが、大腿骨骨孔を独立して阻害される事なく至適な位置に作成できるため当院ではout-side in法を用いて手術を行っています。

4.再建靭帯固定

作成した骨孔にそれぞれAM束とPL束を通して一定の張力で固定します。

再建されたACL

前十字靭帯再建術(STG)プロトコル&自主トレーニング

前十字靭帯再建術(BTB)プロトコル&自主トレーニング

半月板とは大腿骨と脛骨の間にあり膝への荷重を分散させるクッションの役割があり、膝の屈伸でスムーズな動きを助ける三日月型の軟骨組織です。

概要

スポーツなどにより膝を捻ったり衝撃が加わったりする事で受傷する場合と、加齢により変性断裂する場合があります。前十字靭帯損傷に合併する場合も多いです。半月板損傷により屈伸時に痛みや引っかかり感(catching)が生じたり、曲げ伸ばしができなくなったりします(locking)。

損傷の形態は様々です。

治療

保存療法と手術療法があります。

保存療法では内服やヒアルロン酸注射を行います。

保存療法に抵抗する場合には手術療法を行います。

手術の場合、半月板縫合術と半月板切除術があります。


半月板切除

高齢者の半月板損傷の場合、損傷部の部分切除を行い形成を行います。


半月板縫合

半月板は膝のクッションと安定性の機能がある組織のため、半月板がなくなると2次的な軟骨損傷や変形性膝関節症が進行する可能性があります。そのため残せる場合はできるだけ修復・縫合を行うようにしています。

1.all-inside法 関節内で縫合

2.inside-out法 関節内から外

3.outside-in法 関節外から中

当院では適応に合わせ積極的に縫合術を行っています。


後療法

損傷形態、縫合の種類にもよりますが術後早期に可動域訓練を開始し、術後2wから部分荷重を行い術後4wで全荷重を開始しています。

半月板縫合術後(水平断裂・縦断裂)

半月板縫合術後(横断裂)

概要

Osgood-Schlatter病は、成長期の脛骨近位端に生じる骨端症であり、脛骨結節に限局した痛みと腫れ、脛骨結節の触診時の痛みを特徴とします。

成長期では、膝関節を構成する大腿骨と脛骨の成長軟骨が成熟する過程で、長軸が伸びるため、大腿四頭筋の伸長が追い付かず、相対的に筋と、筋と骨をつなぐ腱が短縮した状態になります。大腿四頭筋が短縮し骨に対する牽引力がかかりやすくなっている状態で、かつにキックやジャンプ動作などによる、強い筋肉の収縮が繰り返されることによって、発育途中の脆弱な脛骨粗面(膝の前面に)負荷がかかることにより起こります。

診断

脛骨結節の圧痛や炎症所見、レントゲンやMRIでの画像診断(不整の有無や程度)超音波にて診断されます。

診断


治療

保存療法

1.安静

痛みの程度に応じて原因となっている活動を変更することが挙げられます。最終的には癒合するまで2年ほど持続することもあります。安静にすることで回復が早まるという証拠はありませんが、活動制限は痛みの軽減に効果的です。直接的な外傷から保護するために、脛骨結節に保護用の膝パッドを装着してもよいでしょう。重症で長期化している場合は、短期間の膝の固定を検討することもあります。

2.薬物・注射療法

痛みの緩和には、アイシングやNSAIDs(痛み止め)の使用を一時的には行うこともあります。また当院ではエコーガイド下の注射を行い、痛みの部位に正確な注射を行います

3.手術療法

10代の患者様は年齢と主に通常は上記の保存療法で治癒します。しかし、剥離骨片が認められる終末像を有する例や成人期での遺残性オスグッドの場合は手術療法の対象となることがあります。

手術療法にはドリリングや骨片摘出術があります。当院では骨片摘出術を関節鏡視下に行うなど低侵襲の治療を行っています。


リハビリテーション

アイシングや大腿四頭筋のリラクセーションなど患部の管理について介入していきます。併せてハムストリングスのストレッチや、大腿四頭筋のストレッチと強化の両方を行うことが有効な手段となります。近年では、スポーツ動作時の過度な後方重心が、脛骨粗面により負荷を増加させることが示唆されており、リハビリテーションでは、膝関節単体ではなく、股関節や足関節への介入も行っていきます。発生要因として大腿四頭筋・下腿三頭筋柔軟性低下などの柔軟性や,大腿四頭筋筋力・ハムストリングス筋力低下、大腿四頭筋の求心性筋力と遠心性筋力のアンバランスという筋力の問題が示されているため、再発や重症化の予防として介入していきます。


オスグッドの予防に効果的なエクササイズはこちらのページをご参照ください

参考文献:

1.整形外科リハビリテーション学会:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション.MEDICAL VIEW,2008

2.Hiroyuki Watanabe, PhD, PTら:Pathogenic Factors Associated With Osgood-Schlatter Disease in Adolescent Male Soccer Players: A Prospective Cohort StudyOrthop J Sports Med. 2018 Aug; 6(8)

3.Hannah N Ladenhaufら:Osgood-Schlatter disease: a 2020 update of a common knee condition in children.Curr Opin Pediatr. 2020 Feb;32(1):107-112.

4.James M. Smith:Osgood Schlatter Disease.2020 Jul 29. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls

5. 松本秀男:レジデントはどの治療法を選択すればよいのか-日常よく遭遇する疾患-Osgood病.関節外科Vol.38:181-188,2019.


概要

膝関節内の軟骨が傷んだり,剥がれてしまう傷害です。成長期の特に男児に比較的多く,繰り返しの軟骨へのストレスや,強い衝撃によって起こってきます。

膝の内側に起きることが多く,膝の痛みを伴います。はじめは痛みがあても運動などはできますが,進行して軟骨が剥がれてしまうと関節内で引っかかり膝を動かせなくなり強い痛みを伴います。

初期のころはレントゲンのみでは異常がないことも多く,MRIで診断をします。

治療

早期に診断がつけば,適切な荷重や運動の制限で自然修復が期待できますが,軟骨の損傷が進行したり,剥がれてしまうと手術による処置が必要となります。特に軟骨が剥がれて時間の経過したものでは,剥がれた軟骨の修復が困難で軟骨移植などが必要になる場合もあるので,早期の診断が重要になってきます。

概要

膝蓋骨が膝屈曲に際し大腿骨外側顆の方へ偏位するものを外側亜脱臼、完全に外側顆を超えたものを

外側脱臼という。原因として、大腿四頭筋異常、大腿骨顆部形成不全、脛骨粗面の外方偏位、

全身関節弛緩、膝蓋骨高位、外反膝など多くの因子が挙げられる。

また、脱臼はないが、膝蓋骨の異常可動性があり不安定性と疼痛を訴える例もある。これらはすべて

含めて膝蓋骨不安定症ともよばれ、10歳代台の男女に頻度が高い

分類

【外傷性脱臼】

外傷による脱臼を指し、下腿外旋を強制した状態で膝を屈曲した場合に起こる。内側広筋と内側支帯の一部が断裂し、激痛の関節血症を生じる。また、膝蓋骨または、大腿骨外側顆の骨軟骨骨折を伴うことがある。膝蓋骨内側縁に主張と圧痛を認める。

【反復性脱臼】

脱臼が再発し、その後脱臼を繰り返すもの。下腿を外旋した状態で膝を屈曲させようとすると脱臼の

不安感を訴える。

【習慣性脱臼】

外傷の既往なく膝の一定肢位(通常屈曲位)をとると常に脱臼するもの。外反膝と脛骨粗面の外方偏位のためQ角が大きい例が多い。

【恒久性脱臼】

膝の屈曲に関係なく常に脱臼しているもの。先天性と後天性のものがある。大腿四頭筋が正常に作用できないため膝の自動伸展が完全に行えない。


診断

X線検査による膝蓋骨位置の異常や大腿骨の形態異常。圧痛や腫脹、膝関節の伸展不全や整形外科的テスト(apprehension test)陽性がみられる

治療

外傷性脱臼では骨折が無ければ、血腫の管理を行いながら外固定などで数週間の局所の安静をとる。その後、脱臼の再発を防止するために運動時にはテーピングや膝蓋骨用サポーターを用いる。

脱臼が頻回に起こる例や、習慣性や恒久性脱臼の例には手術療法が必要となる。症例に応じて外側支帯離開術、MPFL縫縮・再建、脛骨粗面移行術などが行われる。

リハビリテーション

動作時の外反膝に対する動作指導、大腿四頭筋の筋力強化などを行う。

膝蓋骨のアライメント評価や、膝外側組織の柔軟性低下やエコーによる動態観察を行い、局所的に膝外側組織の柔軟性改善や外側広筋付着部・外側膝蓋支帯縦走線維と皮下組織の滑走性などのアプローチが挙げられている。


参考文献

1標準整形外科学 第12版,医学書院,2014.2

2鈴木秀基ら:外側広筋付着部、外側膝蓋支帯周囲組織の滑走性低下により疼痛を呈した膝蓋骨亜脱臼  の1症例.第53回日本理学療法学術大会 抄録集

3岡本瑞季ら:恒久性膝蓋骨脱臼例に対する動的アライメントの修正に着目した理学療法介入の経験.  第54回日本理学療法学術大会 抄録集



概要

オーバーユース障害であり、男性バレーボール選手の約50%が経験すると報告されていて、膝蓋骨についている膝蓋腱に炎症を起こす障害です。

ジャンプやダッシュ,キックなどの動作で膝蓋腱に強い牽引力がかかり、ジャンパーに多く発症することからジャンパー膝と呼ばれています。

高いジャンプが可能で、スパイクジャンプの着地でより膝を深く曲げる選手に発症しやすいと報告されています。

この牽引性や伸張性の負荷が繰り返しかかっていくと膝蓋腱に炎症や腱の微小損傷を引き起こして痛みが出現します。

発症の要因・誘因が複雑であるために、治療に難渋するケースが少なくありません

症状

膝蓋腱遠位の腱症・腱炎はジャンパーよりもランナーにみられ、脛骨粗面付近に痛みを訴えます。 腱の痛みは安静時に痛むことは稀で、負荷がかかると同時に自覚されて負荷が除去されるとすぐに感じなくなります。 エネルギー蓄積活動の翌日には痛みが明らかに増すことが多いことや、動いているうちに痛みが軽減するウォームアップ現象を認めることがあります。

診断

身体所見

症状の発生源が膝蓋腱かを確かめるために、痛みの自覚部位や圧痛部位が膝蓋骨下極や脛骨付着部に限局しているか、また膝伸展筋の負荷に関連して痛みが増すかを確認します。 長時間座位・スクワット・階段昇降時にも痛みが生じるが他の病態でも生じやすく、腱の伸張負荷量に応じて痛みが増す特徴を示すために、腱への負荷の大きさ・速さ・頻度と痛みの関連性を確認します。 スクワットでは膝の屈曲角度が増すほど、ジャンプでは距離や高さが増すほど、踏み切りや着地時の痛みが増すかを確認します。

画像所見

超音波やMRIが用いられることが多く、腱の形態を正確に表すことや鑑別診断に役立つとされています。 単純X線では付着部の骨変化や膝蓋腱に一致して石灰化を認めることがあります。 MRIでは膝蓋腱の付着部から実質にかけて肥厚しますが、変性が進むと腱内部に高信号を認めます。 膝蓋腱の画像所見は痛みの程度と必ずしも関連せず、症状のない者にも異常所見を認めることがあるために、必ずしも臨床症状を反映するわけではありません。
図3.ジャンパー膝のMRI 膝蓋腱の膝蓋骨付着部が高輝度を呈する (青矢印)

症状分類

・Blazinaらの3期分類 Phase1:運動後のみに疼痛があり、機能障害はない Phase2:運動時・運動後に疼痛があるが、パフォーマンスは満足のできるレベル Phase3:運動時・運動後に疼痛が長期間に及び、パフォーマンスは徐々に満足できるレベルではなくなる ・Roelsらの4期分類 Phase1:運動後のみに疼痛がある状態 Phase2:運動開始時に疼痛があり、ウォームアップ後に疼痛がなくなり、運動後再び疼痛がある状態 Phase3:活動中や活動後の疼痛のために、スポーツに参加できない状態 Phase4:腱の完全断裂

治療

基本的には以下のような保存療法が主体となります。 ・スポーツ現場では痛みの程度により運動制限

・リハビリテーション(理学療法、運動療法)

・装具療法

・注射療法

炎症がとても強いときや診断目的に炎症部位への注射を当院ではエコーを用いて正確に行います。

・超音波療法

・対外衝撃波療法

図4.広義のジャンパー膝であるオスグッド病へのエコーを用いた注射

リハビリテーションでは、大腿四頭筋の筋力改善を中心に図っていきます。

症状が強い場合には膝関節の安静と運動前の大腿四頭筋のストレッチや運動後のアイシングを行います。

膝蓋腱自体、筋骨格単位、運動連鎖の負荷耐性の向上に焦点を当てて段階的に行っていきます。

参考文献

1.相澤純也ら:総合リハビリテーション. 7:587-595,2016. 2.新井祐志ら:MB Medical Rehabilitation. 258:23-29.,2021. 3.福林徹ら:下肢のスポーツ疾患治療の科学的基礎. 1 3:50 -60,2015. 4.田中亮:理学療法. 3:226-245,2020. 5.松本秀男:レジデントはどの治療法を選択すればよいのか-日常よく遭遇する疾患-Osgood病.関節外科Vol.38:181-188,2019.

概要

・FAI(femoroacetabular impingement)は,大腿骨および寛骨の骨形態異常によって股関節動作時に衝突が生じる病態と定義されています。


・インピンジメント(衝突)によって股関節唇および関節軟骨が損傷されることから、関節の求心性が損なわれ関節不安定症が高率に生じることも報告されています。


・何らかの理由で生じたが機能不全(筋力低下、柔軟性低下など)単径周辺部の器質的疾患発生に関与し、運動時に鼠径部周辺部に様々な痛みを起こす疾患です。


・機能不全(筋力低下・柔軟性低下など)がある状態で競技やトレーニングを続けることで鼠蹊部に負担が集中すること疼痛が引き起こされます。


・アスリートに発生するアスリート蝋径部痛はその病態や疸痛の原因を特定することが難しく、時に診断と治療に難渋します。FAIは 股関節関連厳径部痛の代表疾患として考えられています。


診断

・FAIの診断は臨床症状と画像診断を合わせて行います。

・FAIは股関節の形態と引き起こす病態より,3つのタイプに分類されます。


・整形外科的テストとしてはImpingementテスト、Patrickテスト、FABERテストなどの疾痛誘発テストが陽性であること、抵抗下のSLR運動における筋力低下や疾痛の有無、股関節屈曲内旋角度の左右差の有無を確認する。

・画像評価は単純X線が基本です。必要に応じてCT検査や関節唇損傷部の厳密な評価のために関節造影併用放射状MRIを行います。



治療

・リハビリテーション

FAIの臨床症状として①股関節の可動性低下、②股関節の安定性低下、③骨盤帯の可動性低下、④腰椎、骨盤帯の安定性低下が挙げられるのでこれらの改善に努めます。

・関節内注射

ステロイド注射、ヒアルロン酸注射、PRP注射などがあります。

・手術療法

鏡視下手術があります。

リハビリテーション

痛みを起こしている部位を特定し局所の痛みに対して治療を行います

競技による動作の確認を行い疼痛に原因となりうる動作の修正、改善を行います


エクササイズ例

①股関節の可動性低下に関しては外旋筋群のストレッチを実施します。

②股関節の安定性低下に関しては小殿筋、中殿筋のトレーニングを行います。




③骨盤帯の可動性低下に関しては肩甲骨-胸椎-腰椎-骨盤が十分な可動性を持ち、連動して運動するトレーニングを実施します。

④腰椎、骨盤の安定性低下に関してはプランクを中心とした体幹のトレーニングを実施します。

<参考文献>

仁賀定雄:スポーツと骨盤−病態と診断−:臨床スポーツ医学(2018)

若間仁司ほか:MB Orthop.31(6):59-68,2018

山藤崇:MB Orthop.33(10):103-108,2020

青山倫久ほか:MB  Orthop.31(6):49-58,2018


概要

10代の活発にスポーツを行っている成長期のこどもに生じる腰の背骨の疲労骨折です。

高校生以下で2週間以上続く腰痛を訴えて受診した患者さんの約40%が腰椎分離症であったとの報告もあります。


発生率は,一般成人で約6%程度といわれています。しかし、アスリートにおいては,約30%とスポーツを行うことで,発症率が上昇することが報告されています。

野球(ボールを打つ時)、サッカー(ボールを蹴る時)、バレーボール(サーブ、アタックの時)などの腰をひねったり、反ったりするスポーツに多く発症します。


放置すると偽関節と言う骨折部がくっつかないこともあり、持続的な広い範囲の腰痛や下肢のしびれなどの後遺症が残ることがあります。

診断

①理学所見

・腰椎後屈・回旋で増強する腰痛 

・Kemp sign陽性

・限局した棘突起の圧痛

が生じている場合は腰椎分離症を疑います。


②画像所見

X線、CTやMRIを用いた早期診断が重要になります。

病期は初期、進行期、終末期に分かれます。

単純X 線斜位像ではスコッチテリア犬の首輪と呼ばれる像が確認できます。

単純X 線斜位像ではスコッチテリア犬の首輪と呼ばれる像が確認できます。

治療

画像検査(CTやMRI)による疲労骨折の進行具合で治療方針や治療期間が異なります。

初期、進行期で発見することが出来れば癒合する可能性があるため、コルセットを作成し治療を行います。


疲労骨折を早期に診断・治療できれば、3-4か月程度で運動を再開できることが多いです。

しかし、診断が遅れてしまうと、半年ほど治療に要することがあります。


一定数で再骨折が生じてしまうため、リハビリテーションは必須です。

数か月ごとにMRIを撮り、骨折の状態を確認しながら、リハビリテーションを行います。

リハビリテーション

リハビリテーションの開始時期は症状が改善した時点で早期に開始することを推奨する人もいれば、3ヵ月間の休養が終わるまで行わないなど様々となっています。


脊椎の生理的な可動性より逸脱した動きが生じないように,腰椎の隣接関節である股関節周囲筋ストレッチ(ハムストリング・大腿四頭筋・腸腰筋)、胸郭、肩甲帯のストレッチを実施します。


腰部に負担をかけないように臀部、体幹の筋力(腹横筋や多裂筋など)の筋力増強訓練を実施します。


症状が改善してきたら胸椎の伸展運動や回旋運動を実施し、腰椎に負担をかけない動作訓練を行います。その後、競技に特化した動作の訓練を行い競技復帰となります。

股関節周囲筋のストレッチ
体幹筋力トレーニング

参考文献

臨床スポーツ医学:Vol.33,No 4

関節外科 Vol.35 No.5(2016)

MB OrthoD.28(10):120-126.2015.

日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 25 No. 3, 2017.

MB Orthop.30(8):37-49,2017

Mitchell Selhorst ,et al:The International Journal of Sports Physical Therapy. Vol15,287-300,2020.

臨林と研究・97巻7号一

関節外科 Vol.39 No.2(2020)

Jounal of clinical rehabilitation Vol.29 No.5 2020.5

Jpn J Rehabil Med Vol. 58 No. 1 2021

1.アキレス腱炎とはどんな疾患ですか?

・立位や歩行、ランニングなど身体を動かすときに酷使される組織であるアキレス腱に炎症を起こした状態です

・若年アスリートから中高年運動愛好家まで広く生じるスポーツ障害のひとつです

・アキレス腱に炎症が生じ、腱実質の変性や損傷が生じます

2.どんな症状がでますか?

・踵から5cm程度の間に痛みを生じ、腫れや熱さを感じます

・痛みは運動時に起こり安静時にはほとんどありません

・初期症状では起床時のこわばりや伸ばしたときに痛みがでますが、少しずつ動かしていくことで症状が減少するため通常通りの運動が可能です

3.どんな治療をしますか?回復にはどのくらいかかりますか?

・基本的には保存療法で症状改善しますが、稀に手術を要する場合もあります

・保存療法ではリハビリテーションが中心になりますが、体外衝撃波なども用いられることがあります

・超音波検査装置(echo)で炎症や新生血管の変化を確認し、理学療法士と情報共有しながら治療していきます

・回復までの時間は部位や初回なのか繰り返しなのかなどで異なります。

・初期症状のときは運動制限と正しいケアをすることで2週間程度で改善します

4.どんなリハビリテーションをするのですか?

・踵の動きと痛みを評価し、踵のアライメント不良を改善します

・ふくらはぎの柔軟性改善のためのストレッチを行います

・足関節機能の改善(可動域と筋力)を行います

・時期に合わせて物理療法(超音波療法やアイシングなど)やテーピングを併用します

・インソールを作成することもあります

<参考文献>

堀居昭:アキレス腱炎のメカニズムと予防法について. Sportsmedicine No63 37-39 2004

江玉睦明:アキレス腱障害発生メカニズムの解剖学的検証.日本基礎®額療法学雑誌 第20巻2号16-21 2017

Ruth L. Chimenti,DPT,PhD,et al: Current Concepts Review Update:Insertional Achilles Tendinopathy Foot Ankle Int . October38(10):1160–1169,2017

概要

ジャンプの着地動作や踏み込み動作などで多く発生します。受傷の際は“足の後ろを蹴られた”感覚を持つ患者さんが見受けられます。

つま先立ちが出来なくなり、断裂した箇所に凹みが見られます。

検査は徒手検査を行なうことが多く、レントゲンではわからないことがほとんどです。超音波やMRIなどでは診断がつきます。

治療

当院では患者さんと相談の上、保存療法か手術療法が選択されます。


療法

ギブス固定を行い、徐々に装具などに切り替えていく


手術療法

様々な縫合方法があり、患者さんの年齢層や競技種目などで選択

治療期間は断裂の程度や治療方法により異なりますが、患者さんと相談の上、医師・理学療法士と治療方針を立てていきます。スポーツ復帰には半年前後を要しますが早期復帰するには早期手術が求められます。

Achilles Midsubstance SpeedBridge™手術の様子(Arthrex Japan合同会社の許可を得て転載)

手術から復帰までのイメージ

Arthrex PARS Technique Helps a Professional Soccer Player Get Back on the Field(Arthrex Japan合同会社の許可を得て転載)

リハビリテーション

アキレス腱のリハビリは、保存も術後も早期、中期、後期に分けて行います。

*スポーツ選手のスポーツ復帰例

早期:痛みのコントロールと拘縮予防

術後早期は、縫合したアキレス腱が伸びないように、足首の運動は避けます。足首が固まらないように、予防のため足趾の運動などを行います。

中期:ジョギング開始時期(目安:術後 6週、保存 12週)

ジョギング開始に向けて、踵挙げなどの腓腹筋の筋力トレーニングを行います。片脚で踵挙げができるようになることを目標にします。

後期:練習、競技復帰(目安:術後 12週、術後 16週)

復帰に向けてダッシュ、ジャンプのトレーニングを行います。片脚で踵挙げが25回できるようになることを目標とします。

 

アキレス腱断裂手術後

概要

足底腱膜と踵の付着部への伸張性または圧迫性の機械的負荷により微小損傷を繰り返し起こし形成される有痛性の変性病変が主体となります。そのため、長時間の立ち仕事や歩行、体重増加、靴の不適合、スポーツ(ランニングやジャンプなど)による使いすぎが主な原因と考えられます。10人に1人が生涯中に罹患し、約9割の患者は保存治療により12ヶ月以内に症状が改善すると言われています。

症状

長時間の立ち仕事や歩行により、かかとの内側前方に痛みが出ます。


階段を昇る際や、つま先立ちなどで痛みがさらに増します。朝、起床して最初の1歩目に痛みを感じます。歩くうちに徐々に軽減し、夕方になって 歩行量が増えるに従い、再び痛みが強くなってきます。 


同様の症状は、スポーツ活動の際にもみられます。

ランニングなどの開始時は痛みを強く感じますが、運動を続けるうちに徐々に軽快し、長時間になると再び痛みが強くなってきます。

診断

①徒手検査

足底腱膜の圧痛、硬結評価

足底腱膜付着部の疼痛評価(Windlass test)

②画像診断

MRI

腱膜肥厚や変性、腱膜周囲炎や踵骨骨髄腫を認める。

超音波検査

腱膜の肥厚や低エコーで描出される変性像(右:正常/左:異常)

X線レントゲン

踵骨棘を認めることが多い。

治療

基本的には保存療法が主体となります。

スポーツ現場では痛みの程度により運動制限を行います。

理学療法

運動療法や徒手療法にて機能改善を図ります。


装具療法

足部アーチの安定化のためインソールを作成。足底筋膜への負担を軽減することにより、足底筋膜炎の症状を軽減すると考えられている。


注射療法

ステロイド注射:強い抗炎症作用を通じて、除痛の即効性を認めます。

PRP療法:血小板成長因子を促進することによって自然治癒過程を刺激し、それにより足底筋膜の生理的治癒過程を促進させます。


対外衝撃波療法

2012年より「難治性足底筋膜炎」に対する保険診療が可能となりました。衝撃波の持つ物理的特性を用いて、除痛効果や組織の修復促進効果に加え、筋・筋膜の滑走性や柔軟性改善などの効果が期待されています。


血管内治療(簡易動注療法)

足底腱膜付着部周囲にできる「異常血管」を詰めることで痛みを軽減する治療です。外来で簡便に行うことができます。

血管内治療の詳細はこちらから(自費診療)

当科では、理学療法を主体とし、必要に応じ装具・注射療法を行ったうえで、難治性の場合には自費での血管内治療をおこなっています。

※対外衝撃波療法は行っておりません。希望の方は他院への紹介しております。

リハビリテーション

リハビリテーションでは、足底腱膜に生じる負荷を軽減させるため足関節や足部機能改善を図っていきます。

また、痛みの軽減に伴いスポーツ復帰に向けたアスレチックリハビリテーションも実施しています。

・足底腱膜へのストレッチ

足関節を反り、踵を固定しつつ、足趾を伸ばしてストレッチを行います。

足底部にボールなどを入れて直接ストレッチを行います。

・足関節背屈可動域訓練

足趾を上に持ち上げた状態で前に体重をかけてストレッチします。

タオルを用いて、足関節を上に反りストレッチします。

・High load strength training

段差上でつま先立ちとなり足趾の下にタオルを設置し、踵上げ下げ運動を行います。

足底腱膜と下腿三頭筋のストレッチとなります。

②筋力訓練

足部アーチ(土踏まず)が低下することで、体重や衝撃を支える力が弱くなり、足底腱膜に負担がかかり、硬化しやすくなり、痛みの原因となります。

筋力訓練を行い、足部アーチ(土踏まず)の改善を図っていきます。

・後脛骨筋エクササイズ

・タオルギャザー(足趾屈筋群の筋力強化)

足部にゴムバンドを巻き、足首を下に向けたまま内側にけるようにします。

地面にタオルを敷き、足趾全体でタオルを手前に引き寄せるように足趾の屈伸を繰り返します

徐々に座位から立位へと運動強度を高めていきます。

足底腱膜炎に対するセルフケアはこちらのページをご参照ください

参考文献

1.THOMAS TROJIAN et:Plantar Fasciitis・Am Fam Physician.2019 Jun 15;99(12):744-750.

2.Purnima Aggarwal et:Evaluation of plantar fascia using high resolution ultrasonography in clinically diagnosed cases of plantar fasciitis・Pol J Radiol.2020;85:e375-e380.

3.JAMES D et:Diagnosis and Treatment of Plantar Fasciitis・Am Fam Physician. 2011 Sep 15;84(6):676-682.

4.福林 轍ら:運動器スポーツ外傷・障害の保存療法 下肢・2020.11 5:269-275.

概要

スポーツ傷害で最も多い疾患の一つで、サッカーやバスケットボールなどの切り返し動作の多いスポーツに多く発生します。何度も繰り返す選手が多く、初回捻挫の治療が重要です。最も損傷されやすい靭帯は、前距腓靭帯といわれる足首の外側の靭帯です。そのため 外くるぶしの腫れと痛みを訴えることが多くなります。

診断

腫れの度合や足関節の緩さをみて損傷の程度を分類します。

足関節を前後に引き出すようなストレスをかけて、怪我をしていない側と比較をして緩さの度合いを確認します。

レントゲンで靭帯は写らないため損傷の評価はできませんが、ストレスを加える事で靭帯の緩さは評価できます。

超音波やMRIなどを使用すれば靭帯の断裂などが確認できます。

治療

治療方針は、足関節の疼痛の残存・歩行時の不安定感・軟骨損傷などの合併症などにより保存的治療か手術を選択します。またスポーツや職業などによっても治療が異なります。

ギブスや装具などを用いた保存的治療が中心ですが、最近では、関節鏡を用いて低侵襲に靭帯が修復できるようになり、手術の適応が広がっております。

鏡視下靭帯修復術(鏡視下Brostrom法)

関節鏡で行う手術です。数カ所の小さな皮膚切開で行うことが可能です。

前距腓靭帯が腓骨から剥がれている様子が確認できる。

(⇔ 骨から靭帯が剥がれている)

腓骨にアンカー(糸のついたビス)を挿入し、糸を剥がれた前距腓靭帯に通しているところ。

鏡視下靭帯修復術

1.Jones骨折とはどんな病気ですか?

・足の小指の疲労骨折(繰り返されるストレスが原因の骨折の一種)です

・ステップや切り返しをするスポーツになりやすく、サッカー選手では半月板損傷や前十字靭帯損傷と並んで起こりやすい怪我です

2.どんな症状が出ますか?

・初期は運動時の痛みや圧痛などですが、症状がなくレントゲンでも骨折線が見えず気付かれないことがあります

3.どんな治療をしますか?回復にどれくらいかかりますか?

・スポーツを休止,骨折部の固定・免荷,リハビリテーション,足底板の作製、超音波治療器(LIPUS)などを行います

・他の部位の疲労骨折よりも治りにくいことがあり、スポーツ選手では手術が考慮されます

・スポーツ復帰の目安は部位や重症度によって異なりますが,数週間から数ヶ月程度です

4.当科では

・問診、触診、レントゲン、エコー、 MRIなどで診断します

・1~3週間ごとにレントゲン、エコー、 MRIなどで骨癒合(骨のくっつき具合)を確認し、スポーツリハビリテーションを行います

・骨癒合が進まない場合や競技レベルによって手術を考慮します

<リハビリテーション>

①評価

・可動域・能力測定

・使用している靴の確認(一般的にBladeタイプのスパイクは負担が大きい)

靴の確認

・骨折部に負担がかかる動作の確認(例:切り返し)

②理学療法

・骨折部に負担のかからない運動、エアロバイク、水泳、水中ウォーク

・患部の治療促進(超音波治療)

・母趾球で体重を支える練習

母趾球で体重を支える練習

・切り返しの練習(図)

切り返しの練習

<参考文献>

1. 齋田良和ほか:プロサッカー選手における第5中足骨疲労骨折(Jones骨折)の発生状況調査.JOSKAS 40:531,2015

2. 立石智彦:ジョーンズ骨折術後の競技復帰.臨床スポーツ医学36(8),2019

3. Justin C et al.: Changes in Plantar Loading Based on Shoe Type and Sex During a Jump-Landing Task . Journal of Athletic Training,48(5):601–609,2013

4. 古賀英之:予防に導くスポーツ整形外科.文光堂.293-300,2019

Jone’s骨折術後プロトコル&自主トレーニング

概要

外脛骨は舟状骨の内側に位置する過剰骨で、発生頻度は約4~21%と言われています。その存在自体は病的ではなく、無症候性なものが大多数を占め疼痛はありません。

しかし、歩行・陸上競技・履物などの影響により、外脛骨と舟状骨の間で微細な動きが生じると疼痛の原因になります。発症は女性にやや多く、運動量が多くなる10~15歳頃に発症します。

また、成人例では捻挫を契機に疼痛が急性発症することもあります。さらに、扁平足による内側縦アーチの低下は1つの要因として考えられます。

症状

足部内側の舟状骨突出部の圧痛が主な症状になります。また、運動時や歩行時にも疼痛を伴います。発赤や腫脹を伴う炎症所見を示すものは少ないです。

診断

①徒手検査

外脛骨部の圧痛評価

②画像診断

Veitchの分類にてX線評価を行います。

疼痛をきたすのはほとんどTypeⅡであると言われています。

治療

基本的には、経過観察・注射による抗炎症剤・装具などの保存的治療が推奨されており、保存的治療にもかかわらず症状が続く場合には外科的切除または剥離が勧められています。

スポーツ現場では痛みの程度により運動制限を行います。

理学療法

運動療法や徒手療法にて機能改善を図ります。


注射療法(ステロイド注射)

強い抗炎症作用を通じて、除痛の即効性を認めます。


装具療法

内側縦アーチの保持を目的としたインソールの作成を行います。


対外衝撃波療法

骨障害(偽関節や骨端症)が適応となり 、除痛効果が期待できます。


当科では、理学療法を主体とし、必要に応じ装具・注射療法を行っています。

※対外衝撃波療法は行っておりません。

リハビリテーション

リハビリテーションでは、外脛骨部の負荷を軽減するため足関節や足部機能改善を図っていきます。

また、痛みの軽減に伴いスポーツ復帰に向けたアスレチックリハビリテーションも実施しています。

①ストレッチ

筋肉が硬くなることで、足関節可動域制限が生じ痛みの原因に繋がります。

筋肉を柔軟にすることで外脛骨への負担軽減を図っていきます。

・下腿三頭筋ストレッチ

足趾を上に持ち上げた状態で前に体重をかけてストレッチします。

タオルを用いて、足関節を上に反りストレッチします。

②筋力訓練

足部アーチ(土踏まず)が低下することが、有痛外脛骨の1つの発生機序と言われています。

筋力訓練を行い、足部アーチ(土踏まず)の改善を図っていきます。

また、痛みが生じることで足関節周囲の筋力低下も認められるため足関節部の筋力訓練も行います。

・後脛骨筋エクササイズ

・タオルギャザー(足趾屈筋群の筋力強化)

足部にゴムバンドを巻き、足首を下に向けたまま内側にけるようにします。

地面にタオルを敷き、足趾全体でタオルを手前に引き寄せるように足趾の屈伸を繰り返します徐々に座位から立位へと運動強度を高めていきます。

・下腿三頭筋エクササイズ

踵をゆっくり上げ、つま先立ちを行い、その後ゆっくりと踵を下ろしていきます。

参考文献

1.Nigar Keles-Celik et:Accessory Ossicles og the Foot and Ankle:Disorders and a Review of the Literature・Cureus. 2017 Nov; 9(11): e1881.

2.Malynda Wynn et:Effectiveness of Nonoperative Treatment of the Symptomatic Accessory Navicular in Pediatric Patients・lowa Orthop J. 2019; 39(1): 45–49.

3.Park,Hoon MD et:The Relationship Between Accessory Navicular and Flat Foot A Radiologic Study・ Journal of Pediatric Orthopaedics: October/November 2015 - Volume 35 - Issue 7 - p 739-745

4.福林轍ら:運動器スポーツ外傷・障害の保存療法 下肢・2020.11 5:263-268.

5. 林宏治ら:足部の成長期スポーツ外傷.関節外科,Vol.32,No.3,2013.

概要

貧血とは「血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態」を指します。

肺から身体に取り込まれた酸素は赤血球の中のヘモグロビンと結合して身体の隅々の細胞に運ばれます(図1)。このヘモグロビンの濃度が低下すると酸素を運ぶ能力が低下するため、パフォーマンス、特に持久力の低下を招きます。

図1 赤血球/ヘモグロビン

スポーツによる貧血の原因は表1のようなものが考えられています。

その他に、女性アスリートでは生理による経血が重なる事で貧血になりやすい状態になります。また実は他の病気が重なっていたということもあり得るので、貧血かもと思った方は一度医療機関を受診することをお勧めします。

表1 スポーツによる貧血の原因例

スポーツを行うことで鉄が不足しがちになりますが、食事などで十分な補充ができていれば貧血に至ることは少ないです。そのためスポーツが原因で貧血に至っている場合には、十分な鉄の補充ができておらず、また鉄だけでなくその他の栄養素やエネルギーも不十分である可能性があります。参考:RED-S(Relative Energy Deficiency in Sports : スポーツによる相対的エネルギー不足)

症状

貧血の症状は多岐にわたり、また慢性の経過では低下していても無症状という方もいます。「なんだか調子が悪い」「疲れやすい」「集中力がない」「頭痛がある」「軽い運動で息切れがする」など日常生活で症状を感じる方もいれば、「パフォーマンスが悪い」「呼吸も楽で、足も疲れていないのに、なんだか動かなくなる」などスポーツをやっている時だけ症状を自覚する方もいます。

診断

採血検査でヘモグロビンの数値や関連する項目(Fe,フェリチン,TIBCなど)の数値を確認する事で貧血の診断を行います。またヘモグロビンの低下がなくても、体内の鉄が不足している相対的鉄欠乏でも症状が出る方もいます。その他スポーツ以外の原因 (出血,月経,その他の病気)が重なっていないかもチェックします。

治療/対応

スポーツ以外の原因がなければ、鉄剤の補充を行います。また栄養指導も行い、補充が十分にできているかも評価します。  

参考文献

Sim, M., Garvican-Lewis, L.A., Cox, G.R. et al. Iron considerations for the athlete: a narrative review. Eur J Appl Physiol 119, 1463–1478 (2019).

疾患概要

図のようにスポーツ活動によって生じる精神的・肉体的な疲労が十分に回復しないまま積み重なることで慢性的な疲労状態となり、長期的なパフォーマンス低下(通常は2カ月以上)を生じることを言います。

症状

『身体症状』は原因不明のパフォーマンス低下、息切れ、食欲低下、疲労感、眠気、体重減少

『精神症状』は不眠、モチベーション低下、抑うつ気分、集中力低下、不安

『自律神経機能異常』はめまい、たちくらみ、便秘、下痢、腹痛、起床時の心拍数変化

『免疫機能低下』は風邪(ウイルス感染)の発症、口唇ヘルペスの出現


など多様な症状が出現すると言われていますが、一部分しか症状が出現しないこともあります。

治療 / 対応

トレーニング量、睡眠の状況、ストレス要因、食事(栄養状況)などを聴取し、それぞれ問題点を抽出し、総合的に介入していきます。

オーバートレーニング症候群の診断が疑わしい場合、トレーニング量に関しては症状の強さ、試合の日程などに応じて、相談しながら対応しますが、最初の治療方針は完全休養となります。その後、段階的に運動量・強度を上げていきます。

診断

除外診断(他の病気を否定した上での診断)となります。上記の症状は貧血、心理的な問題、内分泌疾患、心疾患、呼吸器疾患、ウイルス感染など様々な病気で出現することがありますので、その他の疾患を否定する必要があります。

文献

Kreher JB, et al:Overtraining syndrome;A practical guide. Sports Health 4:128-138, 2012

疾患概要

スポーツ活動をする人(特に長距離ランナーなど)は運動によって消費するエネルギーが膨大となります。残されたエネルギーで骨や血液を作ったり、免疫力を高めたり、ホルモンを作ったりなどの生活を支えるエネルギーを確保しなければなりません。

その生活を支えるエネルギーが不足してしまっている状態のことをRED-S(Relative Energy Deficiency in Sport:レッズ)と言います。

症状

症状は自覚がないことも少なくありません。

図のようにエネルギーが不足することで、免疫力が下がって風邪をひきやすい、生理が来ない、疲労骨折(骨粗鬆症)、鉄欠乏が是正されても治らない貧血、抑うつ気分など様々です。

小児期のアスリートにおいては身長が伸びないということも問題となります。

RED-Sによって生じる問題

診断

除外診断(他の病気を否定した上での診断)となります。症状に応じて検査を行っていきます。

治療 / 対応

基本的にはエネルギー不足が問題なので、運動の質や量の見直し、食事の見直しなどスポーツ活動や生活習慣への介入を行います。無月経が継続する場合や抑うつ症状が強い場合は婦人科や精神科の専門医に紹介となることもあります。

疾患概要

別名 "side stitch"とも呼ばれるランニングのように繰り返し運動をした際に生じるわき腹が痛くなる症状です。横隔膜の虚血、消化管の虚血、壁側腹膜の炎症、内臓をつなぐ靱帯の牽引痛、腹部の筋けいれんなどの仮説がありますが、原因は不明であることがほとんどです。しかし、乗馬などで起きやすいことも報告されていることから、振動による壁側腹膜の牽引などが有力とも言われています。

症状

右の腹部に生じやすいと言われていますが、図のように左側に生じるなど、特定の部位というわけではありません。運動の中止により速やかに痛みが消失することが多いです。

Morton D, et al : Exercise-related transient abdominal pain (ETAP). Sports Med 45(1)

: 23-35, 2015より一部改変

診断

問診と診察を行い診断をしていきます。状況により画像検査や採血などを行いますが、それらでは異常所見がみられないことがほとんどです。

治療 / 対応

運動前の食事が誘因となることも多く、食事のタイミングや内容の指導を行います。

また、子どもや女性、運動の初心者など、筋力が弱いことが発症しやすいリスク因子とされており、リハビリテーションを行い、体幹筋力の強化なども試みます。

参考文献

Morton DP, et al : Epidemlology of exercise-related transient abdominal pain at the Sydney City to Surf community run. J Sci Med Sport (8 2) : 152-162, 2005.

Morton D, et al : Exercise-related transient abdominal pain (ETAP). Sports Med 45(1) : 23-35, 2015

疾患概要

運動によって生じる急性腎不全(急性に生じる腎臓の障害)です。

短距離走などの無酸素運動によって生じます。腎性低尿酸血症(血液中の尿酸値が低い人)のある人に生じます。病因ははっきりしていませんが、腎血管の攣縮(血管のけいれんにより血流が滞ること )によると言われています。

(※長距離走などの有酸素運動によって生じる腎不全は『運動誘発性横紋筋融解症』を参照ください。)

症状

吐き気や背部痛が運動後1-48時間後に生じるのが典型的です。

診断

検査で腎臓機能の悪化を認めることと、腎臓機能の回復期に造影剤を投与した翌日に単純CTを撮像した際にみられる腎臓の楔形の造影剤残存所見を認めることで診断されます。(Delayed CT)

治療 / 対応

輸液(点滴)が主体となり、予防としては運動前の飲水を促すことやロキソニンなどの痛み止めの内服を避けて運動することが重要です。

疾患概要

運動によって生じる急性腎不全(急性に生じる腎臓の障害)です。

長距離走などの有酸素運動によって生じます。熱中症や激しい運動などにより骨格筋細胞の壊死、融解が生じ、筋細胞内成分が血液中に流出した状態です。

(※短距離などの無酸素運動によって生じる腎不全は『運動後急性腎不全』の項を参照ください。)

症状

安静時の筋肉痛やミオグロビン尿(筋肉内に含まれるタンパク質)と呼ばれる赤褐色尿が出ることがあります。

診断

検査で腎臓の機能の悪化とCK(筋肉内にある酵素)の著明な高値、ミオグロビン尿から診断されます。

治療 / 対応

治療は輸液(点滴)が主体となります。まれに腎臓の機能が著しく悪い場合は一時的に人工透析をすることがあります。

疾患概要

運動によって気管支の攣縮(れんしゅく)が生じるとされています。ぜんそくの患者さんに運動がきっかけとなって発作が生じることもあります。しかし、運動がぜんそくの危険因子ということではありません。実際に運動が小児のぜんそく患者にとって有益であることは報告されています。原因としては換気量(肺を行き来する空気の量)の増大、冷たく乾燥した空気または花粉症などのアレルギー体質の人はアレルギー物質の多いときにぜんそく様の症状が生じやすいと言われています。

ぜんそくの発作時と同様に運動によって気道粘膜がむくむ、痰が増える、筋肉が収縮することで気道が狭窄し、運動時の呼吸苦が生じます。


症状

運動時の咳、呼吸苦、喘鳴(ヒューヒューする)、胸の圧迫感などです。

運動をしていない日常生活では症状が出ないことがほとんどです。

診断

通常のぜんそくを発症していることもありますので、呼吸機能検査や気道可逆性検査(気管支を広げる薬を使用して検査)などを行います。また、日常生活では症状が出現していない場合にはこれら検査も陰性となるため、診断的治療(治療をしてみて治療効果が得られるかを確認すること)として運動前に治療薬である気管支を広げる薬を吸入してもらい運動時の症状の軽快を確認することも行っています。

治療

薬物を使わない予防や治療としては気管支攣縮を生じさせないために換気量の増大を抑えることや、空気を温かく湿ったものにするためにマスク着用などが良いとされています。薬物治療としては短時間作用型の気管支を広げる吸入薬(SABA)が第一選択で、運動の10-15分前に吸入させています。もし、SABA使用でもコントロール不良の場合や毎日治療を行うような場合は吸入ステロイドを使用しています。運動が長時間に及ぶような場合(3時間以上)はロイコトリエン受容体拮抗薬を使用することも検討します。

治療に難渋する場合は、逆流性食道炎(胃食道逆流症)や副鼻腔炎が背景に隠れていたりすることもあり、そちらの疾患に対する治療を併用することもあります。

他にも、果物や野菜の摂取量が多いと喘息の発症リスクが減少するという報告もあり食事の介入なども行っています。

参考文献

Boulet LP, O'Byrne PM. Asthma and exercise-induced bronchoconstriction in athletes. N Engl J Med. 2015 Feb 12;372(7):641-8. doi: 10.1056/NEJMra1407552. PMID: 25671256.

疾患概要

昔から“こむら返り”、“足がつる”などと呼ばれるものです。

運動によって生じる痛みを伴う筋収縮のことを言います。詳細なメカニズムはわかっていませんが、筋肉の疲労、ナトリウムなどの電解質の異常、脱水、気温、睡眠不足、飲酒などが原因として関わると言われています。

また、まれではありますが、背景に他の内科疾患(甲状腺機能異常、閉塞性動脈硬化症などの循環障害、腰部脊柱管狭窄症などの神経疾患)が隠れていることもあります。

症状

運動中や運動後に筋けいれんが生じ、疼痛を自覚します。

診断

背景疾患として、先に挙げたような内科的疾患が隠れていないか、検査を行います。

治療 / 対応

繰り返す症状に対して確立された予防方法は現在ありません。電解質の補充(マグネシウムなど)、ストレッチ、海外ではピクルスジュースの摂取など様々な方法が行われています。実際には筋力のアンバランスや動作やシューズなどの問題、不安や緊張による睡眠不足、アップのし過ぎの選手も時折見られ、患者さんより得られた情報によって対応しています。

参考文献

Maughan RJ, Shirreffs SM. Muscle Cramping During Exercise: Causes, Solutions, and Questions Remaining. Sports Med. 2019 Dec;49(Suppl 2):115-124. doi: 10.1007/s40279-019-01162-1. PMID: 31696455; PMCID: PMC6901412.

疾患概要

暑熱環境もしくは身体運動による体熱産生の増加によって、高体温を伴う全身の諸症状が引き起こされることが熱中症です(1)。特に労作(スポーツ含む)を伴うものを労作性熱中症といいます。

症状

熱中症では、足がつるといった筋痙攣から重症になるにつれて、めまい、立ちくらみ、混乱や見当識障害(人やモノ、場所がわからなくなる)といった意識障害が出現するようになります。そのままにしていると、脱水、下痢/嘔吐、腎機能障害、肝機能障害、全身性の敗血症、電解質異常、脳虚血/浮腫などが起き、多臓器不全で亡くなることもありえます。

診断

明確な数値基準はなく、症状と発症時の状況から考慮します。熱中症は症状により運動誘発性筋痙攣、熱失神、熱疲労、熱射病に分類されます(表1)。

表1 熱中症分類:パワーズ運動生理学より改変

一方、国内ではよりわかりやすい形での分類としてⅠ度〜Ⅲ度という分類が用いられています(表2)。重要なことは、どちらの分類でも軽症の時点で運動の中断や冷所での休息などの判断を行い、経過を見ることです。

表2 日本救急医学会根中傷分類:熱中症診療ガイドライン2015

* 体温測定方法について

熱射病の基準である体温=40.5度以上は深部体温のことです。通常の体温計は腋窩の体表温を測定しています。スポーツ後は発汗により体表温は正常なものの、深部体温が高いということが起こりうるため、体表温の測定で熱中症かどうか判断するのは注意が必要です。

治療/対応

参考文献2より

- 運動誘発性筋痙攣/熱失神/1度熱中症の場合(意識障害を伴わない)

めまいや立ちくらみ、筋けいれんなどが起こる状態であれば、運動を中断し、クーラーが良く効いている屋内や風の通りが良い木陰などで積極的に飲水(スポーツドリンクなど)をして経過観察します。扇風機やうちわ、氷枕などでアイシングをするのも良いです。経過観察中に増悪することもあるため、ひとりきりにはしないようにしましょう。

- 熱疲労/熱射病/Ⅱ〜Ⅲ度熱中症(意識障害を伴う) 

意識障害を伴う場合は医療機関への受診/救急搬送を考慮します。搬送や救急隊到着までは可能な限り冷却を行います。バスタブや大量の氷が準備でき、溺れないようになど医療スタッフが対応できれば、冷(氷)水浴[アイスバス]が推奨されます(図1)。それ以外では水道水をかけ続ける水道水散布法(図2)や、エアコンの効いた屋内で冷たいタオルを全身に乗せて、扇風機などを当てつつ次々に取り替えるアイスタオル法(図3)などがあります。深部体温(直腸温)が測定できれば、直腸温<39度となるまで冷却するのが目安ですが、準備がなければ「寒い」と言うまで冷却するのが目安です。

図1 冷(氷)水法[アイスバス]

- 最適水温は5−15度

- 大量の氷が必要で、最適水温になるまで時間がかかる

- 頭側の人は溺れないように支える

  -   意識障害中は暴れることもあり注意

図2 水道水散布法

- 流水を全身にかけ続ける

- 口や鼻を水で塞がないように注意

- 寝かせる場所が安全か確認

- 扇風機併用も効果的

図3 アイスタオル法

- アイスタオルは数分おきに交換

- うちわや扇風機の併用も効果的

参考文献

1) 日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2015

2) 日本スポーツ協会 熱中症を防ごう 2022/08/01アクセス

https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid523.html

概要

低温環境下でのスポーツ、スキーやスノーボード、犬ぞりレースなどの雪上競技や、トライアスロンやオープンウォータースイミングなどの屋外水中競技、また高山帯での登山、アドベンチャーレース、トレイルランニングなどが発症リスクが高い競技である。

運動などにより産生する熱よりも、発汗や周囲への熱伝導で喪失する熱が大きい事で生じる。

症状

重症度に合わせて、様々な症状を発症しうる(表1)。特に中等症〜重症では、徐脈及び不整脈の発症リスクのため心停止が起こりうる。

表1 低体温症の重症度と症状

診断

深部体温(可能なら直腸温)<35℃が診断基準であるが、スポーツ現場で直腸温の測定まで準備ができている場合は比較的稀である。実際には低体温症が起き得るような環境であったかどうか、また表1を参考に症状で診断することとなる。

治療/対応

軽症と中等症〜重症で大きく異なる。低体温症を発症した場合、低温環境からの隔離と衣服の除去、水滴などの拭き取りをまず行う。

- 軽症の場合

アルミ保温シートなどで周囲への熱喪失を出来るだけ抑え、受動的復温を行い経過を見ることが可能である。飲水やカロリー補給などを積極的に行う。復温中に中等症以上の状態にならないかを継続的に血圧や脈拍、呼吸数を注意深く観察する。

 

- 中等症〜重症の場合

意識障害(混乱した言動)や心拍数及び呼吸数の低下がないかということに注意する。また震えを起こすことができず、体外もしくは体内からの能動的加温が必要となるため、保温と可能な限りの加温を行いながら、医療機関への搬送を考慮する。このような状況では些細な刺激で不整脈が出現するリスクがあるため、できるだけ丁寧に扱い、可能な限り横にして安静とする。

 

経過観察及び復温中の注意点:After Drop とRewarming shock

復温を開始した後も急激な変化が起こり得るため、注意が必要である。

① After Drop (図1)

競技中は体幹部の温度を保ち、四肢末梢側の温度は低くなっている。競技終了後や復温により、四肢末梢の血管が拡張し、低温の血液が体幹側に流入し、深部体温の低下が進んでしまうことをAfter dropと言う。不整脈発症のリスクとも言われている。

 

② Rewarming Shock

低温環境では利尿が進み、また競技中の発汗などで体内の水分量は低下しているが、競技中は末梢の血管が収縮することで体幹部の水分量が保たれる。競技終了後や復温中に末梢の血管が拡張していくと、全身の必要水分量が急激に増加し、血圧が保てなくなることがある。これをRewarming Shockと呼び、重篤な状態になるリスクがある。

図1 After Drop について

参考文献

Ken Zafren.Accidental hypothermia in adults. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on November 28th, 2022.)

疾患概要

単純ヘルペスウイルス(HSV : Herpes Simplex Virus)により皮膚などに小さく集合(集簇)する、小さな水が入った袋(小水疱)や皮膚のただれ(びらん)が形成されます。HSVにはHSV−1とHSV-2の2種類があります。HSV-1は顔面、口唇周囲におもに感染し、病変部の接触や器具を介して広がる一方で、HSV-2は性器におもに感染し、性行為で感染するとされます。また咳嗽などの飛沫感染もあるとされています。(図1)


スポーツ選手の場合、紫外線の影響や疲労などにより発症するため、発症時は免疫能低下や

疲労の蓄積があるなど体調管理のバロメーターという側面もあります。

また①痒みや痛みから直接的に、②睡眠不足や心理的影響から間接的に、③集団感染でのチーム全体への影響、などからパフォーマンス低下が起こり得るとされています。


格闘技やコンタクトスポーツなどでの接触で、 herpes gladiatorum(格闘技ヘルペス)や herpes rugbiorum (ラグビー選手のヘルペス)と呼ばれる集団感染を起こすと言われており、スポーツ現場での感染対策も必要です。

図1 文献1より引用

水疱の集簇と痂皮化した病変がみられます。

症状

顔面や口唇に集簇する小水疱が形成されます。初めての感染では無症状が多いものの、時に高熱などの症状と上述の皮疹などが出現します。初感染後は神経細胞内に潜伏し、ストレス(紫外線、発熱、月経、心理的、高強度運動の持続)などによる免疫(特に細胞性免疫)の低下で潜伏ウイルスが増殖して、再発症するとされています。

診断

特徴的な皮疹を呈することから、臨床的に診断を下すことが多いです。

治療/対応

治療:軽症であれば、抗ウイルス薬の軟膏で改善がみられますが、耐性化の側面も指摘されており、内服投与が原則とされています。中等症以上では内服治療や点滴加療が必要とされます。抗ウイルス薬は潜伏しているウイルスを消滅させることまではできないため、短期間で再発( 6回/年以上 )を繰り返す場合、長期間の内服治療を検討することもあります。


感染対策:①感染者の早期発見/接触回避を行う②感染を媒介する用具を清掃する③紫外線対策を行うなどが拡大させないために必要です。


Return to Play:全身状態が落ち着いていることを前提に、①病変部が乾燥し、かさぶたを形成する②72時間以内の新規病変出現がなく③120時間以上の抗ウイルス薬治療を実施済であることを確認し、復帰が検討されます。病変部を覆って競技復帰することはやめましょう。

参考文献

1) 松永ら, ラグビーチームの 8 名に集団感染した herpes rugbiorum, 皮膚病診療:4(44);302~305,2022

2) 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 「ヘルペスと帯状疱疹」2022年8月31日確認

3)枝 伸彦, スポーツ現場における 皮膚コンディショニングの重要性, ストレングス&コンディショニングジャーナル, Volume 27, Number 4, pages 12-19

疾患概要

頭への衝撃で脳の機能に異常が生じる疾患です。直接的な頭への衝撃以外に、間接的な衝撃でも生じ得ます(図1)

図1 頭部外傷のタイプ

症状

多様な症状が出現し(表1)、時間経過とともに改善してきます。一方で脳震盪後に症状が長期的に続いてしまう方もいます。一般的に小中学生や高校生などの方が、大学生、成人よりも症状が長引くとされています。


 脳震盪の状態を評価するツール(SCAT5:Sports Concussion Assesment tool,VOMS : Vestibular Ocular Motor Screening など)も参考として用います。受傷前のベースライン測定を行った上で比較することが理想的です。

表1 脳振盪の症状例 神経外傷 Vol.42 2019 より

                                   

・身体面の症状(例:頭痛)や認知面の症状(例: 霧の中にいるような感覚),

   感情面の症状(例: 不安)

・身体的な徴候(例:意識消失,健忘)

・平衡機能障害(例:歩行の不安定性)

・行動の変化(例:易刺激性)

・認知機能障害(例:反応時間の遅延)

・睡眠障害(例:不眠) 

診断

 頭への衝撃が生じた状況や直後の様子、症状などから総合的に診断します。CTやMRIなどの画像検査や一般的な採血検査では異常はみられません。これらの検査はその他の頭部外傷や疾患の除外のために用いられます。

 

 脳震盪の状態を評価するツール(SCAT5:Sports Concussion Assesment tool,VOMS : Vestibular Ocular Motor Screening など)も参考として用います。受傷前のベースライン測定を行った上で比較することが理想的です。

治療/対応

- 頭部外傷時(脳振盪が疑われた時を含む)

・スポーツを行っている時は、受傷者を安全な位置に移動させます

・脳振盪を疑う場合にはスポーツを中断させます。

  「脳振盪を疑った時のツール(CRT5)」が参考になります。

 https://www.fujiwaraqol.com/concussion/crt5


・嘔気や嘔吐、めまい、痺れ、強い頭痛などの症状がある場合には、

 医療機関(救急や脳神経外科など)の受診を行ってください。


・経過観察中にも状態が変化する可能性もあるため、

 受傷者一人にはしないようにしましょう


 - 受傷後〜スポーツへの復帰

・脳振盪が疑われた(診断を受けた)際には、まずゆっくりと休む事が重要です。

 受傷後24〜48時間は、症状がなくなるまで、テレビやスマートフォン、

 読書などの眼や脳への刺激を避け安静にしましょう。

 

・過剰な安静も症状の遷延につながる可能性が指摘されています。

 症状が悪化しない程度に、まず日常生活への復帰を目指します。

 次に学業、最後にスポーツの順番です。

 下記の段階的な復帰の表を参考にしてください。(表2、3)

 復帰について心配な場合はトレーナーや医療機関と相談しましょう。

表2 段階的な学校への復帰:神経外傷 Vol.42 2019 より

表3 段階的なスポーツへの復帰:神経外傷 Vol.42 2019 より

1. 肉ばなれとはどんな疾患ですか?

・スポーツ外傷の中でも頻度が高く、筋肉が過剰に伸ばされて生じます

・多くの場合は筋が伸張しながら収縮する遠位性収縮時に生じます

・起こりやすい部位は競技種目によっても異なりますが,ハムストリングスが最も多く,次いで下腿三頭筋,大腿四頭筋の順です

・ハムストリングスのなかでは,大腿二頭筋長頭が最も生じます

2. どんな症状が出ますか?

・局所の圧痛・腫脹・硬結を認めます

・受傷直後に筋の凹みを触知することがあります

・運動時のストレッチ痛や収縮による痛み

・時間経過で皮下出血や筋力低下と可動域制限が生じることがあります

3. どんな治療をしますか?回復にはどのくらいかかりますか?

・保存療法が主ですが重症例やアスリートは手術が必要なこともあります

・回復までの時間は部位や損傷の度合いによって異なり,スポーツ復帰は軽傷で1~2週間,重症の場合は数ヶ月かかることもあります


・早期再開は再受傷リスクが高いため,自覚症状が改善しても主治医等と相談しながら復帰します

4.当科では

・エコーやMRIで部位や重症度などを判断します

・血腫が大きい時はエコーをみながら除去することがあります

・重症例やアスリートには手術を行うこともあります

・スポーツ復帰に向けたリハビリテーションを行います

5.どんなリハビリテーションをするのですか?

・太ももやふくらはぎの柔軟性改善のためのストレッチを行います

・疼痛の状況を確認しながら運動負荷を増加させていきます

・必要に応じて筋力測定を実施して患健差を確認します

<参考文献>

1. 臨床スポーツ医学編集委員会.スポーツ外傷・障害の理学診断・理学療法ガイド.2003

1. 疲労骨折とはどんな疾患ですか?

・スポーツなどで繰り返される負荷が原因となる骨折です

・発症のピークは十代ですが,幅広い年齢層にみられます

・下肢では脛骨,中足骨,腓骨が多く,種目によって骨折しやすい部位があります

2. どんな症状が出ますか?

・スポーツ活動中に痛みを認めますが,初期は痛みがごく軽度のため運動を継続してしまい悪化させてしまうことがあります

3. どんな治療をしますか?回復にはどのくらいかかりますか?

・基本は保存療法ですが,一部治りにくいものもあり手術を選択すれることがあります

・スポーツを中止し,経過をみながら運動強度を上げていきます

・部位や重症度によってスポーツ復帰の時期は異なります

4.当科では

・問診,触診,レントゲン,エコー,MRIなどで診断をします

・初期にはレントゲンで異常を認めないことがあるため,積極的にMRIやエコーで診断をします

・スポーツ復帰にむけたリハビリテーションを行っています

<参考文献>

1. 内山英司:疲労骨折の疫学.臨床スポーツ医学20.2003

産前産後の身体の変化

①ホルモンバランスの変化

妊娠に伴い、母体ではさまざまなホルモンのバランスが変化します。その中でもリラキシンが妊娠3ヶ月から産後2.3日にかけて胎盤から分泌されることで、骨と骨を結合している靭帯の弛緩性が増加します。この作用は出産時に骨盤輪が広がり、胎児がスムーズに通過するために必要ですが、仙腸関節や恥骨結合部が緩くなることで骨盤の不安定性も増加します。(図1)

図1

②姿勢の変化

胎児の成長により子宮が大きくなることで、腹部が前方に突出します。このとき安定性を保つために骨盤が前傾し、胸椎と腰椎の弯曲が大きくなり、腹筋と腰背部筋がバランスを取るようになります。(図2)

図2

③インナーユニットの変化

インナーユニットとは横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群の4つの筋で、体幹や骨盤帯の安定性に関わっています。横隔膜は呼吸筋としても働きますが、子宮の増大により上方に押し上げられます。腹横筋は、腹筋群の最深層で子宮を適切に腹部にホールドするために重要ですが、腹部が大きくなると引き伸ばされて厚みが減少します。また、骨盤底筋群は腹部臓器を支えるハンモックのような役割をもちますが、胎児の重みにより下方に引き伸ばされます。多裂筋は胸椎・腰椎の弯曲の増大に伴い過緊張状態となります。(図3)

図3

症状

妊娠初期は、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、筋膜性腰痛などの妊娠前からの疾患に伴う腰背部痛の悪化が多いとされていますが、妊娠後期に近づくにつれて胎児の成長、骨盤の形態・姿勢の変化、体重増加に伴う骨盤帯痛の頻度が増加します。また、産後は出産時の骨盤開大による損傷痛、骨盤の不安定性が残存していることによる症状が続く場合と、育児による姿勢が原因となる場合もあります。

診断

腰痛の原因は運動器疾患以外にも内臓疾患、血管疾患などが挙げられます。特に妊婦さんは子宮の増大で尿管が圧迫されて水腎症などの泌尿器系の疾患が認められる場合があるため、これらの鑑別が必要になります。また、母体から胎児、母乳へカルシウムを供給するため、母体の骨吸収が亢進し妊娠後骨粗鬆症を呈し、その結果椎体の圧迫骨折を来すこともあるため、画像検査を必要とする場合があります。レントゲン撮影は被曝を最小限にとどめることが望ましいため、必要のある場合には胎児への侵襲が比較的少ないMRIを優先することもあります。

治療

筋肉の過剰な緊張を取るためのストレッチや、脊椎を支えるためのインナーユニットを中心とした腹部・腰背部の筋力強化運動が効果的です。また、骨盤由来の腰痛に関しては、骨盤支持ベルトなども有効です。脊椎の弯曲が強くなると腰痛を増強するため、座る姿勢などにも注意します。

Q&A

Q: 妊娠中に運動をして良いのですか?

A: 産婦人科診療ガイドラインでは、運動が禁止されていない妊婦における適度な有酸素運動は、早産や低出生体重児などの母児罹病を増加させることなく、健康維持・増進に寄与することが期待できるとされています。妊娠中の好ましいスポーツの具体例としてウォーキング、水泳、ヨガ、ラケットスポーツ、エアロビクス、固定自転車、ピラティスが挙げられており、転倒や落下、接触の危険を有するスポーツや仰臥位あるいは不動のまま立位を保持する姿勢は好ましくないとされています。

Q:運動が禁止されるのはどのような場合ですか?

A:重篤な心疾患、呼吸器疾患のある方、また産科にて頸管無力症、持続する性器出血、前置胎盤、低置胎盤、前期破水、切迫流産・切迫早産、妊娠高血圧症候群と診断されている場合は、妊娠中のスポーツ開始・継続は勧められません。

セルフエクササイズ

注意:痛みを強く感じる場合、辛い姿勢は無理に行わないでください。

①脊椎と骨盤の運動を改善する運動

息を吐きながら背中を丸め、息を吸いながら背中を反らせる。

②大腿前部のストレッチ

片方の膝を曲げてお尻の横に足を置き、体を後ろに倒す。

慣れてきたら倒す角度を大きくしていく。

③臀部のストレッチ

前の膝を外側に倒し、体を前に倒す。

当院担当スタッフ紹介

スポーツ医学科ではわたしたちが担当しています。

参考文献

•  マザーヘルス協会 産前産後の母に関わる医療従事者のための 入門ブック Ver.1

•  Rachel M. Kacmar MD and Robert Gaiser MD: Chestnut’s Obstetric Anesthesia, 2, 13-37

•  鈴木真: 臨婦産 Vol.60 No.10: 2006.10

•  須永康代、平元奈津子: PTジャーナル Vol.56 No.4: 2022.4

•  布施陽子、福岡由理: PT ジャーナル Vol.47 No.10: 2013.10

疾患概要

一番の問題点は小児期に発症した肥満の約70%が成人肥満へと移行してしまう点です。結果的に将来の糖尿病、高血圧などの生活習慣病の発症リスクが高くなり、できるだけ小さい頃から取り組む必要性があります。

原因としては体質、身体活動量、生活環境、食生活などのリズムの乱れなど多くの要因が考えられています。

治療 / 対応

非常に難しい問題ですが、肥満にさせないために予防と早期介入が重要です。

疾患(糖尿病など)を有しているような肥満に関しては小児科専門医に紹介することになりますが、原発性肥満(明らかな疾患がない肥満)に対しては生活習慣、食生活、運動習慣などを相談しながら、介入していきます。また、運動器に問題のあるお子さんに関してはリハビリテーションも組み合わせて実施していきます。

参考文献

・Klish WJ(1995)Childhood obesity ; pathophysiology and treatment. Acta Paediatr Jpn 37 : 1-6

幼児肥満ガイド|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY (jpeds.or.jp)

PRP療法とは

PRP療法は自分の血液の血小板を利用する再生医療です。PRPとはplatelet-rich plasmaの略で、日本語では多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)と言います。PRPは血液から血小板を濃縮して作製します。濃縮された血小板には活性の高い成長因子が多く含まれます。成長因子は、傷ついた組織の修復を促します。この効果を利用する治療ががPRP療法です。自分の血液を使うため拒絶反応やアレルギー反応が少ないことが特徴です。

PRP療法の適用

近年、変形性関節症やスポーツ傷害に利用されています。欧米では、自分の治癒能力をサポートする治法としてPRPが行われています。近年、日本でも取り入れられ始めています。特に、膝の軟骨がすり減り変形する変形性膝関節症で多く使われています。痛み止めやヒアルロン酸の注射などで効果がない患者さんのなかに、PRP療法で症状が改善がみられる場合があることがわかっています。


対象となる疾患

肩腱板損傷 肩関節唇損傷 変形性肩関節症 肘靭帯損傷 テニス肘 ゴルフ肘

肉離れ 筋断裂

変形性膝関節症 半月板損傷 膝靭帯損傷 アキレス腱炎 足底筋膜炎

治療の流れ

採血から遠心分離、投与まで約30分で完了します。

PRP療法の治療効果

PRP療法は、患者様個人の自然治癒力を利用しているため、その治療効果に個人差があり、治療効果が保証されるわけではありません。また、効果によっては、複数回の治療が必要となることがあります。

費用

PRP療法は保険外診療(自由診療)となります。 当院では以下の通りに価格を設定しております。 詳細は診察時に担当医にお問い合わせください。

▶一部位31,000円(学生25,000円) 診察料3000円

<参考文献>

Ladslow L et al:A randomized study of autologous conditioned plasma and steroid injections in the treatment of lateral epicondylitis. International Orthopaedics (SICOT) (2015) 39:2199–2203

Patrick A:Intra-articular Autologous Conditioned Plasma Injections Provide Safe and Efficacious Treatment for Knee Osteoarthritis. The American Journal of Sports Medicine, Vol. 44, No. 4. 2016

Lior L et al:Plasma rich in growth factors (PRGF) as a treatment for high ankle sprain in elite athletes: a randomized control trial. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 18 June 2014

動脈注射療法

治りにくい痛みは「異常血管」が原因になっていることがあります。使いすぎなどでできる「異常血管」のまわりの神経が過敏になり痛みが発生することがあります。「血管内治療」は、この「異常血管」を詰める治療で、痛みの軽減が期待できます。当院では「血管内治療」の一つで、外来で簡単に行える「簡易動脈注射療法」をおこなっています。「異常血管」を抗生物質で詰める治療です。抗生物質は細かい粒子ですので、非常に細い「異常血管」だけを詰めることができます。

CM関節にできた異常血管を詰めているところ 参考文献より引用

治療の流れ

① 局所麻酔をして、痛みがある近くの動脈に注射針かチューブを挿入します。

② 抗生物質を溶かした薬液を注入します。

③ 止血のために5分ほど圧迫をします。


日帰りで、外来での治療が可能です

対象となる疾患

•保険診療で効果が不十分であった方

•症状が3ヶ月異常続いている方

※異常血管は時間をかけてできるため


・手:へバーデン結節、CM関節症

・肘:外側上顆炎(テニス肘)、内側上顆炎(ゴルフ肘)

・足:足底腱膜炎、アキレス腱炎、外反母趾

などが対象となります。


*注意

抗生物質にアレルギーをお持ちの方や、血液をサラサラにする薬を使用している方、動脈が極端に細い方などは治療が出来ない場合があります。

費用

動脈注射療法は保険外診療(自由診療)となります。 。

▶︎手:片側25,000円 両側35,000円

▶︎肘:片側30,000円 両側40,000円

▶︎足:片側30,000円 両側40,000円 (すべて税抜)

参考文献

Inui S, Yoshizawa S, Shintaku T, Kaneko T, Ikegami H, Okuno Y. Intra-Arterial Infusion of Imipenem/Cilastatin Sodium through a Needle Inserted into the Radial Artery as a New Treatment for Refractory Trapeziometacarpal Osteoarthritis. J Vasc Interv Radiol. 2021 Sep;32(9):1341-1347. doi: 10.1016/j.jvir.2021.06.024. Epub 2021 Jul 6. PMID: 34242776.

※実施の際はご自身の体調を考慮した上で医師または担当セラピストとよく相談して実施して下さい。

上肢トレーニング

下肢トレーニング

体幹トレーニング

自主トレーニング動画

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